会長兼CEO(最高経営責任者)として、カルビーの業績を一気に伸ばした松本晃氏(70)が、RIZAPグループの代表取締役COO(最高執行責任者)に就くことになった。
マーケットを驚かせた人事の背景には、同グループ社長の瀬戸健氏(40)の周到な準備と、1兆円企業への野望がある。瀬戸氏が2018年5月30日、Business Insider Japanのインタビューで語った。
インタビューに答える瀬戸健氏=2017年8月2日撮影。
撮影:今村拓馬
松本氏のCOO就任は6月24日の予定で、瀬戸氏は代表取締役CEOとなる。
松本氏は1972年4月に伊藤忠商事入社し、ジョンソン・エンド・ジョンソンの日本法人社長などを経て、2009年6月からカルビーの会長兼CEOを務めている。
瀬戸氏は、かなり前から松本氏に注目していたようだ。「ジョンソン・エンド・ジョンソンのころからウォッチしていた。それで、なにかご縁があればと思っていた」と説明する。
瀬戸氏は2018年1月、それまで面識がなかった松本氏に連絡を取った。「(カルビーでの仕事が)10年が経とうとしていましたから」と説明する。2人は、4カ月前の1月24日に初めて会い、食事をともにしている。
そもそも、なぜ大物経営者にRIZAPグループへの参画を要請したのだろうか。
瀬戸氏「うちの会社はいまのベースでは、意外としっかりと回っているんですが、これから売り上げのケタを変えていくうえで、やはり課題だらけなんです。松本さんとお話したときも、課題の話しかしていないぐらい」と言う。
ライザップグループ社長の瀬戸健氏(左)と、カルビー会長兼CEOの松本晃氏。
撮影:小島寛明
2018年3月期のRIZAPグループ全体の売り上げ(売上収益)は、1362億円。1000億円台の売り上げの「ケタ」を変えるとなると、グループを1兆企業にすることになる。計画のうえでも、2021年3月期の連結売上収益3000億円、営業利益350億円を目指している。
企業買収を繰り返し、40歳にして70社のグループ企業を率いる瀬戸氏は、さらに先を見据えている。今回の松本氏の招へいは、そのための人事と受け止めていいだろう。
「長きにわたって経営できるように、しっかりと中で、身近で教えていただきたい気持ちが強い。経営にフルコミットしていただくには、COOではないかと思った」(瀬戸氏)
松本氏はすでに、瀬戸氏に経営についてのアドバイスをはじめている。COOへの就任を発表した翌日の5月29日には、松本氏はRIZAPグループの表彰式に顔を出し、社内の打ち合わせにも参加したという。
瀬戸氏は「遠慮なく、はっきりおっしゃっていただけるんで、いいですよ。だから、われわれもどれだけ松本さんから学べるか、ということだと思う」と手応えを感じている。
新しい役員を迎える際などには、瀬戸氏は、グループ企業のトップらに「すごい人が入ってきたから、味方につけると、絶対に仕事がやりやすくなりますよ」などと、まめに電話をかけるという。新しい仕事場で、有能な人材が力を発揮しやすい環境をつくるのが、自身の役割だと考えているからだ。
6月24日の株主総会以降、RIZAPグループは、2人の代表取締役がいる体制になる。
瀬戸氏は「仮にぼくがいろいろと口を出したら、松本さんの力がゼロになってしまう。その人の力を引き出したいのなら、やりたいようにやっていただくのが一番」と話した。
(文:小島寛明)