転職最強のX企業はどこか?4エージェントに直撃!今、欲しがられる人材。

転職市場が活況だ。人口減少と好景気に伴い、市場は空前の人手不足の様相を帯びている。若手の転職志向も高まっている。終身雇用が崩壊し、自分でキャリアを築く時代。どの会社に入るかは、ゴールではなくプロセスだ。転職の際に、強力なカードとなる「人材輩出企業」はあるのだろうか。Business Insider Japanは、4社の転職支援エージェントに実態を聞いた。その企業名が意味するものを考えると、現代で求められる人材像が見えてくる。

横断歩道。

ミレニアルの間で転職思考が高まっている。では、最強カードとなる経歴とは。

撮影:今村拓馬

今回の取材では、グローバル企業や管理職の転職を得意とするエンワールド・ジャパン、ハイキャリア層の就活に特化した「外資就活ドットコム」など運営のハウテレビジョン、幅広い分野で転職支援を手がけるリクルートキャリア、外資系企業の転職を多く手がけるロバート・ウォルターズ・ジャパンの担当者にそれぞれ、話を聞いた。

まず、各エージェントから名前が上がった「転職に強いカード」となる主な企業は、次のとおりだ。

グーグル、グリー、Sansan、ディー・エヌ・エー(DeNA)、メルカリ、LINE、リクルートグループ、ゼネラル・エレクトリック・カンパニー(GE)、ゴールドマン・サックス(GS)、LVMH(モエ ヘネシー・ルイ ヴィトン)、プロクター・アンド・ギャンブル(P&G)、アクセンチュア(デジタル部門)、キーエンス

地頭の良さと若いうちの意思決定を期待

私の領域だとグーグルの評価は高いです。採用する企業側も、求職者へのアピールとして、求人票に『元グーグルの社員が活躍しています』と記載するのもよくみられます

リクルートキャリアでIT人材の転職・求職を手がける、シニアプロフェッショナルの内堀由美子さんは、そう上げた。

「スキルは人によってさまざまですが、グーグルは(ジャパンでも)入社試験が大変、難しい。あのハードルを突破したという点で、歓迎されるのではないでしょうか。とくに技術職は難関で、出身者は地頭の良さとスキルが期待されます」

同様の指摘はDeNAやリクルートについても複数社から上がった。

さらにメルカリを挙げる声も多い。4社のうち「社名は伏せてほしい」との条件付きだが、「メルカリは今相当、人を採用していますし、非常に人気がある。そのうちメルカリ出身者が市場に出てきて、引く手あまたになる可能性は十分ある」との指摘も。

グーグル

グーグル出身者への期待は、地頭のよさ?

Reuters/Mike Blake

エンワールド・ジャパン取締役の佐藤有さんは、DeNAを上げた。

若い世代でも責任あるポジションを任され、意思決定をさせてもらえるケースが多いためです。DeNA出身者は比較的、ビジネスを成功させたいというマインドセットを持ち、そういう教育を受けてきているとして、好まれます」

社内の競争が厳しく、プレッシャーが強い企業でもまれた、というイメージもプラスに作用する。

「その意味で、製造業からはキーエンスも好まれる。高報酬で知られていますが、高報酬には理由がある。若いうちに責任が伴う業務を任されていることで有名です」

グーグル人気については「P&Gなどにも言えますが、グローバルでリテンション(人材確保)や人材育成に力を入れているからです。FacebookやGEも同様です。グローバルのトレーニングを使っていて、考える力やスキームをトレーニングされていることへの、期待が大きい」(エンワールド・ジャパン佐藤さん)。

トップティア(一流)が強い理由

ロバート・ウォルターズ・ジャパンで法務や人事部門の転職支援を担当する、アソシエイトディレクターの磯井麻由さんは「やはり外資系銀行やラグジュアリーブランドの経験者の評価は(採用側からの期待が)高い」。語学力や、海外の本社との交渉力が期待されていると言う。

外資就活のハウテレビジョン取締役の長村禎庸さんは「転職したい先がどこかによりますが(マッキンゼー・アンド・カンパニーやボストンコンサルティンググループのような)外資コンサルならば、経営企画や総合商社か、同業者の外資コンサルの職歴が通りやすい。外銀に転職しようと思えば、同業者から以外は厳しい」

また、トップティアと呼ばれる、いわゆる業界のリーティングカンパニー出身であることは大きいという声も相次いだ。

「入社1〜2年で、会社とのミスマッチなどで転職を考えるケースでは、断然、トップティアにいることは大きいです。まずは新卒でトップの会社に入ったということが、就活生としてポテンシャルがあったんだな、とみられる」(ハウテレビジョン長村さん)

ロバート・ウォルターズ・ジャパンの磯井さんは、外銀などのリーディングカンパニーの経歴は「厳しい環境でスピード感を持って、生き抜いてきたタフさがある、ということで評価されやすい」とした上で、企業側のもう一つの期待を挙げた。

