「“嫌な予感”案件は受けない」 フリーランスで1番多いトラブルとは

多様な働き方の推進に向け、官民が足並みを揃えようとする中、これまで“無法地帯”といってもいいほど野放しにされてきたフリーランスと企業の関係が変わろうとしている。

人生100年時代には、企業の寿命より個人の労働期間が長くなると言われ、「フリーランスとして働く」ことはより身近な選択肢になっていく。

個人と企業がよりよい関係を築くために必要な知識やスキルとは? これからどんな法整備が求められるのか? Business Insider Japan統括編集長の浜田敬子が、実際にフリーランスとして活躍する4人から本音を聞いた。

イベント登壇者

フリーランスが働き方の選択肢として広まっているが、彼らをサポートする社会の仕組みは整っていない。

スピーカー・プロフィール

北健一:ジャーナリスト/出版労連書記次長
出版・ネット関連で働くクリエイターの組合・出版ネッツの委員長を経て出版労連書記次長に。本職はフリーランスのジャーナリスト。組合では報酬・代金不払い、契約打ち切り、ハラスメントなどの労働相談も担当。著書に『電通事件』『その印鑑、押してはいけない!』ほか、共著に『委託・請負で働く人のトラブル対処法』ほか。

城みのり:リサーチクオリティコントローラー
35歳からマーケティングリサーチ業務に携わり、結婚・出産(育休)を経て会社員として復帰。だが、「その日を終えること」で精一杯の日々に終止符を打つべく1年4カ月後の2016年に退社。クライアント獲得はWaris、サーキュレーションなどのフリーランス人材マッチング企業に任せ、現在チームを組む18人のリサーチャーのクオリティコントロールとリサーチのコア業務に専念している。

芳賀彬:システムエンジニア
新卒で某自動車メーカーグループのシステム会社で、システムエンジニアとして開発・保守を担当。その後、広告代理店グループのWeb制作会社でWebディレクターを経験し、2017年に独立。現在はクラウドテックを活用し企業で業務委託をしつつ、個人で受託制作とサービス開発を手掛ける。

平田麻莉: 一般社団法人プロフェッショナル& パラレルキャリア・フリーランス協会 代表理事 ・PRプランナー
PR会社ビルコムの創業期に参画。大手企業からベンチャーまで、国内外50社以上で広報の戦略・企画・実働を担う。慶應義塾大学ビジネス・スクールを経て、同校の職員および慶應義塾大学大学院政策・メディア研究科博士課程学生として、フリーランス&パラレルキャリア活動を開始。現在は、フリーランスとして広報、書籍出版などに従事。 企画・プロモーションを手掛けた『予約がとれない伝説の家政婦が教える魔法の作りおき』『志麻さんのプレミアムな作りおき』『伝説の家政婦mako 魔法のポリ袋レシピ』はベストセラーに。

浜田敬子統括編集長(以下、浜田):今日はさまざまな業界のフリーランスの方々から、働き方のリアルな現状を伺いたいと思います。簡単に普段の活動について教えていただけますか。

浜田編集長と北さん

フリーランスの相談を受け付ける、労連の書記次長も務める北健一さん。

北健一さん(以下、北):フリーランスのライター兼編集者として10年ほど、雑誌やウェブ、書籍などで執筆活動をしています。一方、業界のフリーランスの相談を受け付ける出版労連の書記次長としてトラブル解消に立ち会っています。

城 みのりさん(以下、城):会社員を経て、フリーランスになりました。転身のきっかけは出産・育児です。育休から復帰して1年4カ月ほど会社員として働きましたが、あまりにハードで「このままでは死んでしまう」と危機感が募り、マーケティングリサーチの分野でフリーランスに。現在は総勢18人の同業フリーランスと連携してチーム体制で仕事を受注しています。

浜田:特に女性にとって、育児との両立は働き続けるうえでの大きな課題ですね。会社に十分な制度があっても、両立のハードさに心身共に疲れてフリーランスを選択する人も少なくありませんね。「チームで働く」というのも新しいフリーランスの形態ですね。後ほど詳しく伺いましょう。そして、現在28歳と、壇上で一番お若い芳賀さん。

芳賀彬さん(以下、芳賀):新卒後、某自動車メーカーのグループ会社でシステムエンジニアとして入社し、自動車関連のシステム開発を担当しました。その後、広告代理店系のウェブ制作会社でディレクターを務めた後、昨年独立しました。現在は週3日ほど企業に常駐しつつ、チームを組んで受託制作と自社サービスを開発中です。

浜田:若くしてフリーランスの道を選んだ理由は?

