増加する20代の“1、2年転職”の評価は?会社を辞めたい時知っておくべき7法則

「石の上にも3年」も、今は昔かもしれない。商社や銀行はじめ、長年の人気企業も若手の流出は例外ではない。一方で、少子高齢化と好景気でどの企業も採用難に苦しみ、売り手市場なのは新卒だけでなく転職市場も同様だ。

転職市場

撮影:今村拓馬

3年内離職率は微増を続け、名の知れた大企業でも「成長ができない」「希望の配属でない」と、1〜2年であっさり辞めるケースも珍しくなくなっている。では実際に、3年未満キャリアチェンジをした人は転職市場ではどう評価されているのか。

地方に配属、イメージとギャップ

今の会社にずっといるつもりはなくて、やりたいことをやるためのスキルを身につける場として捉えています。周囲の同期(入社の社員)も比較的そんな感じです」

都内の外資系コンサルファーム勤務の鈴木悠人さん(20代後半、仮名)は言う。難関国立大を卒業後、「就活ではとりあえず大企業をいくつか受けた」。インターンをしていた業界の日系大手企業から、いち早く内定を獲得。営業担当として働き始めた。

ただ、日本では名前を知らない人のいない大企業で働いていても、入社から2年経つ頃には、転職活動を始めたと言う。

「最初の配属が地方支社だったことが、イメージしていたキャリアと違うなあと。ギャップを感じました」

場合によっては、5年以上支社にいる可能性もあることは、大きく影響した。入社2年目の秋頃から情報収集や試験対策も入念に準備し、外資系コンサルファームをいくつか受け、希望通りに内定を得た。

入社から3年目の秋には、大手日系企業を退社。振り返ってみて「日本の大企業の仕事のやり方やマナーが身につけられてよかった」とは、思っている。

「最初の配属が希望どおりだったら、もっと転職のタイミングは遅かったかもしれません。ただ、30歳で転職しても、次の業界ではまたどのみちイチから勉強することを考えると、結果的に、早くに出たことはよかった

なぜ我慢しなくては?

新卒で総合商社に入社した女性(27)も2年前に、総合商社からベンチャーへ転職。「できるだけ早く成長したかった。30歳までに子どもを産もうと考えると、同じ仕事を3年も繰り返していたら、それまでに一人前になれない」。入社2年目になる頃には、大企業の育成スピードに疑問を持ったことがきっかけだ。

「外資就活ドットコム」を手がける、ハウテレビジョン取締役の長村禎庸さんは「1、2年転職人材は増加している」との感触をもつ。

実際、厚生労働省の調査では大卒者の3年内離職率は、直近のデータで過去5年間は3割超で推移。本人のキャリア観との企業側のミスマッチによる離職は最近始まったことではないが、最近目立つのは「より早く成長したい」20代の希望を、売り手優位の転職市場が後押ししているという構造だ。

「人材業界内の話や面接を受けに来る人と接していても、一つの会社でなぜ我慢しなくてはならないのか?と考える若手は増えている印象があります」(長村さん)。

ただ、結果的に市場でどう評価されるかは業界、年齢、回数によって事情が異なる。20代で何度も転職、となると企業はどう評価するのだろうか。

ハウテレビジョンを含む4社のエージェント担当者の話から、7つのポイントをみてみよう。

1. IT業界、問題ない

it業界

IT業界では転職を繰り返すことに問題はない。

REUTERS

「インターネットサービス業界では、問題としない企業が多いですね」

リクルートキャリアでIT人材の転職・求職を手がける、シニアプロフェッショナルの内堀由美子さんは、一つの会社を1〜2年で辞めることについてそう話す。

むしろ「プロジェクトごとに会社を移り、20代で3社、4社とキャリアアップしている人も珍しくない。経営スピードが速いネットサービス企業では、一つの会社で同じ事業部に10数年いると、スキルが更新されていないのでは?と心配されることもあります」(内堀さん)。

