「名探偵コナン ゼロの執行人」興行収入78億円突破 —— 平成最後の夏、コナンが歴史を超えたということ。

「名探偵コナン」が、歴史をぬり替えた。

4月13日に公開された劇場版最新作「ゼロの執行人」の興行収入は、2018年6月3日までで78億6000万円を突破。2017年の邦画興行収入ランキング1位に輝いた前作「から紅の恋歌(ラブレター)」を超え、6年連続で歴代の興行収入ランキングを更新した。

ゼロの執行人・安室

「名探偵コナン ゼロの執行人」が、興行収入78億円超という記録を打ち立てた。

平成を象徴するアニメ「コナン」

5月末日に、日本橋のTOHOシネマズに「ゼロの執行人」を見に行ってみた。すでに公開から1カ月半が経過しており、しかも平日の夜にもかかわらず、7割ほど席は埋まっていた。その多くが20代らしき人たち、そして女性が8割ほどだった。

年代別コナン視聴者

「ゼロの執行人」の年代別視聴者データ。20代が4割超を占める。

グラフ:Business Insider Japan

サザエさんやドラえもんが“昭和”のなつかしさを思い起こすアニメなら、1994年(平成6年)に連載が始まったコナンは、まぎれもなく“平成世代のためのアニメ”だ。

ひとりっ子同士の主人公カップル、別居している両親、そしてトンデモ感のあるテックアイテム。コナンには、“平成”に当たり前になったカルチャーがつまっている。

「ゼロの執行人」の視聴者データを見ると、20代が4割超。次いで10代(13〜19歳)が約3割、30代が1割と続く(興行スタート2日間の劇場来場者へのアンケート結果より)。データを見ると、コナンで育った平成世代は、コナンを卒業していないこともわかる。

コナンは、更新し続ける

「ゼロの執行人」の大ヒットに、読売テレビの米倉功人プロデューサーは「驚きというほかない」と衝撃を隠さない。

今年のコナンは今までになく社会派で、完全にオトナ向けだった。

劇場版『名探偵コナン ゼロの執行人』TVCM。『君の名は。』を思わせる美しい風景描写も特徴的だ。

動画:東宝MOVIEチャンネル

物語の主軸は、公安警察(国家体制を脅かす犯罪を取り締まることに特化した警察組織)が、IoTテロを企てる犯人を追い詰める、というストーリー。さらに警察内部の組織対立の問題もからみ合い、複雑で重厚な人間関係が描き出される。

脚本を担当したのは、ドラマ『相棒』シリーズでも知られる櫻井武晴さん。コナンの映画を担当するのは今作が4作目で、過去作品はすべて歴代の興行収入記録を更新している。

今回も「櫻井さんにお願いすることは(はじめから)ほぼほぼ決まっていた」(米倉さん)という一方で、コナンは毎回テーマもメインキャラクターも全く違うため、作品が当たるかどうかは毎年予測できない、ともいう。

コナンは子ども向けに作っているわけではない」と、米倉さんは言い切る。

「(子どもの時はストーリーが)わからないんだけど、全体を通して観て、すごく楽しいと。何年後かにもう一回観て、やっぱり楽しいよね、と。いろいろな人が観て、いろいろな段階で楽しめるものをつくりたい」

安室フロート

有楽町にある「名探偵コナンカフェ2018」の人気メニュー、「安室透の買い出しクリームソーダ」。

さらにヒットを後押ししたのが、公安警察に所属するキーキャラクター「安室透(あむろ・とおる)」だ。アニメでは2012年に初登場した、コナンでは“新株”のキャラクターだ。

「4回観ました、5回観ました、というのがスタンダードになっている。(キャラ人気のおかげで)イベントやカフェなど、立体的な展開もできて、色々なところでコナンに触れ合えるきっかけができていますね」

コナンは同窓会の口実だ

有楽町にある「名探偵コナンカフェ2018」

有楽町にある「名探偵コナンカフェ2018」。予想以上の人気のため、開催期間が6月20日まで延長している。

ここ数年のコナンの快進撃には、視聴者の裾野の拡大もある。

「ゼロの執行人」で実施された企業とのコラボプロモーションプロジェクトには、SONYやくら寿司のほか、ZOZOTOWNやZoff、CanCamなども名を連ねる。コラボは「2016年の『純黒の悪夢(ナイトメア)』くらいから軒並み、増えている」(米倉さん)。

コナンに幼い頃から親しんできた平成世代が社会人になり、消費者としてコナンに還元するサイクルができているのだ。

平成生まれの私も、幼い頃からほぼ毎年、劇場に足を運んできた。小学生のときは親同伴で、中学に入ってからは同級生と。

コナンは途切れることのない話のネタで、友達同士でコナン映画タイトル風のニックネームをつけあったこともある(私はよく遅刻をしていたので、「時の破壊者(デストロイヤー)」という名前だった)。

そして大学に入ってから、コナンは同窓会の口実になった。もうほとんど連絡もとっていない中学の同級生に「飲みに行こうよ」は誘いづらいけれど、「今年のコナンどうする?」なら言える。仕事も趣味もまったく違う私たちは、今でもコナンでつながっている。

コナンと一緒に大人になれなかった私たちへ

米倉さん

「気持ちは引き締まっている」と読売テレビプロデューサーの米倉功人さん。

「コナンは毎年続くシリーズ。(作品がヒットして)嬉しいは嬉しいけれど、その一方で身も心も引き締まっていく気持ちが強い。次、どうやって裏切っていくかを毎回、模索しています」

すでに次の映画の製作に取り掛かっているという米倉さんは、笑顔でそう語る。

次の映画はゴールデンウィークに公開されることが決まっているが、もし4月中に公開されるとしたら次が「平成最後」の劇場版コナンだ。

実は今回の映画で、オープニングに入る直前に出てくるアバンタイトルが始まった時(今年のアバンタイトルは歴代最高レベルに格好よかった)、私は泣き出したい気持ちにとらわれていた。

オレは高校生探偵、工藤新一……」から始まる、お決まりのセリフ。コナンは、第1話で6歳の姿になって以来、ずっと17歳の工藤新一の身体に戻ろうと画策している。

それを見ている私たちは、もうコナンの年齢も、新一の年齢も超えてしまった。あの時、「オトナ」の象徴だった新一は、もう10歳も年下になってしまった。

コナンが大人になれないまま、平成が終わり、次の時代が始まろうとしている。

身体はもうオトナになってしまった私たちは、劇場版コナンを見るたび、あの頃のワクワクを思い出す。そして、変わらぬ姿のまま歴史を更新し続けるコナンを、これからも追い続けるのだ。

(文・写真、西山里緒)

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