芳賀さん

「自分で考えて、自分で作る」働き方をしたかったと話す、芳賀彬さん。

芳賀:仕事を依頼する側・受ける側の両方を経験してみて、やっぱり「自分で考えて、自分で作る」という働き方をしていきたいなと思ったんです。それが可能になる選択肢を考えると、フリーランスでした。

浜田:なるほど。平田さんはフリーランス協会の代表理事として、個人と企業の共創社会のための課題洗い出しや、働き方のフレームワークづくりに奔走されていますね。ご自身もフリーランスとして多忙な日々と。

平田麻莉さん(以下、平田):私は広報が専門ですのでいろいろな企業の広報をお手伝いしたり、人材育成の教材を作ったり、とにかく「やって」と依頼いただいたことをお受けしています。フリーになって8年目で、この働き方をとても気に入っている一方で、その間に2度の出産や保活を経験したこともあり、日本ではまだまだフリーランスという働き方が“規格外”なのだなぁと実感することも度々ありました。

「断れず受注」で働き過ぎに?

浜田:フリーランスは一つの会社に縛られない自由さがある一方、仕事量の調整も自分でしなければいけないですよね。私も出版業界が長く、フリーランスの方とお付き合いする機会が多いのですが、「頼まれたら断れずにどんどん受けてしまって、気づいたら働き過ぎになってしまう」という声をよく聞くのですが。

平田:自分のキャパシティーを見極める力は問われますね。私の場合はこの仕事が好きで面白いから、気づくといつまでもやってしまって、周囲から長時間労働だと指摘されることがよくあります。育児と仕事の時間は1日の中でシームレスに折り重なっている感じで流れていくので、無理に分けようとしていません。子どもを寝かしつけた後にまた仕事を再開するといったバランスが、私にとってはむしろストレスフリーなんですよね。

:私は毎日8時半から17時半までを仕事の時間と決めて、できるだけオンオフを切り替えるようにしています。それを可能にするのは、チームで仕事の振り分けを行なっているから。スキルや適性に合わせて私が振り先を調整し、手が挙がった方に分業していくというスタイルで、同時期に複数の案件をお受けしてもオーバーワークにならない仕組みを作っているんです。

芳賀:僕はまだ自分を売り出し中というステージなので、いただく仕事は基本的に全部受けるようにしています。

“嫌な予感”で断る勇気

浜田:受けるか受けないか、決める基準は何ですか?

芳賀:案件の内容と金額ですね。

浜田:お断りするということもありますよね。どんな時ですか?

:私は…、“嫌な予感”がする時(笑)。

一同:(「あるある」とばかりに頷く)

浜田:嫌な予感、ですか(笑)。例えば?

城さん

「とりあえずやってみてください」と、契約書もない例はお断りすると話す、城みのりさん。

:典型的なのは、事前に交わす契約書をいつまでたっても戻してこない時。こちらが判子を押す前から「とりあえずやってみてください」と言われ、「とりあえずって、詳細なヒアリングもできていないのに何をどうやるんですか。それが気に入らなかったらどうするんですか」とメールするけれど、答えが返ってこない。そんな時は残念ながらお断りしますね。

浜田:深刻なトラブルに発展しそうになったことは?

:やはり事前の契約書のやりとりが曖昧なまま始めてしまった仕事で、納品後に案の定、難癖をつけられ、修正を繰り返し、キリがない状態に陥ったことはありますね。

浜田:それは事前に決めた金額内でどんどん作業が膨らんでいくというパターン?

