業務提携を発表したネットフリックスのプロダクト最高責任者であるグレッグ・ピーターズ氏(左)とKDDI社長の髙橋誠氏(右)。
KDDIが2018年夏頃に提供開始する、データ通信料金とネットフリックスの利用料金をセットにした「au フラットプラン 25 Netflixパック」が話題だ。
KDDIの髙橋社長は、ネットフリックスとの業務提携に関するインタビュー時に「KDDIとネットフリックスが一緒に組んで、一番良いコンテンツを、一番良い料金で提供するスキームを提供する」と発言している。
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データ容量25GB、ネットフリックスとビデオパス、5分通話し放題がついて5500円から、という料金は確かにインパクトがある。
一方で、購入方法やプラン変更の方法によって割引額が大幅に変わる、結果的にあまりトクではないということは、「料金プランあるある」だ。「au フラットプラン 25 Netflixパック」は本当に安いのか?各種条件を変えて検証してみよう。
5500円で利用するためのハードルは意外と高い
KDDIは「au フラットプラン 25 Netflixパック」の最低月額料金を5500円としている。
「au フラットプラン 25 Netflixパック」は、その割引の仕組みを考察すると、端末の購入および回線とのセット契約に重きが置かれているプランであると分かる。
KDDIは同プランの最低月額料金を“5500円(税抜)”とうたっている。この割引を全適用するには、機種変更やMNP、新規契約などの「端末変更」時に適用される「スマホ応援割」(契約翌月から1年間-1000円/税抜)と、固定インターネット(光回線など)の契約が必要な「auスマートバリュー」(契約期間中-1000円/税抜)の両方を適用する必要がある。
だから、割引の恩恵をフルに受けて当初1年間「月額5500円」で使える人は、ある程度限られた人になる。また、既存のauユーザーが機種変せず、単にプラン変更した際には、ここまでのおトク感がないということになる。
既存のauユーザーがプラン変更する場合の「おトク度」は?
結論から言ってしまうと、既存のauユーザーが(機種変せずに)「プラン変更」する場合は、そもそも月額5500円にはならない。スタートラインは月額7500円だ。
これがどの程度、これまでに比べて安いのかは、その人の使い方による。シミュレーションの結果をまとめると以下の通りだ。
プラン変更した方がいい人の例
- すでにネットフリックスとビデオパスのどちらも契約している
- 月末が近くなるとデータの月間使用量が20GBに達してしまうが、30GBを契約するほどではない
プラン変更しない方がいい人の例
- ビデオパスに興味のあるコンテンツがない
- Wi-Fiなどを活用しており、auピタットプランなどで5GB以内で済んでいる
現行の料金プランに「au フラットプラン 25 Netflixパック」相当のオプションをつけて(左)、支払い月額を比較した。表内はすべて税抜。
Business Insider Japan
例えば、使用可能なデータ容量が現状最も近いプランである「au フラットプラン 20」で、ネットフリックスのベーシックパックおよびビデオパスを契約している人の場合、「au フラットプラン 25 Netflixパック」に加入するだけで使用可能データ量は毎月+5GB、料金は212円(税抜)安くなる計算だ。
データ容量が+5GBというのがポイントで、これをいくら分だと見積もるか。チャージで5GB追加しようとすると、1GB=1000円×5で5000円(税抜)だが、一方でauフラットプランでは、20GBのひとつ上の30GBのデータ容量の差額は、10GBで2000円(税抜)。ここでは、前出のKDDI髙橋社長の発言をとって、その半分の5GB=1000円程度と見て良さそうだ。
とすると、ざっくり1200円程度おトクと表現できる。
他キャリアとの比較では、KDDIは確かに割安
では、他キャリアで同様のプランを契約した場合、auと他社でどれくらい違うのか。au、ドコモ、ソフトバンクの3キャリアで、端末代金の毎月割引などを含まない料金プランだけの計算結果で比較してみた。
表内はすべて税抜。
Business Insider Japan
料金プランだけの比較では、ネットフリックスと何らかの別の動画配信サービスを大容量のデータプランで使うなら、auが最もおトクという計算になる。
この比較で注意が必要なのは、端末代とその割引が含まれていないということ。厳密な2年間の支払総額での比較は、「au フラットプラン 25 Netflixパック」が正式開始(2018年夏を予定)した時点で、改めて各社の割引キャンペーン込みで計算するしかない。
端末ではなくサービスの使いやすさでキャリアを選ぶ?
auの2018年夏モデルである「Xperia XZ2 Premium」。ドコモでも発売予定。
端末面で見ると3キャリアとも似通ったラインアップで、ネットフリックスの※HDRコンテンツを再生できる機種がiPhoneとAndroidの両方で提供されている。
※HDRとは:
High Dynamic Rangeの略。明るい部分と暗い部分をハッキリ表示できる。表示するには再生する機器とコンテンツの両方の対応が必要だ。
KDDI髙橋社長も認めるように、電波のエリアも、速度も、端末ラインナップでも、キャリア差が極めて少ないのが日本の現状だ。「利用したいサービスと料金プランの魅力でKDDIを選んでもらう」という同社の方針がどこまでユーザーの支持を得られるか、注目だ。
(文、撮影・小林優多郎)