DMMが中古車「ノールック買取り」参入、「DMM AUTO」スマホ3分査定の全貌

DMM Autoのアプリ画面

DMM.comは6月5日、スマホだけで完結するクルマ買取りサービスに参入、「DMM AUTO」のアプリを提供開始した。当初の対応OSはiOSで、2018年内にAndroid版の提供も予定する。

DMM AUTOは、スマホで写真を撮るだけでクルマを現金化できる、いわゆる“ノールック買取り”系のサービス。日用品を現金化する「CASH」や「メルカリNOW」のクルマ版とも言える。

査定に必要なのは、アプリ、車検証、車両のみ。査定手順は極めて簡単で、アプリの指示に従って

  1. 車両を“斜め前方”など全体が映るアングルから1カット撮影
  2. 車検証を撮影し、車検証のQRコードを読み込む
  3. 状態の入力

といった、一般的な中古車査定からすると相当簡単な手順で済むようになっている。デモアプリを体験した限りでは「およそ3分程度の査定」をうたうスピードも実際にその通りだった。

DMMAUTO

DMM AUTOアプリの査定手順。撮影する写真は1枚のみ、そのほか本体色の入力や、車検証の撮影などがあるが、手順は極めて簡単だ。

企画から約1年で事業化、中古車買取店とは提携なし

DMM Auto担当者の2人

左から、DMM AUTO事業責任者の西小倉 里香氏、DMM AUTO事業部 マーケティング部長の出村光世氏。

DMM AUTO事業部の出村光世マーケティング部長によると、DMM AUTOの企画を始めたのは約1年ほど前。既存の中古車買取りが「1円でも高く買い取る」を競うのに対して、DMM AUTOでは「最適価格で、すばやく、簡単に売れる」をウリにした新規事業として、企画された。

従来の中古車の買取りには、特有のストレスが要素ある。たとえば申し込み後に見積もり業者から再三電話がかかってきたり、マイナス査定で当初の見積もりと実際に手放す際の金額が変わる、といったものだ。

DMM AUTOでは、こうした要素を極力排除する設計を意識した。たとえば、買取り査定はアプリ単体で完結査定金額は当初提示の金額を1週間保証、といった具合だ。

DMMAUTO

DMM.comは、中古車市場には新規参入になる。中古車買取りには独特の査定ノウハウがいりそうだが、事業化にあたっては既存の中古車買取店との提携はせず、サービス構築をしたという。

中古車市場の知見のある人材を登用して価格算定のアルゴリズムを構築したほか、買い取ったクルマを引き取るロジスティクスまわりの業者との連携でサービスを構築している。

「価格算定のアルゴリズムについては、中古車査定協会の情報を軸に、リアルタイムに変動する市場データも加味して、買取価格を算出するようにしている」(事業責任者 西小倉里香氏)

と語る。将来的には、シーズンごとの需要変化も取り込んでいきたい意向だ。

「ノールックでも相場並みで買い取る」ためのビジネスモデル

DMM AUTO

DMM AUTOの売却完了までの流れ。

クルマのノールック買取り、というだけでも相当挑戦的だが、ユニークなのは、そのビジネスモデルだ。

出村氏によると、既存のノールック系の買取りサービスが、市場相場より比較的安めの価格で査定するのに対し、「DMM AUTOでは買い取り店が提示する金額に遜色ないものを出すことを意識している」という。

出村氏は、これを実現できるのは、大手中古車買取りネットワークと全く違うビジネス構造のためだ、と説明する。

DMM AUTOは無店舗型サービスのため、ランニングコストになる実店舗、査定士や接客する人員コストがほとんどかからず、また日本全国をカバーできる。

当然、ノールック査定なので事業者側としては「思ったより車両の程度が悪かった」「思ったより程度が良かった」の両方があり得る。

しかし、低コストの事業構造をつくったことで、そういった査定ロスも織り込んだ上で、利益を生みやすい構造をつくったという。

驚いたのは、既存の日用品系のノールック買取りとは違い、少なくとも当初は「買い取れるだけ、買取りたい」(西小倉氏)方針で、1日あたりの買取り上限金額は設けないことだ。自動車という高価な商材で、しかも1日あたりの買取り上限金額を設ける事が多いノールック系のサービスとしては、異例にも思える。

これを可能にする背景には、「市場規模3兆円」(西小倉氏)ともいわれる中古車市場の特性が関係している。売買には必ず走行距離などを示す公的書類(車検証)が伴い、そこから算定できる相場が洋服などに比べてある程度厳密なこと、さらに不動産並みに安定した相場と、流通量が豊富(流動性が高い)、という業界だからだ。

ちなみに、買い取りを手がけるなら、商品の出口となる「中古車販売」の可能性も気になるが、まずは買取りの事業に専念し、ユーザーに現金化の選択肢を提供したい、とした。

対象は「軽トラ」から「フェラーリ」まで、流通する大半

DMM AUTOでは、基本的に中古車買取り店に持っていくような車両なら、国産車・外国車を問わず、それこそ軽トラックからフェラーリまで、買取りが可能になっている。

一方、買い取れない可能性があるのは、

  • クラシックカーなど、一般的な査定ができない車両
  • 状態が極めて悪い車両
  • 並行輸入車

といったもの(FAQで明示された条件詳細は下記のとおり)。つまり、一般的な中古車買取店で取り扱えない車両、ということだろう。

FAQ

DMM AUTOの買取りに関するFAQの内容。

「スマホで買取り」は中古車業界としてもユニークな取り組みだ。これまでの店舗型主体の買取り業者にとっては、参入するとなれば、業態変革や自社内の相反が起こり得るため触りづらい領域とも言える。

サービスインを目前に、出村氏は、

「自動車は多くの人にとって不動産の購入の次に大きな買い物。そのため、(最大公約数をとって)無難になりがちです。DMM AUTOで、ライフステージに左右されないカーライフという形でイノベーションを起こしていきたい」

と、サービスインへの期待を語った。

(文、写真・伊藤有)

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