カリフォルニア州メンドシーノ郡で多肉植物「ダドレア」を植え戻す当局の職員。
Travis VanZant/California Department of Fish and Wildlife via AP
- アメリカのカリフォルニア州北部の海岸地域で、多肉植物の"密猟"が問題になっている。
- 泥棒たちは「ダドレア・ファリノサ」という野生の多肉植物を掘り出し、高級品として人気のある海外へ大量に輸出する。
- 韓国や中国のブラックマーケットでは、最高で1つ50ドル(約5500円)の値が付く。
- 密猟者は捕まれば1000ドル(約11万円)以上の罰金および6カ月以下の懲役が科される可能性がある。
インスタ世代に人気の鉢植え植物が、アジアで拡大する中流層向けのブラックマーケットをにぎわせている。
「ダドレア・ファリノサ」と呼ばれる野生の多肉植物は、温暖で日当たりの良いアメリカのカリフォルニア州とオレゴン州の海岸にのみ自生する。
このような多肉植物は中国や日本、韓国といった湿度の高い地域ではうまく育たず、植物の"密猟者"たちはここに目を付けた。
ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)によると、カリフォルニア州のモントレー郡やメンドシーノ郡、ハンボルト郡ではここ数カ月、ひと気のない断崖で多肉植物を掘り出す人の姿が多数目撃されている。これらの植物はアジアへ輸出され、ブラックマーケットでは最高で1つ50ドルの値が付くという。
報道によると、「(こうした多肉植物は)アメリカでヒットしたものを欲しがる韓国の主婦の間で人気を集めている。コレクションとしても価値があり、放っておいても育ち、インスタ映えする」のだという。
実際、ダドレア・ファリノサは「非常に少量」から「極めて少量」の水で育つ。つまり、枯れにくい植物だ。
「多肉植物はデザイナーたちのお気に入りで、インテリアや庭作りの定番になった。希少種を手に入れたいという欲求が高まり、盗まれた多肉植物の違法取引が飛躍的に増加している」と、地元メディア「 Voices of Monterey Bay」は報じている。
カリフォルニア州沿岸ではこれまでも小規模な植物の"密猟"が問題になっていたと、ダドレアの専門家でサンタクルーズにあるカリフォルニア大学植物園の名誉研究部長スティーブン・マケイブ(Stephen McCabe)氏はVoices of Monterey Bayに語った。
「(今や)非常に大規模になっている」マケイブ氏は言う。「ここ数年で本当に急激に増えている」
カリフォルニア州ハンボルト郡で、植え戻すためのダドレアを持つ当局の職員。
Travis Van Zant/California Department of Fish and Wildlife via AP
カリフォルニア州北部では住民による"密猟"の目撃情報が増えていて、カリフォルニア州の魚類野生生物局は取り締まりを強化している。自生する植物を許可なく掘り出すことは軽犯罪にあたり、1件につき1000ドル(約11万円)の罰金および6カ月以下の懲役が科される。同局の監視員がNPRに語ったところによると、2017年12月以降、彼らは数千もの植物を押収し、その価値は70万ドル以上だという。
ある男は、植物を中国へ送ろうとしているところを郵便局の監視カメラに捉えられ、罰金5000ドルおよび執行猶予3年、社会奉仕活動240時間が科された。
地元紙マーキュリー・ニュース(Mercury News)は、最近起きた多肉植物泥棒の犯人を「国際植物強盗」と呼んだ。
「野生のダドレアはひと気のない地域に自生しているため、侵入しても気付かれにくい。泥棒たちにとっては、特に都合が良いのだろう」Voices of Monterey Bayは書いている。ここ数カ月の間に数千の植物が再び植え戻されているが、当局は引き続き警戒を続けている。
(翻訳:R. Yamaguchi、編集:山口佳美)