51歳のスイマー、なぜ太平洋横断に挑戦するのか?

ベン・ルコント氏

全てが計画通りなら、ベン・ルコント氏は6カ月後にはサンフランシスコに到着する。

Courtesy The Swim

  • フランス人スイマーのベン・ルコント氏は、日本からサンフランシスコまで太平洋を5500マイル(約9000キロ)泳いで横断する。
  • 6月5日に日本を出発、1日8時間泳ぐ。
  • 眠るときは、支援船を使う。GPSで位置を確認し、翌日は同じ場所から泳ぎ始める。
  • 同氏が太平洋横断に挑むのは、海洋のプラスチック汚染への関心を高めるため。27の科学団体と連携し、太平洋を横断しながらデータを収集する。

全てが計画通りなら、ベン・ルコント氏は6カ月後にはサンフランシスコに到着する。ルコント氏は、泳いでサンフランシスコを目指す。

6月5日、千葉県銚子市の海岸からルコント氏の冒険はスタートした。アメリカ西海岸を目指す5500マイル(約8900キロ)以上の旅は、サメやクラゲなどに遭遇したり、低い海水温に立ち向かったり、膨大な量のプラスチックの中を泳いだりする。

多くの人の頭に最初に浮かぶのは「なぜ?」という言葉だろう。

「当然の質問だ。私も時々、自分自身にその質問をしている」とルコント氏はBusiness Insiderに語った。

「海と海の水に対する情熱から始まった」

ルコント氏は1998年に大西洋横断を73日で達成したあと、次は太平洋だろうと語っていた。だが、タイミング、結婚、子どもなど、さまざまなことで計画は10年以上も遅れた。そして約7年前から、太平洋横断の実現に注力した。

今回の挑戦は、DiscoveryとSeekerがスポンサーになっており、「The Swim」と名付けられた。51歳のルコント氏はフランス人、海に入っていないときは家族とテキサスに住んでいる。今回の挑戦によって海洋汚染、特にプラスチック汚染についての関心を高めたいと考えている。

全行程を通じて、ルコント氏と同行する支援船は海水のサンプルを採取し、福島原発事故による影響、太平洋ごみベルトでのマイクロプラスチックの状況などを調査する。

「このようなクレイジーなことを行って、海と海の状況に対する注目を集めることは、私にとって、これ以上ない大きなチャンス」

大西洋横断の終盤、フランス沖を泳ぐルコント氏。

大西洋横断の終盤、フランス沖を泳ぐルコント氏。

Reuters

1日8000キロカロリー

1日8時間、約30マイル(約48キロ)泳ぐ計画。その他の時間は支援船での休憩、睡眠、食事にあてる。支援船にはGPSトラッカーが搭載され、クルーは毎日、ルコント氏が泳ぎ終えた場所をチェック、翌日、同じ場所からスタートできるようにする。

横断中、体力を維持するためにルコント氏は1日8000キロカロリーを摂取する。食事の大部分はフリーズドライ食品で、ボートにいる間に何度かに分けて食べる。水中でも概ね30分ごとに、スープや他の液体を摂取する。甘いものは食べないが、脂肪はたくさん食べるとルコント氏は語った。

泳ぐ時は、フィン、シュノーケル、ウェットスーツを使う。特にアメリカに近づくにつれ海水温が下がり、体温を危険なレベルまで下げてしまう可能性があるためウエットスーツは欠かせない。

ベン・ルコントさんの装備

The Longest Swim

「最も難しいのは水温だろう」とルコント氏。

だが、ときには50フィート(約15メートル)の高さになる波にも対峙しなければならない。特に大きな波が押し寄せてきたときには、ボートから離されてしまう危険性がある。

サメの注意を引いてしまうリスクもある。支援船はサメを近づけないようにするために電磁波を放つ装置を搭載している。ルコント氏も電磁波ブレスレットを着用する。

「サメはいるだろう」とルコント氏。ルートは、ホオジロザメが回遊することで知られる海域を通過する。ルコント氏が痛いと表現するクラゲもいる。イルカのことは「一緒に泳ぐことは素晴らしい」と語った。

バラバラになったプラスチックが浮かび、マイクロプラスチックが含まれる太平洋ごみベルトを泳ぐ。

バラバラになったプラスチックが浮かび、マイクロプラスチックが含まれる太平洋ごみベルトを泳ぐ。

The Ocean Cleanup

9000キロを泳ぐために

太平洋横断に向けたルコント氏のトレーニングは、8時間泳いだあとも心拍数が最大心拍数の約60%になることに焦点を置いた。水泳、自転車、ランニングを1日3〜5時間、週5〜6日行い、これらのトレーニング中でも心拍数が120をキープできるようにした。直近には、自然の水の中で6時間泳いだ。

精神面では「心と体を切り離すように心がけている」とルコント氏。毎日、考え、集中できる何かを持つことが、1日8時間の水泳にチャレンジできる精神力につながることを期待している。

今回の挑戦は、NASAやウッズホール海洋研究所など27の科学団体を含め、様々なパートナーと連携して計画された。ルコント氏と支援船のクルーは、太平洋横断中に1000以上のサンプルを採取、科学者たちは、プラスチック汚染、哺乳類の回遊、プランクトンなどについて、より多くの調査を行う。

ルコント氏が太平洋横断に挑戦するのは今回が初めてではない。前回は支援船やクルーの問題などから断念した。だがついに、チャレンジすることができた。

ルコント氏の挑戦はSeekerで見ることができる。Seekerはライブ中継のほか、2週間ごとに短いドキュメンタリーを作り、プロジェクト終了後には長編ドキュメンタリーの制作を計画している。

「最も予測できないことは、ベンがどうなるか、そして我々の思いもつかないことが彼に起こること。天候からスタミナの問題まで、あらゆることが起こり得る」とSeekerのキャロライン・スミス(Caroline Smith)氏は語った。

「全員、彼のためにベストを尽くす」

一方、ルコント氏は、この挑戦によってプラスチック汚染の問題に人々の関心が集まることを期待している。

「我々は皆、この問題を軽減するために行動しなければならない」とルコント氏。

「使い捨てのプラスチックは、もう使わないようにしよう」

[原文:A 51-year-old just began a 5,500-mile swim across the Pacific Ocean from Japan to San Francisco

(翻訳:R. Yamaguchi、編集:増田隆幸)

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