2. 外資「一度も辞めていないのは不安」

外資系は20代で2〜3回、30代で3〜4回と言った転職に、違和感はありません。ずーっと1社に勤めて転職していないと、かえって柔軟性がないと受け止められます」

エンワールド・ジャパン取締役の佐藤有さんは言う。

「社会や組織の構造変化の中で、変化に適応できるかどうかが見られています。某外資メガベンチャーでは、転職していない30歳や35歳は『むしろ不安』と受け止められると聞きます。転職することが前提の考え方があるためです」(佐藤さん)

ロバート・ウォルターズ・ジャパンで法務や人事部門の転職支援を担当する、アソシエイトディレクターの磯井麻由さんも、「日系企業にあるような『3年は耐えなさい』という考え方は、外資系企業ではありません。さすがに1年未満だと、ちょと不安視される可能性はありますが」。

3. ただし、日系大手は保守的

一方、日系大手企業は、3年未満の転職について「やはり保守的」との声が相次いだ。

エンワールド・ジャパンの佐藤さんは「大手企業では、組織がキャリア準備をしてくれるので育成に5年、10年かけるのが通常。そういう会社だと、20代の転職希望者について、まだ何もやってない、とみられがちです

とはいえ、分野によって変化は起きている。

「2011年くらいからIT人材の受け止めは、日系大手でも劇的に変わってきている。ビジネスの転換期を迎える企業が多く、学歴や経験社数を気にするよりも、スキルや能力重視の採用が進んでいます。歴史のある国内製造業でも『転職1回まで』『同社格』といった条件が、外れるようになりました」(リクルートキャリアの内堀さん)

4. 年齢を10で割った数が上限説

転職市場

20代の転職上限回数は?

撮影:今村拓馬

入社1〜2年での転職は「ミスマッチがあったのだろうと、ほとんど新卒扱い」(前出のハウテレビジョン長村さん)だが、その後の転職回数は、やはり問われる。

「転職の回数の目安として、年齢を10で割った数、という説はあります。つまり20代で2回、30代で3回です」(エンワールド・ジャパンの佐藤さん)。外資であっても「転職回数は、30歳で3社目くらいという声は聞こえてきますね」(ロバート・ウォルターズ・ジャパン磯井さん)という指摘も。

5. なぜ辞めたかのストーリー大切

「なぜ辞めたかのストーリーが大切。ただ単に転職というのは、よくない」と、エンワールド・ジャパンの佐藤さんは強調する。

「1つの会社に受け身の体制で育ててもらう感覚ではなくて、3年勤めてこういうベースを作って何年後はこういう環境でこうなっていたい……といったゴールに対して、逆算してキャリアを考えているかどうかが問われます」(佐藤さん)

「ジェネラリストを育成するような日系企業にいたが、外資で専門性を育んだり語学を生かしたりしたい、といったポジティブな理由が重要」(ロバート・ウォルターズ・ジャパンの磯井さん)

6. 次が決まってから、辞めること

ただし「やりたいことと今の会社が違うと思っても、絶対にいきなり辞めないでください」。

今、転職を考える人に対しロバート・ウォルターズの磯井さんは呼びかける。

「若手社員の方によっては『まず辞めて転職活動に集中したい』と、今の仕事をしながらの転職活動に弱気になる方もいますが、辞めてしまうと印象は、かなりマイナスに。面接官は外資系企業であっても、上の世代の方が多いです。忍耐力がないのかな?とか、会社のことを把握する前に決めつけて辞めているのでは?といった、ネガティブなイメージになる可能性がありますね」(磯井さん)

7. キャリア難民に要注意

転職市場は、空前の人手不足。人材の需要があるので「年収を上げるための手段として、転職を繰り返すのは、ちょっと注意です」と、ハウテレビジョンの長村さんは警鐘を鳴らす。

「社内の昇給は実力が求められますが、転職マーケットでは、実力プラス市場の需給でポーンと上がることもある。しかし、20代ならポテンシャルで転職できても、30代では必ず、結果が問われる時が来る。実力がないまま転職で昇給を繰り返すと、実力がついているべき30代で、かえって好きな仕事にあり付けない『キャリア難民』が、これから増える可能性もある」

(文・滝川麻衣子)

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