ゴールドマンサックスのロゴ。

トップティアと呼ばれる業界トップクラスにいたことはカードになり得るが……。

Reuters/Brendan McDermid

「あとは持っているネットワークです。(トップティア出身者は)優秀な大学、優秀な企業にネットワークを持っている。いい人材の争奪戦の時代には、リファラル(知人の紹介)が圧倒的に強いです。知り合い経由で次の採用につながることも、期待されています」

どの時期にそこにいたか

こうして見てくると「結局、有名企業が強いカードでは」という気持ちにもなるが、話はここで終わらない。

エージェント各社が口をそろえて言うのが「企業のブランド以上に肝心なのは、そこで何をしてきたか」だ。そうなると、同じX企業でも、どの時期にその企業に在籍していたかは、大きな意味を持ってくる。

「事業会社ならば、現在、伸びているところの履歴が効いてくる。ベンチャーでもすでに成長して大企業になってからではなく、成長期にいたことが重視される。大きな投資をしているSansanや、メルカリも今後は求められる履歴になるでしょう。伸びている時期の企業はいつも人手が足りないので、若いうちからチャンスが回ってきて、責任ある仕事を任されるためです」(ハウテレビジョン長村さん)

エンワールド・ジャパンの佐藤さんも、その点を強調する。

「グリーやDeNAがカードとして強いとはいえ、会社名だけでなく、その会社のどのステージで勤務していてどの程度鍛えられたかということを、鋭い(採用側の)企業は見ています。事業を回すビジネス思考があるかが問われている」

転職市場イメージ。

生涯のキャリアを見通して、選ぶべき企業とは。

撮影:今村拓馬

“カード”が使える条件

ロバート・ウォルターズ・ジャパンの磯井さんは就活で人気のコンサルについても、転職市場の評価はそう単純ではないと指摘する。

「1社目でコンサルは人気ですが、プロジェクトを短期で回す“プロジェクト屋さん”になってしまうと、専門性は身につきづらい。金融コンサルだったり、M&A担当だったりであれば、需要はある」

つまりはこうだ。

「ただブランド力で(会社を)選ぶのではなくて、どういう専門性を身につけられて、それが将来、AIが導入されても淘汰されにくい専門性かどうかを考えるべきです」(磯井さん)

リーディングカンパニーが強いとはいえ、そのカードの効力にも限界があるという声も。

「業界トップティアの企業にいたことは、早期転職ではカードになる。ただしカードになるのは、1回だけ。次からは明確に何をしていたかが、問われる」(ハウテレビジョン長村さん)

「人材輩出企業ってどこよ?」

「人材輩出企業ってどこよ?」

転職イメージ

新入社員の4割が、転職活動中もしくは転職検討中という調査も。

撮影:今村拓馬

ハウテレビジョンが運営するサービス「外資就活ドットコム」の、会員学生専用のサイトには、そんなスレッドが立っている。就活段階から、すでに「終身雇用で一生、その会社にいる」ことを想定していない学生は、少なくない。

ディスコキャリタスリサーチの「入社1年目のキャリア満足度調査」によると、2017年度入社の社員の4割が「転職活動中・検討中」との結果が出た。2018年4月に入社したばかりの新入社員からも「30歳くらいまでには一人前になって、次のステップへ進みたい」(23歳、IT企業勤務女性)という声が聞こえてくる。

変革期を迎えた日本企業

ネームバリューは有効ではあるが、結局はそこで何をしてきたか。同じベンチャーでも、成長期にいたかどうか。事業を回せるような責任あるポジションでの経験があるか。ビジネス思考はあるか。

各エージェントから挙がった、これら「求められる人材」のポイントが象徴することはなんだろう。

リクナビNEXTの藤井薫編集長は、企業を取り巻く環境について、「現代社会は、100年に一度に匹敵するようなパラダイムシフトを迎えています。日本企業の多くは、拡大期を経て変革期に入っており、ビジネストランスフォーメーション(構造改革)に対応しなくてはという自覚をもっている」と指摘する。

その上で、転職市場で求められる要素について「そういう時期に必要とされる人材は、既存の枠組みを破壊して、新しいビジネスを切り開いていく能力をもった人。ゲームのルールを変えて、自分で新しくスタートを切れる人を求める結果、成長期のベンチャーにいたりビジネス思考をもっていたりという人材が求められているのではないでしょうか」と話す。

標準化されたシステムに従うよりも、即興で変化に立ち向かえる人材を、時代が求めているのは間違いない。

(文・滝川麻衣子)

編集部より:初出時、ロバルト・ウォルターズ・ジャパンとしておりましたが、正しくはロバート・ウォルターズ・ジャパンです。お詫びして訂正致します。 2018年5月30日 11:20

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