北朝鮮の次はロシア? アメリカが米ロ首脳会談を計画、専門家は「それだけでプーチンの勝利」と指摘

プーチン大統領とトランプ大統領

Reuters

  • アメリカとロシアはトランプ大統領とプーチン大統領の首脳会談を実施すべく、調整を進めている。
  • 専門家は現在のアメリカとロシアの関係を考えれば、米ロ首脳会談を開催しても、アメリカには得るものなど何もなく、失うものばかりだと指摘する。
  • 「だが、これがトランプ流の交渉術なのだろう」国務省の元関係者は言う。「アメリカ大使館をエルサレムに移転したが、その代わりに得たものなどない。北朝鮮に首脳会談の機会を与えたが、何も得ていない。イラン核合意からも離脱したが、何も得ていない。今回もいつもの通りだ」

ホワイトハウスとクレムリンはトランプ大統領とプーチン大統領の首脳会談の実現に向けて、初期の調整を進めている。ウォール・ストリート・ジャーナルが1日夜(現地時間)に報じた

関係者によると、首脳会談の目的は2国間の長きにわたる緊張の緩和だという。

ホワイトハウスは今年3月に行われた電話会談で、トランプ大統領がプーチン大統領をワシントンD.C.に招待したことを認めていた。

米ロ首脳会談開催のニュースは、アメリカで2016年の大統領選をめぐるロシアの介入疑惑について、ロバート・ミュラー特別検察官による捜査が盛り上がりを見せる中で出てきた。ロシアによる選挙への介入だけでなく、同検察官はトランプ陣営がトランプ氏の指示によってモスクワと共謀したのか、2017年に捜査の存在を知ったとき、トランプ氏は司法妨害しようとしたのかどうかについても調べている。

アメリカとロシアの緊張は、2国間の直接対立にとどまらない。ロシアは隣国ウクライナへの攻撃を強め、シリア内戦ではアサド政権を支持し続けている。

同時に、モスクワは北京と接近している。これは、アメリカにとって悪い前触れだと専門家は指摘する。そして先週初め、ロシアのラブロフ外相は北朝鮮を訪れ、金正恩氏をロシアへ招待した。ラブロフ外相の訪朝は、6月12日に米朝首脳会談が控える中で行われた。

「ラブロフ氏は平壌で一体何をしていたんだ? 我々の邪魔をする以外にどんな利益があると言うんだ? 」ロシア政策に詳しい元国務副次官補リチャード・カウラリック(Richard Kauzlarich)氏は言う。「今のアメリカとロシアでは状況が全く違う。トランプ大統領とプーチン大統領の会談はそもそもやるべきでない。得るものなど何もなく、失うものばかりだ」

ミュラー特別検察官による捜査が進んでいることや、ロシアの国際舞台における攻撃的な姿勢を考慮に入れた上で、トランプ大統領とプーチン大統領の首脳会談についてどう見るか尋ねられた政権関係者は、ウォール・ストリート・ジャーナルに対し、「もちろん、政治的見解については議論が分かれる」と述べた。

「いつもの通り」

トランプ大統領とプーチン大統領

Thomson Reuters

さらに複雑なのは、トランプ政権のロシアに対する強硬姿勢と、トランプ大統領のプーチン大統領に対する個人的な好意が一見、同列に並べられていることだ。

NATOの元高官でアメリカ国防総省にアドバイスしたこともあるマーク・シマコフスキー(Mark Simakovsky)氏は、トランプ大統領は政権の外交政策や国家安全保障政策のチームと考えを合わせ、ロシアに対してより強い姿勢で臨む必要があると強調する。

現状では、「アメリカを思いとどまらせる力は存在しない」シマコフスキー氏は言う。「ただ、周囲はアメリカはこうした問題におけるグローバル・リーダーではないと言うことはできる。なぜなら、わたしたちは統一された政策を持っていないのだから、と」

誤解のないように言っておくと、ロシアに関しては、ホワイトハウスのミスは尽きることがない。

例えば4月、テレビ出演したニッキー・ヘイリー国連大使が、シリアで起きた化学兵器の使用が疑われる攻撃に関与したとして、ロシアに新たな制裁を課す考えを示すと、トランプ大統領は激怒。その数時間後には、ホワイトハウスがその立場を反転させ、ヘイリー大使に不意打ちを食らわせた。

その前には、ヘイリー大使がテレビ出演時にロシアによるウクライナ侵攻を批判すると、トランプ大統領は「誰が彼女のためにあんなことを書いたんだ? 」と怒鳴ったと言われている

そして2017年、トランプ大統領がウクライナへの武器輸出を承認したとき、大統領は周囲に対し、この動きについて公に議論しないようにと警告した。

しかし、米ロ首脳会談でアメリカが望むような成果を得るためには、トランプ大統領は引いてはいけないと専門家は指摘する。

「首脳会談で良い成果を上げるには、トランプ大統領は、アメリカはモスクワが世界に及ぼす悪い影響に目をつむるつもりはないという姿勢を強化しなければならない」オバマ政権下で国家安全保障会議(NSC)のシニア・ディレクターを務めたエドワード・プライス(Edward Price)氏は言う。

加えてプライス氏は、トランプ大統領はモスクワはウクライナやシリア、アメリアの選挙妨害に対する姿勢を変えなければならないという「力強いシグナル」を送る必要があると言う。「そうでなければ、プーチン大統領に青信号だと受け取られるだろう」

しかし、カウラリック氏はこうした会談をホワイトハウスが計画するだけでプーチン大統領に有利に働くと主張する。

「すでにプーチン大統領の勝ちだ」カウラリック氏は言う。「プーチン大統領は、どうしてトランプ大統領との関係が築けないのかと怒っていた。この首脳会談はアメリカに何かを与えることなくプーチン大統領に全てを与えるものだとすら考えられている」

「だが、これがトランプ流の交渉術なのだろう」カウラリック氏は言う。「我々はアメリカ大使館をエルサレムに移したが、その代わりに得たものなどない。北朝鮮に首脳会談の機会を与えたが、何も得ていない。イラン核合意からも離脱したが、何も得ていない。今回もいつもの通りだ」

[原文:The US is planning for a Trump-Putin summit, and experts say that means 'Putin already won']

(翻訳、編集:山口佳美)

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