:おっしゃる通りです。以来、きちんと事前に契約書を取り交すのは大前提として、その契約書には修正の回数制限や「再調査は何項目まで」といった条件を細かく書き入れる必要があるなと学びました。今では、顧問弁護士が全部チェックしてくれているので安心しています。

浜田:顧問弁護士を? 個人としてつけていらっしゃるんですか?

トラブル防止に効く顧問弁護士

:はい。今の仕事で起業する前にアメリカで起業した経験があって、リーガル社会に触れた影響がありまして。そのうち日本もそうなっていくんじゃないかと思ってつけたのですが、“お守り”みたいなものですね。

浜田:ちなみに月おいくらで?

:私の場合は月3万円でお願いしています。

浜田:安心料としては高くないということですね。頻繁にご相談も?

:いえ。契約書のリーガルチェックがほとんどですね。でも、これがあるとないとでは大違いで、以前、「雇用契約書」の書式の「雇用」部分を「業務委託」に書き換えられただけということがあって。「中身が雇用契約そのもの!」と驚いて、発注先に聞いたら「あ、タイトルだけ書き換えちゃったんだけど、何か違うところがあったら言ってね」とまったく悪気がない様子。あのままスルーして判子を押していたら、と思うと怖いですね。普段のやりとりに関しては、メールのやりとりに「顧問弁護士のチェックが入ります」と一文入れるだけで、結構、効果はあるんじゃないかと思っています。

浜田:北さんは組合として相談を受けることも多いと思いますが、どんなトラブルケースが目立ちますか?

:とにかくよくあるのが、代金報酬の未払いですね。相談の半分くらいは、これです。

浜田:未払いの理由としては?

:大きく2パターンあって、一つは、仕事の出来や進め方を巡って見解が相違して払い渋るパターン。もう一つは、実は発注側の資金繰りが苦しくて、でもそれを言うのはカッコ悪いから「ちょっとこの出来じゃね……」とごねて長引かせるというパターンです。

浜田:どうやって解決を?

:当事者の立場や希望にもよりますが、組合が間に入って発注者と話をしようとするだけで、問題が解決に向かうことは多いですね。「組合が入ってきて、ビックリした」と(笑)。

浜田:やはり代金の契約の問題は多いんですね。出版業界では、発注時に原稿料を明示しないという悪い慣習もありますよね。

平田

「企業間取引だったらあり得ない」ことも、フリーランスの仕事上では起きてしまっていると話す、平田麻莉さん。

平田:むしろ「契約条件を先に提示するのは失礼かと思っていた」という編集者もいるそうで。企業間取引だったらあり得ない!と驚きました。

浜田:予防策としては、城さんのように顧問弁護士をつけるというのが一つ。フリーランス協会でも相談窓口を用意されているんですよね?

平田:我々が直接相談に乗るというより、そういったサービスを提供している会社と連携して、会員の方の福利厚生オプションとして使っていただける形にしています。あと、対策の一つとして私が面白いなと思ったのが、ある方は、gmailのアカウントを2つとって、一人二役で秘書役を自演していたんです(笑)。

浜田:ハードな料金交渉は“別人”でと。

平田:取引先から「きっちり交渉される方ですね」と思われることは決していい意味にならない、という皮肉な状況が現れているわけですが。

大ケガをしても労災が下りない

パネル

提供:プロフェッショナル&パラレルキャリアフリーランス協会

浜田:さて、ここに「フリーランスの私たちにとって必要なのは?」という選択項目があります。

この中で、特に求められている項目は何だと思いますか?

:相談が多いという意味では、やはり「契約の履行確保」、つまり未払い対策でしょうか。それと、実際に事が起きたら深刻になるのは「労災保険」の有無ですね。どんなに気をつけていてもお仕事でのケガや疾病のリスクはゼロにはできないので、“もしもの時の安心”は確保されるといいですね。

浜田:具体的にどんなケースがありましたか?

