DeNAでもっとも好調な事業は意外にもあれ!その勝ち方に学ぶこと

今日の記事では 、DeNAの決算を中心に、スポーツ事業のビジネスを見ていきたいと思います。

初めにDeNA全体の売り上げと営業利益を見てみましょう。

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売り上げは2017年度の1年間で1,396億円と、YoY-3%の減収になっています。

営業利益はYoY+19%の 275億円となっていますが、グラフのグレーの部分である「その他の収益費用及び調整額」の影響が大きいのが現状と言えるでしょう。

この中でも特に目立って伸びているのがスポーツ事業であり、今日はそのあたりを詳しく見てみたいと思います。

横浜DeNAベイスターズの売上・営業利益

DeNAのセグメント別の売上と、営業利益を見てみます。

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売り上げの方は、スポーツ事業以外は全てYoYでマイナスとなっていますが、スポーツ事業はYoY+23%の169億円と、大きく成長しています。営業利益の方を見ても、スポーツ事業はYoY+66%の18億円と、こちらも大きく成長しています。

営業利益率にすると約11%と、決して悪くない営業利益率が出ているとも言えるでしょう。

楽天イーグルスの売上・営業利益

比較対象として、楽天イーグルスの売り上げ、営業利益も見てみたいと思います。楽天は最近、スポーツ事業のセグメント決算を開示しなくなっているため、こちらの記事から引用します。

<楽天>17年度黒字達成 売り上げは球団創設時の倍に

17年度の総売り上げは138億円。スタンド増設などの積極投資が奏功し、主催試合で過去最高の年間177万人を動員した。入場料、スポンサー、グッズ、球場内飲食など各分野の売り上げも伸ばした。総売り上げから、球場などの減価償却費約10億円を含む総支出を差し引いて1億円の利益があった。

この記事によると、2017年の1年間で売上が138億円、減価償却費を除く営業利益が約11億円であったという計算になります。利益率を計算すると約8%です。

スポーツ事業の利益率を高めるポイント

では、スポーツ事業の利益率を高めるポイントというのはどの辺りにあるのでしょうか。

上の記事に、以下のような記載があります。

過去には2005、2013、2014年度に黒字を達成している。ただ、2005年度は球場改修などの減価償却費がほとんど計上されず、2013年度はクライマックスシリーズと日本シリーズ進出によるホーム戦の増加、2014年度は田中将大投手(現米大リーグ、ヤンキース)のポスティング移籍による追加収入(約20億円)があった。

観客増で球団創設当時から売り上げを2倍近くに伸ばし、球場改修費などを償却しても黒字を計上した。

スポーツビジネスの利益率を高めるポイントは、ここに書いてあるだけでもいくつか挙げられます。

・観客動員数を増やす・クライマックスシリーズ、日本シリーズへ勝ち進み、試合数を増やす・選手を高額な移籍金で移籍させる・球場改修などの減価償却費を減らす

DeNAの決算資料の中に、興味深いスライドがありました。

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左のグラフは主催試合の平均観客動員数を表したものになりますが、2017年は稼働率96.2%まで達しているという状況になっています。つまり、ほぼ毎試合、満員になっているという意味です。

これを受けて、2020年までに収容人数を約6,000人増やすべく横浜スタジアムの増築改修を行うとあります。

ベイスターズとイーグルスで、ベイスターズの方が売り上げが大きいのは、おそらく横浜と仙台の経済圏を比べた場合に、横浜経済圏の方が大きいという理由が一つ挙げられると思います。

もう一つ考えられる理由は、横浜スタジアムは DeNAの連結子会社になっており、スタジアム内における全ての売上がDeNAの売り上げとして計上されるのに対し、イーグルスの本拠地スタジアムは、形上は楽天イーグルスが宮城県から借り受ける形になっており、ベイスターズほどの自由度がない、という点が挙げられるのではないでしょうか。

DeNAのスライドの3番目に、スマートベニュー構想というものが挙げられています。これは球場の周辺を含めて、地域の交流空間として多機能複合型施設を作り上げるという意味です。もしこれが出来上がれば、スタジアムの中だけではなく周辺にもビジネスが広げられることになるので、ベイスターズとしては非常に大きな収益源になるのは間違いないと言えるでしょう。

参考: 売り上げに占める選手人件費比率

参考までに、球団の売り上げに対する選手の人件費比率も掲載してみたいと思います。

プロ野球チームのシーズン順位と当期利益の比較

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横浜DeNAベイスターズの選手年俸合計は推定で23億円と、セ・リーグの中では異常に安い部類になっています。売り上げ比に直すと約14%になります。

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楽天イーグルスの選手年俸合計も推定23億円となっており、売り上げ比に直すと約17%になります。

まとめ

以上の数字を簡単にまとめると、以下のようになります。

横浜DeNAベイスターズ 売上: 169億円 営業利益: 18億円(売上比 11%) 選手人件費: 23億円(売上比 14%)楽天イーグルス 売上: 138億円(減価償却前)営業利益: 11億円(売上比 8%) 選手人件費: 23億円(売上比 17%)

そして、今後売り上げや利益を成長させていくための打ち手として、DeNAが連結子会社化した横浜スタジアムの座席数を増やしたり、周辺施設に投資をしたりという具合に、スタジアム周辺ビジネスを活性化させていく予定であることが明確になっていますので、そちらに注目していきたいと思います。


シバタナオキ:SearchMan共同創業者。2009年、東京大学工学系研究科博士課程修了。楽天執行役員、東京大学工学系研究科助教、2009年からスタンフォード大学客員研究員。2011年にシリコンバレーでSearchManを創業。noteで「決算が読めるようになるノート」を連載中。

決算が読めるようになるノートより転載(2018年6月12日の記事

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