中国市場でリベンジするC CHANNEL —— 今度は「日本押し」で攻める

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微博(Weibo)のC CHANNELページ。

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元LINEの森川亮が、再び中国に船出する。

2018年5月11日、森川率いる C CHANNELが、中国最大手の投資ファンド、レジェンドキャピタルから日本企業として初めて資金調達を実施したことを発表した。調達額は非公表。

C CHANNNELは北京に支社を立ち上げているが、苦戦を強いられ、2017年夏の時点でいったん市場は厳しいと判断した。

中国ビジネスの手痛い洗礼を受けた森川が、もう一度大陸に挑むという。しかも「楽しみでしょうがない」と強気である。

14億人が暮らす巨大市場・中国。 社会の急速な近代化と消費力、世界の先端を行くフィンテック環境などを評して「宝の山」と呼ぶ経営者もいる。半面、中国共産党一党政治のもと、共産主義と自由経済が複雑に絡み合った国のビジネスルールは一種独特であり、「だまされる」「考え方が違いすぎる」といったアンチ中国の声は絶えない。

しかし、日本国内の人口減少が進むなか、隣国の巨大市場が魅力であるのも確かだ。

「アジアが世界経済の中心である以上、中国をとれないと世界で勝ったことにならない。ベンチャーの僕らが挑戦しないというのは、成長をあきらめること」

と言う森川は、いったい今度はどのような戦略と布陣で挑もうというのか。

中国資本を受け入れ、NO.5 を目指す

森川亮

2017年には新オフィスに移転。オフィスお披露目にパーティーで、森川は「メディアコングロマリットを目指す」という目標を改めて宣言した。

撮影:今村拓馬

資金調達のリリースの発表前夜、森川が主催する若手起業家の勉強会の席上、海外ビジネスを展開するゲーム会社社長や人材派遣会社社長らは「中国は難しい」と口を揃えた。商習慣の違い、マーケットの読みづらさなど理由はさまざまだが、中にはすでに中国から撤退している企業もあった。北京を拠点に建築事務所を経営して14年になるという建築家は、「日本人の8割は中国進出を敬遠しているはず」と、「今こそ中国」と言う森川の強気に驚いた。

森川は、2017年までの中国展開の敗因を次のように分析した。

「女性向け動画メディアとしてナンバー1を狙ったのが間違いでした。プラットフォームをつくろうとしましたが、それは無理でした。それと残念ながら、現地で組んだパートナー企業に、KOL(Key Opinion Leader)オーディションの運営や契約条件などでだまされました」

中国ビジネスでだまされたというと、「だから中国には出て行かない方がいいんだよ」という反応がおおかたである。しかし森川は、戦い方をガラリと変えてもう一度出て行く。第2ラウンドではナンバー1は狙わず、ナンバー5ぐらいを目指す。そして、中国資本を受け入れたのは、中国の「内側」に入るためだと森川は言う。

それが今回のレジェンドキャピタルからの資金調達だ。だが、北京の同社本社に出向いてのプレゼンでは、キャピタリストたちからの厳しいコメントを浴び続けた。

「彼らは日本なんてもう終わったぐらいにしか思っていません。日本人がつくるメディアに投資をする意味がわからない、と辛辣でした」

何度も繰り返したプレゼンで森川が彼らに対して強く訴えかけたのは、ビジネスモデルの先行優位性だった。

米留学からの帰国組が交渉相手に

Super CCHANNEL

日本ではリアルイベントでも、多くの女子たちを集めている。

撮影:今村拓馬

「C CHANNELは若い女性に特化し、SNS分散型で、インフルエンサーを起用しています。さらにEC。この4つを組み合わせたハウツー動画メディアというビジネスモデルは実はまだ世界でもあまり例がありません。でも、動画が今後ますます伸びていくのは間違いないので、そこを強く訴えました」

レジェンドキャピタルの社員でアメリカ育ちの韓国人が、C CHANNELの先進性を理解し、フォローに回ったことも力になったという。本件に限らず、中国企業との交渉で、森川はアメリカ留学から帰国した若い世代が交渉のトップに出てくるため共通認識を持って議論ができるケースが増えたこと、中国でも著作権など法整備が進み、ビジネス環境が改善されていることを、最近の中国の変化と感じているという。

レジェンドキャピタルが投資しているレストラン事業会社やタレント事務所などにとっても、メディアがグループに加わることでビジネスの相乗効果が期待できるとの評価が得られたことが、投資の決定を導いた。

「我々のビジネスモデルは間違いなくトップモデル。いけます」(森川)

「日本好き」な4000万人がターゲット

森川亮氏

2018年度の中国での目標売り上げは「日本国内売上の半分」だという。

撮影:門間新弥

1回目のチャレンジでは、中国の若い女性の中でもボリュームゾーンをターゲットに、中国人にウケる中国的なコンテンツを配信する方針だったが、今回は、若い女性の中の「日本ファン」にターゲットを絞る。 日本的なファッションやコスメが好きなグループは、森川の感覚値によると、中国F1層(20〜34歳の女性)の2割程度。数字でざっと4000万人。日本のF1層1000万人と比べても、市場可能性は大きい。

「もちろん、中国にも料理やコスメの動画はたくさんありますが、日本独特の繊細さやオシャレさは洗練のありようが違う。雑誌に例えていうならば、僕らはヴォーグやエルみたいな位置づけで打ち出せます」

中国4000万人F1市場に向けて、C CHANNEL独自に日本人や韓国人のクリッパー(CC専属のインフルエンサー)を育成し、インフルエンサー1人につき10万人程度のファンが定着することを見込む。それらの中国向けオリジナルの動画に加え、日本国内で配信しているコンテンツのうち、ファッション、メイク、料理のジャンルの中でも中国人にウケるものを選んで、中国語の字幕をつけて配信する。中国ではアプリはつくらず、ウェイボーをはじめとするSNSで流通させる。今後は、中国で売りたい日本のコスメやファッションの企業と組んで、越境ECを伸ばしていく。

中国事業の運営のために、上海で美容EC、美容メディア事業を展開する企業・LUCEをグループ化した。今後はLUCEが中国展開の現場を受け持つ。

2018年度の目標売り上げは「日本国内売り上げの半分」(森川)。

C CHANNELは大小さまざまな投資家から資金を調達しているが、レジェンドキャピタルの投資額は大きい方と推察される。日本のVCに比べ、中国やアメリカのVCは数字の見方がシビアだとも聞く。レジェンドキャピタルに応えるためにも結果は急がれる。

「遅くとも5年内には日本の売り上げを超えて、C CHANNELの中でもっとも大きな市場となっているでしょう」

淡々とした語り口の森川が口元を引き締めた。(敬称略)

(文・三宅玲子)

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