ケイト・スペードさんだけではない…… アメリカで急増する「うつ」と「自殺」

ケイト・スペードさん

ケイト・スペードさん。

Frances Valentine

ケイト・スペードさんの死は、ファッション界に衝撃を与えている。才能あふれるデザイナーがニューヨークの自宅マンションで亡くなり、13歳になる娘に遺書を残したのだ。

アメリカではここ数十年、年齢・性別に関係なく、自殺率が上昇し続けている。

アメリカ疾病予防管理センター(CDC)の2016年の報告によると、アメリカの自殺率は1999年以降大幅に上がっていて、2006年以降さらに急上昇している。2014年には、その自殺率は1999年より24%高かった。CDCによると、このうち45歳~64歳の男性の死亡率は、43%も上昇したという。自殺率がこれほど上昇した背景には、仕事やお金をめぐるストレスがあると、一部の専門家は指摘している。

しかし、CDCの分析によると、10歳~14歳の少女の自殺率はこの間に3倍に増えている。今では、10歳~35歳のアメリカの若者にとって、自殺は死因の第2位になっている。

2018年5月の学会誌『Pediatrics』に掲載されたある研究によると、アメリカ国内にある小児病院では、自殺願望もしくは自殺未遂による入院者数が2008年から2015年の間に2倍に増加している。中でも最も増加したのが、15歳~17歳のティーンエイジャーだった。

メンタル・ヘルスの危機

頭を抱える女性

Oleg Golovnev/Shutterstock

ケイト・スペードさんの夫、アンディー・スペードさんは6日、ニューヨーク・タイムズにコメントを寄せ、ケイトさんがここ5年ほど「積極的にうつと不安の治療に努めて」いて、定期的に医療機関を受診し、投薬治療を行っていたと語った。

「ケイトは長年にわたってうつと不安の症状に苦しんでいた。多くの人の命を奪っているこの病を乗り越えようと、彼女はかかりつけ医とともに積極的に治療に向き合っていた」アンディー・スペードさんは言う。

最近の調査によると、うつを感じるアメリカ人は全ての年代において増加している。コロンビア大学とニューヨーク市立大学公共衛生学大学院の研究者らは2015年、「薬物使用と健康に関する全米調査(National Survey on Drug Use and Health: NSDUH)」に回答した60万7000人以上を調べたところ、10年前に比べ、全ての年齢、性別、所得階層、教育レベルでより多くのアメリカ人がうつ症状に苦しんでいることが分かった。

10代の若者でうつ症状を自己申告した割合は、2005年の8.7%から2015年には12.7%に増加した。

ニューヨーク市では、自殺とうつの増加を受け、市民であれば誰でも受けられる無料のメンタル・ヘルスの応急処置に関するトレーニングを提供し始めた。5年以内に25万人のニューヨーカーにトレーニングを受けてもらい、メンタル・ヘルスについて話すことは恥ずかしいという根強い偏見をなくすことがその目標だ。

筆者もこのトレーニングを受けてきたのだが、ファシリテーターいわく、メンタル・ヘルスの改善のためにわたしたちにできる最も良いことはシンプルながらも、日頃から自分の気持ちをオープンに他人に話し、互いに批判的にではなく、思いやりをもってそれを受け止める余地を作ることだ。

「自殺予防についての理解がもっと深まれば、自殺率も低下し始めるだろう」自殺予防に取り組むNPO団体American Foundation for Suicide Preventionのチーフ・メディカル・オフィサー、クリスティーン・ムーティエ(Christine Moutier)氏は2018年1月に語った。「メンタル・ヘルスや自殺予防についてオープンに話せる文化を作ることが重要だ。誰もが必要な治療に確実にアクセスできるようにすることが最優先課題だ」

[原文:Kate Spade’s suicide is part of a disturbing trend in the US that's getting worse]

(翻訳、編集:山口佳美)

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