ウーバーCEOダラ・コスロシャヒ氏。
Reuters
- ソフトバンク「10兆円ファンド」の運用責任者ラジーブ・ミスラ氏は、80億ドル(約8800億円)の出資を受け入れるようウーバーの取締役会や株主を説得することに個人的に6カ月を費やしたと明らかにした。
- 同氏はウーバーが大混乱にあった時期、ソフトバンクが主導する出資を受け入れるよう交渉していたと語った。
- 同氏によると、最終的にウーバーが出資を受け入れたのは、資金不足のためではなく、ソフトバンクがウーバーの世界中の競合企業に出資していたため。
80億ドルという金額は、新たな投資家からの出資提案を受け入れる十分な理由になる。普通なら、そう思うだろう。だがウーバーは違った。
ソフトバンク「10兆円ファンド」の運用責任者ラジーブ・ミスラ(Rajeev Misra)氏は、出資を受け入れるようウーバーの取締役会を説得することに個人的に6カ月を費やしたと明らかにした。
ソフトバンクは2017年、ウーバーへの出資を主導、最終的に同社の株式の約15%を取得した。これによりソフトバンクはウーバーの筆頭株主となり、ウーバーのガバナンスが大きく変わる契機となった。
ミスラ氏は6月11日(現地時間)、ロンドンで開催されたCogXで、ソフトバンクが率いるコンソーシアムはウーバーの既存株主から「79〜80億ドル」で株式を取得、さらに12億5000万ドルの直接投資も行ったと語った。取引は2018年1月に完了した。
だがウーバーはジェネラル・アトランティックなどの既存の投資家を頼ることも簡単にできたとミスラ氏は指摘した。その時期、ウーバーの取締役会は、当時のCEOトラビス・カラニック氏との権力闘争に忙しかった。
ソフトバンク・ビジョン・ファンドの運営責任者ラジーブ・ミスラ氏。
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「ウーバーが資金不足だったわけではない」とミスラ氏。
「私は取締役会と株主を個人的に説得することに6カ月を費やした。彼らはCEOも巻き込んで互いに対立していた。非常に混乱もしていた。なぜ、他のコンソーシアムではなく、我々を選んだのだろうか?」
「我々が79〜80億ドルを提示したからではない。80億ドルを提示できるコンソーシアムは他にもあった。たくさんあった」
ミスラ氏によると、ソフトバンクには1つ、大きなセールスポイントがあった。
「我々が買収していたエコシステムが理由。我々は世界中の配車サービス企業を所有していた」
ソフトバンクは10兆円ファンドを通じて、インドのオラ(Ola)、中国の滴滴出行(ディディチューシン)、シンガポールのグラブ(Grab)、ブラジルの99など、ウーバーの世界中の主要な競合企業に出資していた。
「我々はシナジーをもたらすことができた」とミスラ氏は語った。
同氏は例として日本をあげた。日本ではウーバーが間もなく、初の配車サービスの実証実験を行う。興味深いことにソフトバンクは、ウーバーの競合である滴滴出行とも別途、配車サービスで協業している。
「ウーバーは、ソフトバンクがタクシー組合との調整を図らなければ、日本でサービスを展開できなかっただろう。これはウィン・ウィン」
さらに同氏は、ウーバーが東南アジアでの競合であるグラブと事業統合したことにも触れた。統合は、ソフトバンクのグラブへの出資を終えた3カ月後のことだった。
[原文:SoftBank revealed the inside story of how it negotiated an $8 billion share deal with Uber]
(翻訳:R. Yamaguchi、編集:増田隆幸)