:スタントマンとしてフリーで働いていらっしゃった方が、大手キー局のロケ現場でもらい事故に遭い、片目を失明したという事例がありました。契約上フリーだったという理由で、労働基準監督署から労災不支給の決定を出されてしまい、異議申し立て中と聞いています。同じ現場で社員と一緒に働いているのに、フリーランスというだけでまったく守られない、というのはどうにかならないかなと思っているんです。

浜田さん

「フリーランスも社員も同じように扱いたいが、かえって公平でなくなるジレンマ」を話す、浜田敬子編集長。

浜田:前職の出版社で編集長をしていた時、業務委託契約として編集部で働いているフリーの方に海外出張に行ってもらう時、私としては「社員と同じように取材してもらうのだから、保険をかけてあげたい」という気持ちがあったんですね。でも、会社としては「NO」でした。雇用関係がない以上、保険はかけられないと。結果、他社の事例も調べて会社と交渉したら、認められるようにはなりましたが。働く形態によって守られる範囲が大きく違う現状の仕組みは変えていくべきだと私は思います。社員と同じように働いてくれているんだから、同じように扱いたいんだけど、業務委託(フリーランス)の方でも望む人と望まない人がいる。そのあたり、城さんはどう感じてますか?

:私は「あまり構ってほしくない」と思う性格です(笑)。一歩引いて、「私は外の人間です」というスタンスでお付き合いし、出張にかける保険に関しても「必要であれば立て替えて、後ほど請求させていただきます」と言う方がスッキリします。

浜田:クライアントとの距離間はあえてキープすると。飲み会にも行かない?

:行きません。基本的に、仕事だけの関係です。複数の案件を抱えていると、一社とだけ深く関わると、業務が進まなくなってしまいますので。

飲み会には誘ってほしくない

浜田:芳賀さんは週3回、一社に常駐されているということで、「半社員」のような見られ方をするのではないかと思うのですが。

芳賀:僕もやっぱり、1枚壁を作っています。

浜田:例えば、部内で歓送迎会がある時、「業務委託の人は会費なしでいいですよ」と言うと、「私たちも払います。編集部員として扱ってください」と言われたことがあって。どうやって付き合ったらいいのか迷ったことがあります。

芳賀:それはかなり良い方ですね(笑)。たいていの人は、「飲み会とかはいいです」と引いて距離を保つものだと思います。

浜田:実はあまり構ってほしくない?

芳賀:僕は構ってほしくないですね。一歩踏み込んじゃうと、ズルズルとハマっちゃいそうで。「社員にならないか」とか言われても困るし。

浜田:社員以外の働き方を求めてフリーになったのに。では、城さん、先ほどの14項目で、特に必要だと思うことは?

賢くプロにアウトソース

城さん

フリーランスは子供を保育園に通わせづらいと語る城みのりさん(右から2番目)。

:「出産・育児・介護のセーフティーネット」に関しては、個人の努力だけではどうにもならない部分だと思います。フリーランスというだけで子どもを何年も保育園に預けられずに、仕事を中断せざるを得ない知人は周りに何人もいます。すごく優秀な方なのに、「子どもが3歳くらいになるまでは無理かな。残念」っておっしゃっているのを聞くと、もったいない損失だなと。

浜田:保育園申し込みのための書類集めも大変だと聞きますよね。

:はい。会社員時代は年に1回、就業証明書を取れば済んだことが、フリーになってただでさえ雑務が多いのに、四半期に一度書類提出を求められたり、通帳のコピーまでつけなければいけなかったり。

浜田:フリーになると経理もすべて自分でやることになるので、雑務の量が膨大になるそうですね。

:そうなんです。私は自分で調べて丸2日かけて慣れない作業をやるより、お金を払ってプロにお願いして、その分、本業で稼いだ方が効率的だと考えて、税理士さんにすべてお願いするようにしました。

浜田:賢くアウトソースする工夫がおすすめだと。芳賀さんは14項目で何が重要だと感じますか?

