1月のデトロイトモーターショーで、アメリカでの主力車種となる新型「カムリ」を発表する豊田社長。
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トランプ大統領は、トヨタ自動車がケンタッキー工場に13億3000万ドル(約1500億円)の投資を行うと発表したことに対して、「自動車メーカーが私の政権下における経済環境の大幅な改善を確信したことを裏付ける何よりの証拠」と、同社のプレスリリースの中で述べた。
同社は、今後5年間で100億ドルをアメリカに投資する。
同社の取り組みは新聞の見出しを飾るだろうが、残念ながら2020年のトランプ大統領の再選に寄与することはないだろう。
アメリカ国内における日本の自動車メーカーの工場、そして従業員は、大多数が南部に集中している。トランプ氏が大統領選挙で圧倒的勝利を収めた地域だ。だがもともと南部は何十年間もの間、一貫して共和党が優位を保ってきた地域であり、なんら驚くべきことではない。大統領選挙でトランプ氏はケンタッキー州で63%の票を獲得した。同様にミット・ロムニー(Mitt Romney)氏も、2012年、同州でオバマ前大統領に大差をつけて勝利した。
トランプ大統領にとって、仕事や投資、そして票が必要なのはケンタッキー州ではない。ミシガンやオハイオなど、アメリカの自動車メーカーが存在し、大統領選挙で激戦区だった州、あるいは民主党が勝利した州でこそ必要なのだ。
トヨタ自動車としては、もちろんトランプ大統領の歓迎は喜ばしい限り。プレスリリースに大統領のコメントを載せる異例の措置をとった。
しかし、トランプ大統領にとって、トヨタの投資から得るものは少ない。ホンダ、日産、メルセデス・ベンツ、BMWなど、トヨタと同様に南部に集中するアメリカ国内の海外自動車メーカーにも同じことが言える。
自動車メーカー幹部との会談で、フォードのCEOマーク・フィールズ氏と握手を交わすトランプ大統領。
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実際のところ、トランプ大統領はフォード、ゼネラル・モーターズ(GM)、フィアット・クライスラー・オートモービルズなどの新しい投資からも、大きな成果を得ていない。各社の投資計画は、かなり以前に作られたものか、比較的小規模なもの。売り上げがピークに達しているアメリカで、雇用や生産の増強を計画するメーカーはない。
しかし、自動車メーカーはトランプ大統領の手法を理解している。ビジネスはこれまで通り展開し、一方でアメリカにおける雇用や投資は、トランプ大統領の関心を引くように進めていることは明らか。見返りとして、メーカーは規制や税金での優遇策を手に入れる。
トランプ大統領にとって問題なのは、自動車メーカーの動きはメディアの注目を集めるものの、現実的な経済への影響はその注目度よりもはるかに小さいことだ。アメリカの失業率は5%を下回り、自動車業界は今後12カ月から18カ月にかけてアメリカ国内での売り上げ減少を予測しているため、雇用が急増することはないだろう。
[原文:Toyota's $1.33-billion investment in Kentucky is useless to Trump]
(翻訳:Wizr)