マイクロソフトのGitHub買収、なぜアマゾンへの強力な対抗策になるのか

マイクロソフトCEOサティア・ナデラ氏。

マイクロソフトCEOサティア・ナデラ氏。

REUTERS/Baz Ratner

  • マイクロソフトはGitHubを75億ドル(約8200億円)で買収する。
  • 買収完了は2018年後半の予定。今回の買収はマイクロソフトにとって、AWS(アマゾンウェブサービス)に対抗する強力な武器となる。GitHubは、2400万ユーザーを抱える。開発者の支持を欲していたマイクロソフトは、それを手に入れることができる。
  • それ以上に、もしマイクロソフトがGitHubを自社のクラウドサービス、Microsoft Azureに統合できれば、クラウドサービスを真に差別化できる。

6月4日(現地時間)、マイクロソフトはGitHubの買収を発表した。買収額は75億ドル(約8200億円)、GitHubはオープンソースソフトウエア開発の中核的存在となっているスタートアップ。

今回の買収は、マイクロソフトにとっては完璧と言えるほど理にかなっている。つまり、優秀な人材が加わり、GitHubがマイクロソフトの製品に統合されれば、同社は急成長を続けるクラウドマーケットにおいてリーダー的存在となっているAWS(アマゾンウェブサービス)に対抗する大きな武器を手にすることになる

GitHubは開発者が自らが手がけるソフトウエアプロジェクトを公開できるオンラインサービス。公開されたプロジェクト、具体的にはプログラムコードやデザインデータなどは、世界中の誰もがダウンロードでき、使用することができる。

こうした機能により、GitHubはオープンソースソフトウエア開発において欠かせないものとなっている。

表面的なレベルでは、マイクロソフトのGitHub買収のロジックは極めて明確。開発者はGitHubを支持しており、マイクロソフトは開発者の支持を欲していた。

マイクロソフトは、人気の高いVisual Studio Codeから、オープンソースのフレームワーク.NET Coreまで、開発者に様々なツールを提供している。こうしたツールの人気が高くなれば、徐々に、だが明らかに、同社のクラウドサービスMicrosoft Azureや他の製品、サービスの人気につながる。

つまり、もしあなたが、あるマイクロソフト製品のファンになれば、同社の他の製品を選ぶ確率は高くなる。特に、それらが明確に統合されていれば、なおさらのことだ。

GitHubはこの戦略を強化する。開発者はGitHubを支持している。事実、2017年、マイクロソフトはGitHubの競合だったCodeplexを閉鎖した。その際、同社はGitHubの人気により、Codeplexへの取り組みは冗長かつ不要なものになったと語った。

買収によって、マイクロソフトはGitHubを熱烈に支持する数百万の開発者とのダイレクトなつながりを手にすることになる。ちょうどこの戦略の実現に向け、小さな取り組みを始めたところで、GitHubとマイクロソフトは両社のサービスの統合を発表していた。

クラウドでの大きなチャンス

だが、マイクロソフトは、より深い目論見を描いている。

GitHubの共同創業者兼CEOクリス・ワンストラス氏。

GitHubの共同創業者兼CEOクリス・ワンストラス氏。

Flickr/by DaveFayram

1つは、ソフトウエアプロジェクトの“公開”について。GitHubは、ソーシャルネットワーク的な側面にかなりのリソースを投入し、チームやコミュニティがGitHubを使ってより簡単に共同作業が行えるようにしている。

もう1つは、ソフトウエアプロジェクトの“実行”について。GitHubに公開したソフトウエアが完成し、リリースする段階になっても、開発者にはソフトウエアを全てダウンロードし、リリースするという大きな仕事がまだ残っている。単独のPCで動くソフトウエアなら、まだ比較的簡単だが、アマゾン、マイクロソフト、グーグルなどのクラウド上で動く、大規模で複雑なオープンソースシステムの場合、開発者にはまだ多くの仕事が残されている。

つまり、マイクロソフトにとってチャンスは、極めて明確。Microsoft AzureとGitHubが深いレベルで統合されれば、基本的に開発者は簡単にGitHubのプロジェクトをクラウドで稼働させることができるようになる。まさに一石二鳥。

開発者はGitHubをさらに支持するようになり、Microsoft Azureの利用を促進することにつながるだろう。

マイクロソフトが今、爆発的な成長を続けるクラウドコンピューティングに注力していることを考えると、GitHubはまさに最適。AzureとAWSの差を埋めるための武器となる。

確かに4日朝、買収についての取材陣とのやり取りの中でマイクロソフトは、統合に向けて一部の作業にはすでに着手済みと語った。だが、GitHubは依然としてオープンプラットフォームであり、同社のテクノロジーに特化したものではないことも明確にした。

この買収がマイクロソフトにとってプラスに働くことについては、また別の、やや分かりにくい理由もある。

マイクロソフトがリンクトインを260億ドルで買収した際、CEOのサティア・ナデラ氏は、マイクロソフトはAIの躍進が叫ばれるなか、人間が現代社会で成功するために必要なスキルを持っていることを明確にするために大きな投資を行ったと語った。

少なくともシリコンバレーでは、従来の履歴書と一緒に、あるいはその代わりに、GitHubのプロフィールページが求められることは珍しくない。もしマイクロソフトがこうした状況を理解しようとしているなら、GitHubは魅力的な存在。

実際、4日の取材でサティア・ナデラ氏は、GitHubに力を入れることは、開発者の共同作業をサポートすることと語った。今やソフトウエアはほぼ全ての企業にとって、ビジネスを推進するキーとなっている。

[原文:Microsoft is buying GitHub for $7.5 billion — here's why it's a smart move for Microsoft in the cloud wars with Amazon (MSFT)

(翻訳、編集:増田隆幸)

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