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科学は人間の善悪を判断できないが、他人を傷つけることを楽しむ人間であるかどうかを判断することはできる。
最新のパーソナリティ研究では、自己の利益のために他人を傷つける反社会的特性が注目されている。そうしたダーク・パーソナリティを構成する3つの要素(ダーク・トライアド)として、心理学では、ナルシシズム(自己愛傾向)、サイコパシー(共感の欠如)、目的のために手段を選ばないマキャベリアニズムが挙げられている。
これら3要素はどれも周囲の人にストレスを与える。またこれらが組み合わさり、他人を犠牲にして利益を得ようとする敵対的かつ利己的な戦略が生じる。
そして現在、一部の研究者らは、この3要素に加えて、サディズム ―― つまり人を苦しめることに喜びを見出す傾向を、第4の要素として提言している。
なぜサディズムなのか?
サディズムには長い歴史がある。サディストは人を傷つけることによって快楽を得る。彼らは、現実か非現実かにかかわらず、『ゲーム・オブ・スローンズ』の登場人物ラムジー・ボルトンのように、最も恐ろしく有害な悪人だ。
しかし臨床分野では、サディズムの概念はかなり新しい。その理由の1つとして、パーソナリティ、とくにダーク・パーソナリティの研究はまだ日が浅く未熟なことが挙げられる。さらに臨床段階では、サディズムのような性質は、前述の3要素と正確に区別することが難しいからでもある。
サディズムを新たに加えた4要素の理論を支持する研究者でさえ、サディズムの兆候を従来の3要素のものと区別することの難しさを認めている。
それでも近年の研究の進展により、サディズムが、ネット上の「荒らし」や「いじめ」などの残酷な行動ととりわけ強く関係していることが明らかになってきている。
サディズム診断
厳密なサディズム診断の開発を目指して、研究者グループはサディスティックな人格を見抜けるように考案された質問リストをまとめた。最初のバージョンでは20問だった。被験者は、それぞれの質問にどれほど強く同意したか、または同意しなかったかを、1〜5の尺度で回答した(1は「全く同意しない」、5は「完全に同意する」)。
- 自分が主導権を握っていることを分からせるために、人をからかうことがある。
- 自分は恐れられているので、人は自分の思い通りに動く。
- 何をすべきか伝えると、人は自分に従う。
- 周りの人を振り回すことに抵抗を感じない。
- 自分が主導権を握っていることを分からせるためなら、人を傷つけることも厭わない。
- 友人を脅してコントロールしている。
- 人をからかう時、相手がうろたえているのを見るのが楽しい。
- 他人につらく当たることが楽しい。
- いらだっているとき、人を苦しめると気分が良くなる。
- 身近な人を傷つけて楽しむことがある。
- 他人に屈辱を与えることが好きである。
- 他人を彼らの友人の前でからかうことに喜びを感じる。
- 他人に嫌がらせをして楽しむことを想像する。
- 人をだますことが好きだ。
- 自分をいらだたせる人間を傷つけたい。
- 他人を困らせるために嘘をつくことがある。
- 結果を顧みず他人から何かを盗んだことがある。
- 他人に嫌な思いをさせると気分が良くなる。
- すぐに他人を傷つける。
- 他人を苦しめることに罪悪感を感じない。
199人の学生を対象に診断を実施したところ、有効性は見込めたものの、決定的な結果は得られなかった。
この診断は、サディズムと他の3要素を測定するのには適していた。また、反社会的人格には具体的かつ説明可能なパターンがあるということが示唆された。しかし、サディズムをサイコパシーなどの他の3要素から区別して特定するという本来の目標に照らし合わせると、期待通りの成果を上げることはできなかった。
そこで研究者らは、各要素を混同した原因になったと思われる質問を外し、次の9つの質問からなるリストで再試験を行った。
- 自分が主導権を握っていることをわからせるために、他人をからかうことがある。
- 周りの人を振り回すことに抵抗を感じない。
- 自分が主導権を握っていることを分からせるためなら、人を傷つけることも厭わない。
- 人をからかう時、相手がうろたえているのを見るのが楽しい。
- 他人につらく当たることが楽しい。
- 他人を彼らの友人の前でからかうことに喜びを感じる。
- 他人が争うのを見ると興奮する。
- 自分をいらだたせる人間を傷つけたい。
- 嫌いな人間でも、意図的に傷つけるようなことはしない。
このバージョンで202人の学生を対象に診断を実施したところ、より明確な結果が得られた。他の3要素との相関は依然として想定の範囲内で見られたものの、サディズムが別のカテゴリーであることを証明することができた。両方の診断で、男性が女性よりネガティブなパーソナリティ特性を示す傾向が認められた。以上の結果は学会誌『Personality and Individual Differences』で発表された。
研究を行ったグループによると、このサディスティック・パーソナリティ評価(ASP)には今後改善すべき点が少なくない。例えば(最も多様かつ典型的なサンプルではない)単位取得を目的としてアンケートに臨む大学生以外の層を、研究対象群として設定する必要がある。それでもなお、この成果が臨床研究におけるサディズムの理解に役立つことを研究グループは期待している。
source: Warner Brothers
[原文:Scientists developed this 9-question test to measure how sadistic you are]
(翻訳:小池祐里佳)