移住をブームで終わらせない —— カヤックが移住促進サービスをスタート

面白法人カヤックが移住促進サービスに乗り出す。6月4日、カヤックの子会社・カヤックLivingが、移住スカウトサービス「SMOUT」(スマウト)を開始すると発表した。

移住

移住して「暮らすように働きたい」と考える人が増えている(写真は福島県いわき市)。

東京に住む4割が移住を予定・検討している

カヤックLiving

カヤックは海と山が近い街、鎌倉に本社を構える。

近年、30代以下の若い世代を中心に地方移住への関心が高まっている。

内閣府が2014年に行った調査によると、東京在住者(18歳〜69歳)で移住を予定・検討したいと考えている人は4割にものぼっている。その理由で最も多いのが「出身地だから」、そして「スローライフを実現したいから」だ。

その一方で同調査からは、移住希望者の大きな不安は働き口が見つからないこと、そして出身地以外への移住を考えている人の4割は移住情報が不十分だと考えていることも分かった

カヤックLivingの代表取締役・松原佳代さんは、5年ほど前から始まった移住のトレンドは今、節目に来ていると見ている。

「地域に貢献したい!という意識の高い人たちが移住し終わって、もう少し地に足がついた、普通の人たちが移住を考え始めるようになってきています」

関連記事:被災地だから移住した訳ではない。ここにはafter3.11世代が求める幸せと豊かさがある。

「来てみたら」と言われることが決め手になる

まちの保育園

移住したくても、子育てや仕事に不安を感じる人も多い。(写真はカヤックが運営に関わる「まちの保育園」)

そういった「普通の人たち」の不安要素でもある住まいや仕事、そして地域の人との付き合いの問題を解消したい、と松原さんはいう。

SMOUTでは移住に興味のある人はまずスキルや職業といったプロフィールを登録する。それを見た地域の担当者が、自分の地域に来てほしい人に声をかける仕組みだ。移住したい人と、来てほしい地域のマッチングサイト、というわけだ。

ユーザーは自分から移住先のプロジェクトに応募はできないが、おもしろそうなプロジェクトに「興味がある」という意思表示をすることはできる。

smout

SMOUTのプロジェクトページ。「栗」「大正ロマン」など、それぞれの地域の特性が打ち出されている。

提供:カヤックLiving

今回移住先候補として参加を決めた、福井県坂井市役所の林利夫さんは、このスカウトという仕組みが、移住する側にとって決め手になると思った、と語る。

「知っている地域だったら自分で行こうと思えますが、知らない場所だったら知っている人がいるかが大きい。誰かに『来てみたら。ぴったりだと思うよ』と言われたら、安心できると思うんです

移住者を受け入れる地域側からみても、事前にお互いをよく知っておくことで、移住した後に人間関係がうまくいかない、といった問題を解消することにもつながる。

地域に関わる人たちを可視化する

まちの社員食堂

カヤックが運営に関わる「まちの社員食堂」。鎌倉で働く人たちが利用できる。メニューは地元の飲食店が週替わりでつくる。

SMOUTのもう一つのチャレンジが、「移住者ではないがその地域に関わり続ける人(関係人口)を数値化し、可視化する」という試みだ。

たとえばFacebookやインスタグラムなどのSNSで、その地域について投稿したり、いいね!をしたりする人を計測し、数値化。

そのままだと東京が最も関わる人が多い地域になってしまうので、各地域は人口比率によって正規化され「ネット関係人口スコア」が算出される。さらにサイト上で、その地域に貢献している人もわかるように可視化されるという。

企業・行政・市民が一体となって、信頼やつながりに根ざした経済圏「地域資本主義」をつくる、と掲げているカヤック。

関連記事:「GDPに替わる指標を企業からつくっていく」鎌倉資本主義とは何か?

そのためにGDPではない指標をつくることが必要だ、とカヤック代表取締役の柳澤大輔さんは語っていた。SMOUTは、その実現の一歩となるのか。

(文・写真、西山里緒)

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