日本で急成長する“スニーカーの百貨店”スケッチャーズ—— ハリウッド流仕掛けと徹底マーケティング

アメリカンアパレル(American Apparel)が日本上陸から20年後の2016年に撤退を決め、オールドネイビーはわずか4年で日本を去った。厳しい事業環境に覆われるアパレル業界だが、カリフォルニア生まれのフットウェアブランドの「スケッチャーズ(SKECHERS)」は日本市場で拡大のペースを速めている。

SKECHERSのフットウェア

スケッチャーズジャパンは日本市場で、3000を超える種類のシューズを準備しており、そのうちの1000種類程度を市場に投入する。

ニューヨークのタイムズスクエアに大きな旗艦店を構えるスケッチャーズ(本社:カリフォルニア州マンハッタンビーチ、ニューヨーク証取上場)は2017年、設立から25年間で最高額となる41億6000万ドル(約4600億円)の売上高を計上し、前年から17%の成長を遂げた。世界で2700以上の店舗を展開する同社にとって、日本を含む海外市場での卸と小売販売はともに20%以上増加しており、成長ドライバーとして牽引している。

1990年代初めに日本市場への参入を果たしたスケッチャーズは過去3年、テレビなどの広告費をそれまでの3倍以上に増やすなどして、攻めの経営方針をさらに強めている。日本法人社長のデイビッド・トダ氏によると、日本市場の過去3年の年間収益は2ケタ成長を記録し、スケッチャーズの海外事業の中でも成長している市場の一つだ。

スケッチャーズの強みは何か?トダ氏は、拡大の秘訣の一つに品揃えをあげる。

男女問わず全ての年齢層がターゲット

SKECHERS JAPAN社長

デイビッド・トダ日本法人社長の後ろに見えるSKECHERS JAPAN本社のショールーム。

スケッチャーズジャパンは日本市場で、3000を超える種類のシューズを準備しており、そのうちの1000種類程度を市場に投入する。アメリカではその倍以上の種類のアイテムをそろえ、その膨大な数のシューズのデザインを毎年、グローバルのトレンドに合わせてリニューアルする。

スニーカーやウォーキングシューズ、スリッポン靴、スポーツ用品店で売られる本格的なランニングシューズやゴルフシューズから、女性向けの冬用ブーツや夏用のビーチサンダル、子ども用の運動靴までありとあらゆる種類をそろえる、まさに「シューズの百貨店」だ。

そのほとんど全てのアイテムの価格を1万円以下に抑えている。

「顧客ターゲットは男女を問わず全ての年齢層で、デザインと履き心地を追求して、価格は魅力的でなくてはいけない」とトダ氏は話す。「ここまで多くの品数があれば、自分の好みのシューズは必ず見つかるはずだ」

トダ氏が指摘するもう一つの強みは、スケッチャーズジャパンのオフィスを訪れると見えてくる。

東京・汐留の高層ビルの36階にあるオフィスには、7つのショールームが設けてある。本格的なランニングやゴルフなどのスポーツシューズの部屋、ウォーキングシューズの部屋、男性用・女性用カジュアルシューズの部屋、子ども向けのシューズの部屋……。

ハリウッドスタジオ流の仕掛け

SKECHERS JAPANデイビッド・トダ社長

SKECHERS JAPAN本社のショールームで話すトダ社長。壁面には多くのシューズが陳列されている。

ジャンル別に分かれた部屋の壁面には、無数のシューズが展示されている。まだ市場で販売されていない商品も多く並ぶ。商談に汐留のオフィスを訪れる買い付け担当者は、壁面に陳列されたシューズを歩いて見て回り、触り、そして商品を手に取って中央の大きなテーブルに置く。

天井にはアメリカ・ハリウッドの映画スタジオで使われている本格的なライトが備え付けられている。テーブルに置かれたシューズには鮮やかなスポットライトが当たる。スケッチャーズの商品の魅力をより引き立たせる仕掛けだ。

ショールームの隅には小型ステージが設けられている。ステージの上にシューズを履いたモデルが立てば、テーブルの下にあるライブカメラがその足元を撮影し、部屋の正面にある大型スクリーンに映し出される。

「スポットライト、テーブル、そしてイスもアメリカから運ばれてきました。このスケッチャーズのショールームは、商談をスムーズに進めて、取引効率を上げる」(トダ氏)

スケッチャーズ本社にはテレビ・コマーシャルを制作できるプロの人材やアニメーターたちが働き、テレビCMは自社で作ってしまうという。

ワシントン大学を卒業後、アメリカの大手広告代理店を経て、ナイキジャパンやアディダスジャパンで広告とマーケティングのキャリアを積み、その後クイックシルバージャパンを支社長として率いたトダ氏だが、「ここまでマーケティングに特化したブランドは見たことがない。徹底的にマーケティングに力を入れているのがスケッチャーズだ」と語る。

グリーンバーグCEOの口癖

SKECHERS JAPAN・デイビッド・トダ社長

アメリカの大手広告代理店を経て、ナイキジャパンやアディダスで広告とマーケティングのキャリアを積み、その後クイックシルバージャパンを支社長として率いたトダ氏。

少子高齢化で国内需要の伸びが鈍化していくと言われる日本市場ではあるが、トダ氏は楽観的だ。

ライフスタイルは大きく変わり、ビジネスの場においてもカジュアルなスニーカーを履くビジネスマンやビジネスウーマンが増え続け、そのトレンドはグローバルトレンドとして世界を大きく流れていると、トダ氏は言う。

「日本で高齢者が今以上に多くなれば、より多くのお年寄りにカジュアルで、履き心地の良いスケッチャーズのシューズをリーズナブルな価格で購入してもらえると思う。高齢者を含むすべての層に合わせたシューズを販売するのがスケッチャーズだ」

スケッチャーズCEOのロバート・グリーンバーグ氏の口癖は、拡大を遂げたこのシューズの百貨店の経営戦略を実にシンプルに説明している。

「我々は真のマーケティング企業であって、たまたま品質の高いシューズを作って販売しているのだ」

2018年6月、スケッチャーズジャパンは子ども用シューズの販売をさらに強化するため、マーケティングを強めていくという。日本市場におけるスケッチャーズのフットワークの軽さは今後も続きそうだ。




(取材・文:佐藤茂、撮影・今村拓馬)

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