今村拓馬
今日の記事では、スマートフォンのデバイスの売れ行きトレンドとアプリ業界の現状と将来予測を合わせて眺めてみることで、現時点で明らかになっているスマホのハードとソフトの両面のトレンドを抑えてみたいと思います。
まずはハードウェアの売れ行きを、こちらの記事を参考に見ていきましょう。
グローバルで最も売れているスマートフォンのトップ4をAppleが独占
この表は、2018年の1月から3月の間にグローバルで最も出荷台数が多かったスマートフォンの一覧です。
これを見ると、1台$1,000(約10万円)を超えるアップルのiPhone Xが、ついに1,600万台を出荷し、グローバルシェアの4.6%を獲得しています。
ちなみに2位から4位までもiPhone となっており、5位のXiaomi Redmi 5Aというのは、インド向けに開発された廉価版の端末です。
Appleの決算は!?
ここで少しだけ、2018年1月から3月期のAppleの決算を振り返っておきましょう。
今回のAppleの決算は、特にiPhoneセグメントの成長率が、アナリストの想定よりも順調に推移した結果になっており、台数ベースで見るとYoY+3%、売上ベースで見るとYoY+14%という具合に、iPhone Xによる事実上のiPhoneの値上げが、功を奏した形になっています。
地域別に見ても、北米でYoY+17%、中国でYoY+21%、日本でYoY+22%という具合に、リッチな国で、高級版であるiPhone Xがよく売れていることが伺えます。
グローバルのスマホ出荷台数は、ついに前年同期比でマイナス成長へ
議論をスマホの出荷台数に戻したいと思います。
冒頭の表で注目したいのは、スマホのグローバル出荷台数が前年同期比で-2.4%とマイナス成長になっている点です。
1年前の時点ではYoY+6.2%で成長していたわけですから、今回の四半期が、プラス成長からマイナス成長に転落した非常に大きな転換点だと言えることは間違いありません。
過去十数年間にわたって巨大な産業を作り出したと言えるスマートフォンですが、デバイスの販売台数そのものは今後もフラットか、若干のマイナスで推移してきそうだと言えるでしょう。
別の言い方をすれば、世界中のかなりの多くの人に既にスマートフォンが行き渡っているとも言えるかと思いますが、一方で、そのスマートフォンの上で動くソフトウェア、つまりアプリの業界は、今後どのようになっていくのでしょうか。
今回はAppAnnieが発表したレポートから、今後5年間の トレンド予測を整理しておきたいと思います。
アプリのダウンロード数の現状と将来予測
AppAnnie
グローバルで見ると、アプリのダウンロード数は今後5年間にわたって年平均+7.7%で成長していくと推測されています。
AppAnnie
地域別でみると、アメリカ地域は年平均成長率が1.2%と極めてフラットに近い一方で、アジアは年平均10.3%で成長すると推測されており、今後アプリのダウンロード数の成長を牽引していくのはアジアであるということは間違いなさそうです。
アプリ内課金額の現状と将来予測
続いてアプリ内課金の現状を見ていきましょう。
AppAnnie
グローバルで見ると、今後5年間にわたって年平均13.9%で成長していくと推測されています。
AppAnnie
地域別でみると、二つのことが言えるかと思います。
一つ目は、成長率という点ではアメリカもアジアもヨーロッパも今後5年間13%から14%という、非常に高い成長率でアプリ内課金が増えていくと推測されています。
二つ目は、絶対額という点では、中国と日本という2大アプリ課金大国を有するアジアが圧倒的に大きくなる、ということがデータから見えそうです。
AppAnnie
最後に、スマホ一台あたりの消費額で見ると、2017年時点では平均$20.94(約2,094円)であるところが、2020年には$25.65(約2,565円)まで成長すると考えられており、年平均の成長率に換算すると22.5%という、極めて高い成長率でアプリ内消費が増えていくと予想されています。
まとめ
以上を簡単に整理するとこのような形になります。
■ハード編
- 最も売れているスマホ端末トップはiPhone X
- 最も売れているスマホ端末トップ4はは全てiPhoneシリーズ
- スマホ出荷台数は前年同期比マイナスへ(今後、出荷台数はフラット〜マイナスへ)
■アプリ編(ダウンロード数)
- グローバルで年平均7.7%で成長と推測
- 地域別の年平均成長率では、アメリカ地域が1.2%、アジアが10.3%
■アプリ編(ダウンロード数)
- グローバルで年平均13.9%で成長と推測
- 地域別の年平均成長率では、全地域13-14%と高い成長率が予測される
- スマホ1台あたりで見ると、$20.94から$25.65ドルと年平均22.5%と高い成長率が見込まれる
これからは、やみくもにスマホの出荷台数やアプリのインストール数といった「量」を追うのではなく、良質なユーザーを獲得して、長い時間継続的にサービスを利用してもらうという、「質」を追求していく時代になってきているのではないでしょうか。
シバタナオキ:SearchMan共同創業者。2009年、東京大学工学系研究科博士課程修了。楽天執行役員、東京大学工学系研究科助教、2009年からスタンフォード大学客員研究員。2011年にシリコンバレーでSearchManを創業。noteで「決算が読めるようになるノート」を連載中。
決算が読めるようになるノートより転載(2018年5月22日の記事)