東芝、損失5325億円 —— 揺らぐ巨大帝国、再生の条件

東芝が2度にわたって延期していた決算を発表した。再生のロードマップを進める東芝帝国が「新生東芝」をつくるには条件がありそうだ。

11日に公表された決算によると、東芝の2016年4月~12月期の純損失は5325億円で、前年同期の4794億円から膨らんだ。原子力発電を含むエネルギーシステムソリューション部門の営業損失が7598億円と大幅に悪化した。

昨年のメディカル機器と白物家電事業の売却に続き、海外原子力事業から撤退して主軸の半導体メモリー事業を売却する東芝。それでも4兆円の売り上げを確保できる企業に対する投資家の期待がある。東芝が再生を進める上で、内部統制や企業統治(コーポレート・ガバナンス)の徹底を図りながら、社会インフラ事業とエネルギー事業という新生東芝の2つの柱を伸ばしていくため、経営陣の巧みな舵取りは不可欠だ。

東芝の看板

Reuters

「米原子力子会社のウェスチングハウス(WH)を連結から外した今、半導体事業の売却も片がつけば、着地のさせ方によっては期待以上の回復もありうる」との見方を示すのは、東海東京調査センターの石野雅彦シニア・アナリストだ。「家電など不安要素の売却は済んでおり、残るインフラ事業は手堅い。技術力もある。一連の問題の片がつけば、経営陣の刷新も行われるだろうから、企業価値論でいくとポジティブな見方はできる」と続けた。

先月14日の発表資料によると、WHとメモリー事業を除外した東芝の売上高は、2017年度で約3兆9000億円が見込まれる。4兆2000億円の連結売り上げを予想(16年度)する三菱電機と比べても、東芝の企業規模は依然として大きい。

「非常に大きな会社で、ポテンシャルはある。その資産を活用して、新たなイノベーションを創出できる企業をつくることは、経営陣の腕次第」と、ニッセイ基礎研究所・専務理事の櫨(はじ) 浩一氏は話す。「不正会計、投資の意思決定、問題の肥大化を防ぐマネジメント能力と体制と、課題は山積している」とした上で、「このいくつかの課題は、他の日本企業が直面している共通のものであろう」と加えた。

東芝は当初2月14日に、第3四半期決算の発表を予定していたが、1カ月後の3月14日に発表日を延期した。WHの内部管理に不正の疑いが生じ、監査法人による調査が必要と判断した。しかし、追加調査が必要となり、発表を再度延期した。WHは29日(現地時間)、連邦倒産法(Chapter 11)に基づく再生手続きをニューヨーク州連邦破産裁判所に申し立てた。東芝は同日、WHと英・東芝原子力エナジーホールディングスが抱える負債総額は、2016年末時点で98億1100万ドル(約1兆900億円)だと発表。

一方、四半期決算をめぐっては、監査法人のPwCあらた監査法人と東芝の監査委員会とで意見が割れた。今回の四半期連結財務諸表について、PwCあらたは、「結論の表明の基礎となる証拠を入手することができなかった」と、「結論不表明」を東芝に報告した。これに対し、東芝の監査委員会は「2016年度第3四半期以外の期で本件損失を認識すべき具体的な証拠は発見できなかったと判断、一連の調査は完了した」と結論づけた。

綱川智・東芝社長は記者会見で、「独立監査人からは結論を不表明すると四半期レビューをいただいた。異例ではあるが、独立監査人の結論の不表明という形で公表させていただくことになった」と述べた。

会見場に入る綱川・東芝社長

会見場に入る綱川・東芝社長

中西亮介

監査法人による監査証明(四半期レビュー)は、金融商品取引法により、四半期報告書を提出する際に添付が義務付けられている。東京証券取引所は、四半期レビュー報告書に結論不表明などの記載がされた場合、市場の秩序を維持するために当該企業の上場を廃止することができる。東芝は、上場廃止のリスクに直面する。

上場廃止という痛みを伴う決着も含め、 石野シニア・アナリストは「ぎりぎりセーフかアウトになるか、覚悟して見届けるしかない」と、厳しい局面が続くとの見方を示した。

(取材協力:滝川麻衣子)

(編集:佐藤茂、浦上早苗)

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