留学生就活の壁は「日本ルールへの最適化」——日本企業はグローバル人材を採る気があるのか

中国出身で神戸大学大学院2年生の蘇佳さん(24)は2018年5月下旬、日本の大手メーカーから内定を得た。学部3年生のときに交換留学制度で来日し、日本滞在歴は4年。日本で就活した理由は、「子どものころから日本のアニメが好きで、中国の大学で日本語を勉強しました。日本の生活はとても楽しくて、まだここで暮らしたいから」。

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人手不足やグローバル対応で、日本企業は留学生にも積極的に乗り出している。

撮影:今村拓馬

大学院1年生の秋に就活セミナーに参加し始めたが、「就活の仕組みを理解するのに時間がかかり、出遅れた」と春先から焦りが強くなった。

「外国人を積極的に採用している」「仕事の内容に興味が持てる」「自分が成長できそう」などを基準に、商社やメーカー、コンサルの説明会に回った。企業への応募を始めてからは、学内のキャリアセンターが大きな助けになった。エントリーシート(ES)の添削や、模擬面接をしてもらい、「言いたいことをきちんと伝えるためには、もう少しゆっくり話した方がいい」など、具体的な助言を受けた。

「急に面接が入ったりしてスケジュールが読めない中、キャリアセンターは当日でも個別に相談を受け付けてくれました。うちの大学はかなり面倒見がよくてありがたかったです」

面接のやり取りを録音し“振り返り”

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中国人の蘇さんは「就活の仕組みを理解するまで時間がかかった」という。

撮影:今村拓馬

蘇さんは20社以上にESを送り、面接に進めたのは約10社。売り手市場と聞いていたが、壁は厚く、2次面接、3次面接で跳ね返され続けた。

「日本人の学生に比べて留学生は情報が入らないです。会社で働いている外国人から直接話を聞く機会はなくて、セミナーや説明会に何社も行くと、どこも同じように見えて混乱するときもありました」

「中国人の友達は、最終面接で5回落ちて何が悪いのかとても悩んでいました。私はかばんを持って面接会場に入れるときは、面接のやり取りを録音し、夜、聞き直して“振り返り”をしました」

日本の就活のルールに慣れるにつれ、「お祈り」「サイレント」など、就活用語も覚えた。

一番印象的な言葉は、「学歴フィルター」だったという。

「中国は学歴がとても重視され、学部卒より院卒が評価されます。学歴だけで応募者の9割を落とす企業もあります。それに比べると、日本は学歴を重視しないよう見えたのですが、やっぱりありますよね。いろいろな大学の友達とセミナーの空席情報を共有したら、国立大学の留学生の方が空きが多く表示されました」

蘇さんが最終面接にこぎつけたのは1社。30分ほどの面接を経て、数日後に内定の通知を受けた。当初の第一志望ではなかったものの、また、選んでもらったことへの感謝もあり、就活を終了することにした。

就活中はアルバイトができず、交通費など出費も多かったので、これからは時給の高い通訳のバイトをたくさんする予定だという。

日本人向けクチコミサイトで情報収集

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日本企業の外国人採用が増え、母国に帰るか日本で働くか、留学生の判断は割れている。

GCShutter Getty Images

2017年に日本の金融機関に就職した中国人の田艶紅さん(24)は、自身の就活体験を振り返り、「日本企業を目指す外国人は、“グローバル人材”をセールスポイントにしない方がいい」と話す。

「日本企業はグローバル化に対応するため、外国人を採用すると言いますが、実際には、面接する人に『同じ職場で仲良くやっていける』と思われないと落とされます。働き始めて、その考えはさらに強くなりました」

田さんは中国の生まれ故郷に仕事が少ないため、日本での就職を決意。2年間の留学期間の半分を就活に費やした。留学2年目の9月から半年間は毎週学内の就活課に通い、ESや面接指導を受けた。

当初はES段階で落ち続けたが、楽天が運営する就活生向けクチコミサイト「みん就」の掲示板などを読んで研究し、徐々に次の面接に進めるようになった。

「大手ばかり狙わず、ハードルを下げてまず内定を一つ取る。そういった就活のポイントは、日本人向けのクチコミサイトで学びました。就活する外国人は、自分を特別な存在と思わず、日本に溶け込み、同じ土俵でやっていくという姿勢をアピールした方がいいです」

アパレル、ホテル、金融と大手ばかり3社の内定を得た田さんの実感だ。

「日本人と同じ土俵での戦い」求める企業

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日本では浸透している「現場主義」も、外国人には通用しないことがある。

1001nights GettyImages

「日本企業は、外国人にも同じ土俵で戦うことを求めますが、それはちょっと無理があると思います」と話すのは、大手小売企業に勤めて4年目の中国人、孫雨辰さん(28)。同社は毎年外国人を数十人単位で採用しており、孫さんも採用活動に関わっている。

「会社の知名度があるので、応募者の数はとても多いですが、外国人の離職率も非常に高いです。日本人と同じ扱いをしている限り、早期離職の流れは止められないと思います」

孫さんが店舗勤務をしていた2年前、新たに配属されたアジア人新入社員が、数カ月で辞めた。理由を聞くと、その新入社員は「(先輩の)孫さんがまだ現場作業をしているのを見ると、自分の将来にも希望が持てなくなる」と告げたという。

「日本企業は、まずは現場、全てが現場にあるという意識が強い。それから、頑張っていればいいことがある、誰かが見ていてくれるよと抽象的に励ましますよね。でも外国人は『いつまで』『誰が』など、はっきりさせないと納得できないです。日本企業に入る外国人は、頭では現場主義を理解してますが、実際現場仕事が続くとやはり困惑します。中国は大卒人材が現場仕事をやる文化がありませんし、親に知られると『そんな会社辞めろ』と言われます」

孫さん自身は3年の“下積み”をこなし、今春の異動で管理部門に移った。日本人の上司や同僚、パート社員ともいい関係を築いている。だが、同社を希望する外国人には、「早くマネジメントをしたいなら、母国で就職した方がいい」と助言することもあるという。

「外国人は母国に親や友人がいて、何かあれば『そんなに大変なら帰っておいで』と言われます。日本企業の方が安定しているとは言え、成長機会は母国の方が多いかもしれません」

グループディスカッションで疎外感

「日本人と同じ土俵」での戦いは、採用段階から始まっている。

メーカーに内定を得た蘇さんが一番苦戦したのは、日本人学生たちの中に放り込まれるグループディスカッションだったという。

「流れについていくだけで精一杯でした。でも私は、いいグループに入れたことが多かったのでまだいい方です」

台湾からの留学生、白宇さん(25)は、日本企業の二次面接のグループディスカッションで、自身の発言を他の学生から無視され、司会役の学生にも全く発言を振られなかったという。

見かねたのか、その場にいた社員が最後に白さんを指名し、いくつか質問をしてくれた。

白さんは失意を抱え会場を後にしたが、意外にも次のステップに進む電話があり、最終的にその会社から内定が出た。

自分を理解してくれた会社には感謝の気持ちでいっぱいだが、もやもやは残る。

「議論に入れてもらえなかったのは、私がいると会話がスムーズに進まないからでしょうか。自分が空気を読めていなかったのでしょうか。やはり外国人は面倒くさいんでしょうか」

(文中仮名)(文・浦上早苗)

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