気候変動で死滅しつつある「グレートバリアリーフ」の現実

グレートバリアリーフは、世界で最も生物多様性の高い場所の一つ

Shutterstock/Edward Haylan

  • グレートバリアリーフは、世界で最も生物多様性に富んだ場所。
  • だが、深刻な死滅の危機にある。温室効果ガスの排出により海水温と酸性度が上昇、白化現象が起こり、サンゴが死んでいる。
  • グレートバリアリーフは今後数十年以内に死滅する可能性がある。もしそうなれば、回復には何千年もかかるだろう。

地球上で最もスペクタクルな自然環境は、同時に最も壊れやすい。人間が注意を払わなければ、完全に壊れてしまうだろう。

オーストラリア北東部の海岸に広がるグレートバリアリーフは、3860を超えるサンゴ礁からなると言われ、宇宙からも見ることができる巨大な自然の産物。

数え切れないほどの生き物の生息地であり、重要な観光資源。ユネスコの世界遺産の中で最も生物多様性に富んだ、地球上で最大のサンゴ礁、そしてサンゴ礁が育む生態系が広がる。

だが、すべてのサンゴ礁と同様に、人間の営みに影響されやすく、死滅の危機に瀕している。

グレートバリアリーフのサンゴに被害を与えているのは、漁業や汚染など現地の人間の営みであることはもちろんだが、それだけではない。グレートバリアリーフ、そして世界中のサンゴ礁を脅かす最大の原因は、気候変動を引き起こすCO2(二酸化炭素)の排出だ。

自然環境、そしてそれに依存する人間にとって、サンゴ礁の死滅がもたらす広範囲な影響は壊滅的なものになる。

Nature Geosciencesに発表された研究によると、グレートバリアリーフは過去3万年の間に、ほぼ死滅しかけた状態から5度、回復している。これは、サンゴ礁の回復は少なくとも理論的には可能だが、数百年あるいは数千年かかることを意味している。

気候変動で死滅の危機に直面するグレートバリアリーフの現状を見てみよう。

ネイチャーに掲載された研究によると、グレートバリアリーフには400種以上のサンゴからなる、3863のサンゴ礁がある。

グレートバリアリーフ

Shutterstock

出典:Nature

サンゴは動物。巨大なコロニーと様々な構造を持つ半透明の生物。

サンゴのクローズアップ

Catlin Seaview Survey / Underwater Earth

特定の種類の藻が棲み付き、サンゴ礁に鮮やかな色をつけ、太陽エネルギー、さらには海中の栄養素やプランクトンからエネルギーを得る手助けをする。

これらの生物が作り出す環境が重要。魚の4分の1が、一生のうちの一部をサンゴ礁で過ごす。つまり、サンゴ礁の死滅は、魚、そして魚を食料や収入源としている多くの人々に致命的な影響を及ぼす。

グレートバリアリーフ

Catlin Seaview Survey / Underwater Earth


グレートバリアリーフは、少なくとも1500種の魚、4000種の軟体動物、240種の鳥、その他、何千種もの海洋生物を育んでいる。

グレートバリアリーフ

JonMilnes/Shutterstock

出典:UNESCO

オーストラリア政府は、グレートバリアリーフは少なくとも年間64億ドル(約7000億円)の経済効果をもたらし、6万4000人が関連する仕事に就いていると述べている。

空から見たグレートバリアリーフ

tororo reaction/Shutterstock


総合的な推定では、年間300億ドルから3750億ドル以上の効果を世界経済にもたらしているとも言われる。この数字は低すぎるという科学者もいる。

グレートバリアリーフ

REUTERS/HO/Great Barrier Reef National Park Authority

出典:Business Insider

だが人間の営みがグレートバリアリーフや他のサンゴ礁に被害を与えてきた。

サンゴを食べるオニヒトデ

REUTERS/David Loh

農業排水による汚染がサンゴ礁を傷つけ、有害な藻類とサンゴを食べるヒトデを大量発生させた。

だが、気候変動の影響はさらに大きい。

死滅したサンゴ礁

David Gray/Reuters


気候変動によって海水温が上昇、海はCO2を吸収して、より酸性化した。サンゴは白化現象を起こし、その過程で共生関係にあった藻を失う。

サンゴの白化現象

REUTERS/Handout


白化現象はサンゴの成長を遅らせる。有害な藻や病気に対して弱くなり、死んでしまう。

サンゴの白化現象

David Gray/Reuters


2016年、猛烈な熱波による激しい白化現象によって、グレートバリアリーフの3分の1が死滅。

白化現象で死滅したグレートバリアリーフ

Dropu/Shutterstock


2017年の白化現象はさらに被害を悪化させ、わずか2年でグレートバリアリーフの半分が死滅。

死滅したグレートバリアリーフを見る観光客

REUTERS/David Gray


ある推計によると、同様の状況によって過去30年間で世界中のサンゴ礁の約半分が失われた。

白化したサンゴ

ARC Centre of Excellence for Coral Reef Studies/ Mia Hoogenboom


2030年までに世界中のサンゴ礁の60%が非常に危険な状態に晒され、98%は毎年、致命的な状態に直面することになる。

白化したサンゴ

REUTERS/David Gray

出典:World Resources Institute

オーストラリア政府は農業排水を制限し、サンゴを食い尽くすオニヒトデを駆除するために3億7900万ドルを費やすと発表した。

白化したサンゴ

David Gray/Reuters

出典:Business Insider

だが専門家は、気候変動の問題に取り組まない限り、グレートバリアリーフを救うことはできないと語った。

サンゴ礁の状態を調べる専門家

「コーラル・ガーデン」と呼ばれる地域で、サンゴ礁の状態を調べるレディ・エリオット・アイランド・リゾートのオーナー。

REUTERS/David Gray


グレートバリアリーフや世界中のほとんどのサンゴ礁は数十年の間にほぼ完全に死滅するだろう。あとに残るのはサンゴの死骸だけ。

グレートバリアリーフ

Catlin Seaview Survey / Underwater Earth


過去数万年と同様に、サンゴ礁は最終的には回復するかもしれない。だが、それには何千年もかかるだろう。しかも気候変動に取り組まないかぎり、回復することはまずないだろう。

オーストラリアの海岸

REUTERS/David Gray


サンゴ礁は生命を失う —— それは、最も重要なことだが、海の一部が死んでしまうことを意味する。そして、海の生き物と人間に壊滅的な影響を与えることになる。

死滅したサンゴ礁

The Ocean Agency / XL Catlin Seaview Survey


[原文:The Great Barrier Reef is one of the most spectacular places on the planet — here's what it looks like as it dies off

(翻訳:Setsuko Frey、編集:増田隆幸)

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