契約書は「変更あり」前提で

芳賀:迷いますが、「契約条件の明示」と「契約内容の決定・変更・終了ルールの明確化」ではないかと思います。

浜田:エンジニアの業界は、比較的、事前の契約書がきちんと交わされる文化ですか。

芳賀:はい。僕も必ず事前に契約内容の合意を得た上で、着手金もいただいて、制作を始めるようにしています。

浜田:事前にきちんと決めておくべき点として、注意していることはありますか?

芳賀:やはり仕事をしながら仕様は変わっていくので、変更が生じる前提で契約書を作ること。「変更があった場合は、見積りも変更しますよ。金額が変わりますよ。いいですよね?」という内容にしておくことは大事かなと思います。あとはやはり著作権の所在についても要確認ですね。

浜田:無理な納期を言われるようなことはないですか?

芳賀:それはむしろ制作会社の社員だった時のほうが厳しかったですね。フリーランスのほうが自分の交渉次第で融通がきくというのが実感です。

フリーを選んだのは自己責任?

浜田:平田さんはいかがですか? 課題の全体像を把握しているフリーランス協会の立場として、最重要項目だと思われるのは?

平田さん

フリーランスのための協会を立ち上げ、フリーランスの働き方の見直しも働きかけて来た、平田麻莉さん。

平田:14項目は大きく分けて、「仕事上のトラブル対策」「仕事上のリスク対策」「生活・健康上のリスク対策」の3つにまとめられると思っています。中でもやはり、健康・出産・育児・介護に関して生じるライフリスクについては働き方問わず誰もが背負うものなので、セーフティネットはあったほうがいいと思います。特に出産・育児に関しては、私たちが2017年末に行った実態調査によると、フリーランスおよび経営者として働く女性たちの実に44.8%が産後1カ月以内に仕事復帰していたというデータが浮かび上がったんです。私自身は好んでそうだったんですが、一般論で考えると母体安全上の問題をはらんでいるのではないかと感じます。

フリーランスの女性にも出産・育児のサポートを求める署名を呼びかけると1万3000人以上集まり、ヤフトピにも取り上げていただいたんですが、そのコメント欄が荒れまして。

浜田:そうだったんですか?

平田:はい。かなり辛いコメントを頂きました。「自分で勝手に自由の身になっておいて何が保障だ。会社員は社会保障を受ける代わりに忍耐しているのに」という批判だったり、女性の先輩方が「私の時代はもっと大変だったのに自己管理で乗り越えた」とおっしゃっていたり。勉強になりました。キャリア開発やジョブマッチングのサポートについても、どこまでを自己管理の範疇と考えるかは、まだ議論が必要な部分だと思います。ただ、人生100年時代と言われる中、個人が自分の価値を高める必要性がますます強まる流れにあって、今は雇用保険が主な財源になってしまっている。手厚いリカレント教育(社会人の学び)のチャンスをもっとフリーランスにも広げていった方が日本の国力を考えると良いのではてほしいという思いはありますね。

浜田:フリーランスで働いていると、何かトラブルが起きても、「だって自分で選んだんでしょ?」と冷たくされることも少なくないと思います。今おっしゃった「自己責任論」については、皆さんはどう考えますか?

:3つのグループで言うと「生活・健康上のリスク対策」以外は、自分の努力次第で改善できる部分も多いのではと思います。スキルアップの機会を見つけるくらいの努力は、フリーランスになるのなら頑張って当然だと私は思います。

北さんと浜田さん

フリーランスにも様々働き方があると北健一さん(右)。

浜田:自己管理をしっかりして、取引先とトラブルを起こさない対策も自分で講じていこうよと。その能力も含めてフリーランスなのだということですね。北さんはいかがですか?

:すごく重要なテーマだと思っています。まず、押さえるべき前提は、一口にフリーランスといってもその働き方はさまざまであること。本当にプロフェッショナルに独立して企業と渡り合えている人もいれば、社員とほとんど変わらない形で働く人もいるので、一律に「こういう法律を作ればOK」とはならないんです。

浜田:たしかに、就職氷河期の世代には、「社員として就職できなかったから、止むを得ずフリーランスに」という消極的選択をした人も結構いますし。

:グラデーションに応じて考えていくことが大事ではないかと思います。そしてもう一つ、「自由か保護か」という二択で考えるのではなく、「適切な保護があるから、思い切り挑戦できる」とバランスを取っていく考え方もあるのではないかということ。山を登る時に命綱があるから、危険な道にも挑戦できるように。

「セルフOJT」でスキルアップ

浜田:スキルアップの機会に関しては、皆さんどうやって作っていますか?

