- JCペニー(JCPenny)の株価は5月22日(現地時間)朝、CEOマービン・エリソン氏が辞任し、ホームセンターチェーンのロウズ(Lowe's) のCEOに就任するという発表を受け、8%下落した。
- エリソン氏は2015年、12年間務めたホーム・デポ(Home Depot)を経て、JCペニーのCEOに就任。財政的危機に瀕するJCペニーの立て直しに取り組んだ。
- アナリストは、エリソン氏の辞任はJCペニー、そしてデパート業界の先行きが暗いことを象徴するものと語った。なぜなら同氏は、アマゾンがより参入しにくい業界に移ったから。
「エリソン氏の辞任については、同氏はJCペニーの将来的の展望にあまり楽観的ではなく、ロウズの芝生が青く見えたのだろうとの憶測が広がっている」
グローバルデータ・リテール(GlobalData Retail)のニール・サンダース氏は22日、顧客宛ての文書にそう記した。
マービン・エリソン(Marvin Ellison)氏は2015年、JCペニーのCEOに就任し、財政的危機に瀕する同社の立て直しに取り組んだ。エリソン氏の前任者ロン・ジョンソン(Ron Johnson)氏は高級化路線を推進、その過程で主要顧客層を失い、2013年の損失は14億2000万ドル(約1600億円)、負債額は50億ドル(約5500億円)近くまで膨らんだ。
だがエリソン氏のもと、JCペニーの業績は改善し、売上は安定した。JCペニーは、シアーズの低迷に乗じて家電製品の販売を再開、またプライベートブランドの拡大、人気ブランド、セフォラ(Sephora)を期間限定でオープンするなどで来客数を増やした。
「小売業は過去50年の中で、今、間違いなく最も厳しく、激しい競争下にある」
エリソン氏はほんの1週間前に投資家に語ったばかり。
さらに同氏は「アメリカの小売業界は数兆ドル規模、複数の勝者が存在できると考えている。顧客に店舗とオンラインの双方で最高のユーザーエクスペリエンスを提供したものが勝者となる。もちろん、JCペニーはその1社となる」
だが、JCペニーは多額の負債を抱え、業界でのポジショニングに苦しんでいる。
「JCペニーは顧客のショッピング習慣の中に、自社のポジションを確立できるユーザーエクスペリエンスを創出できなかった。消費者の視点から見ると、JCペニーはシアーズと同じ課題を抱えている。両社とも古くからある店で、かつては町で買い物ができる唯一の場所だった」とコンサルティング企業コッター(Kotter)のキャシー・ジャーシュ氏はBusiness Insiderに語った。
百貨店を捨て、隣の青い芝生へ
一方、ホームセンターは小売業界の中でもアマゾンの脅威にそれほど晒されていない数少ない業態の一つ。アマゾンは、Amazon Local Services(現Amazon Home Services)を立ち上げたが、軌道に乗っていない。
ホームセンターはオンラインが取って代わることが難しいユーザーエクスペリエンスを提供していると考えられている。客はDIYグッズを実店舗で、店員と相談してから購入することに価値を置く傾向がある。
バンク・オブ・アメリカの最近の調査では、対象となったミレニアル世代1000人の大部分が「ほぼ全て、あるいは全てのDIYグッズを実店舗で購入していた」ことが分かったとアナリストのエリザベス・スズキ氏は語った。過半数が、ホーム・デポとロウズはDIYグッズを買うときに最初に選ぶ店と回答した。
エリソン氏の辞任のニュースは、JCペニーにとって極めて厳しいタイミングと重なった。同社は2018年第1四半期の売上が予想を下回った数少ない小売業者の1つだった。
エリソン氏が去ることで、JCペニーは少なくとも短期的にはさらに苦境に立たされる。エリソン氏の業務は4人の幹部がチームで代行するが、経営と同時に新しいCEOを探さなくてはならない。
「自信がないのか、辞退できないほどのチャンスが来たのかは分からない」とジャーシュ氏。
「だが、エリソン氏が仕事をやり終えていないことは確かだ」
[原文:JCPenney's CEO just signaled the end of retail as we know it]
(翻訳:R. Yamaguchi、編集:増田隆幸)