:私は会社員を辞めてまだ雇用保険からの一定金額の助成がある期間内に大学院受験に挑戦したことがあるのですが、その時は残念ながら不合格となってしまって。再チャレンジしてみたいという気持ちがありつつも、会社員時代と違って助成がなく100万円単位で支出が変わるので、なかなか踏み出せないでいるのが現状ですね。

平田:例えば、スキルアップにかかる支出を経費として認めてもらえるだけでも、学びに対して積極的になれるフリーランスの方は多いと思います。

:私の場合は、同業者の集まりに行って事例を共有し合うことぐらいですが、社会人大学に3カ月ほど通ったこともありました。

芳賀:僕の場合は、仕事を通じてスキルアップの機会を作っている感覚ですね。エンジニアの世界は技術の進化が早いので、キャッチアップできるように、頼まれてなくても新しい技術を試してみたりしています。

平田:まさにそういった「セルフOJT」の意識は大事ですよね。

フリーランスは孤独じゃない

浜田:芳賀さんは、トラブル経験ないですか? 嫌な発注者とかいませんでした?

芳賀:まぁ……、ほとんど性格の問題ですよね(笑)。

浜田:嫌な性格の発注者でも受ける?

会場風景

会場には多くのフリーランスや、多様な働き方に興味をもつ人たちが集まったほか、イベント内容はインターネット上でライブ中継された。

芳賀:受けますね。

浜田:そういう時のご自身のプライドや気持ちの保ち方というのはどうされて?

芳賀:僕は超ネガティブなので凹むんですけど、チームの仲間と飲んで愚痴って解消してます(笑)。

浜田:フリーランスというと一人で黙々と……というイメージがありますが、芳賀さんや城さんはチームを組んで仕事を受注していて、その良さを実感されているようですね。

:大いに実感しています。同業の仲間さえいれば、仕事は止まらないんです。お互いに忙しい時にフォローし合ったり、情報交換もできますし。なので、私は長期休暇もしっかりといただきますよ。夏休みも10日は休んでいます。

同業者はセーフティネット

浜田:羨ましい! それでは最後に、フリーランスとして楽しく働くためのポイント、やりがいとして思っていらっしゃることを一言ずつ。

:私は、「雇用かフリーか」という点が必ずしも本質的分岐点と思わないんですが、どちらにしても、もう少し安心して働くためのセーフティネットを整えて、どんな働き方でも今よりちょっと幸せに感じられる社会を作れるといいなと思っています。困った時に頼れる相談窓口を知っておくのはその第一歩ですね。

:仲間とネットワークを作ること。同業者はライバルではなく、最強のセーフティネットになる。その捉え方をするだけで、仕事も広がっていきます。

芳賀:まだ経験が浅い立場ですが、やはり「自分で考えて自分で作る」という働き方ができるのはフリーランスならでは。スキルアップの努力は惜しまず頑張りたいです。

平田:少し前に、浜田さんが前職から“ライフシフト”されてBusiness Insider日本版の立ち上げに没頭されていた時、「大変だけど、生きている実感がある」とFBに投稿しているのを拝見したのですが、まさにフリーランスという働き方もそうだと思います。自分の力で結果を出していくことはハードだけれど、やりがいはある。これからますます長生きの時代になっていくと、「65歳以上はほぼ全員フリーランスになる」といっても過言ではありません。フリーランスに限らず、いろんな働き方を行き来できる社会になるといいなと思います。

浜田:皆さん、ありがとうございました。特に「個人でもチームをつくる」というのが印象的でした。私も将来、フリーランスになることがあれば仲間と一緒に頑張ろうと思います。

(文、構成:宮本恵理子、撮影:今村拓馬)

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