官僚の残業代は102億円が削減できる——庁内診療所は3週間先まで予約一杯

官僚

国会対応の業務には、多くの待ち時間がある。業務を改善して、待ち時間を削減すると、大幅に残業代も減らすことができるという。

霞が関の働き方に大きな負担を与えている「国会対応」。国会会期中、官僚たちは国会議員から質問を聞き取り、深夜まで答弁案を作成する。

この業務を改善することで、官僚の残業代102億円が削減されるという試算が明らかになった。試算をしたのは、慶應義塾大学大学院経営管理研究科の岩本隆特任教授(専門はHRマネジメントなど)だ。

国会待機の残業代は41億円超

岩本教授は、国家公務員(退職者含む)6人にインタビューした上で、人事院や内閣人事局による国会議員の諸手当や国会業務に関する調査を元に試算。そこでは国会対応における2つの業務改善案を提案した。

岩本教授によると、国会対応は次のフローに分類される。

  1. 議員事務所から質問通告
  2. 各省庁の担当職員が議員事務所で説明(質問取り)
  3. 質問内容の確定
  4. 答弁案作成
  5. 上司、他部局による決裁、確認
  6. 答弁案提出

岩本教授の案では、1つ目の改善点は、国会議員からの質問内容が確定するまで、職員が職場に待機する「国会待機」を改める。各省庁では、質問内容が確定し、待機が解除される時刻は、平均午後10時40分、もっとも遅い場合は午前4時50分(内閣人事局「国会に関する業務の調査」)。試算は、答弁案を作成しない職員が待機を続ける「待機損」を削減することを想定した。

人事局の同調査によると、課室で待機する人の割合は約4割。全体の待機人数は445人、このうち、待機をしたが答弁作成をしなかった人数は、134.25人。

待機人数の3割が、答弁作成をせずに「待機損」をしていることになる。待機損による残業代(人事院が公表する残業代の支給割合と基本給・賞与から算出した「時給」を適用)は、約41億1000万円に上る。

答弁案の決裁の待ち時間で61億円超の残業代

財務省

答弁案の決裁・確認を待つ時間は、2時間15分と推定された。

岩本教授は、議員事務所からの質問通告があった後、質問の聞き取りに参加しない職員に対し、待機を解除することで、待機損の残業代を削減できると提案した。ただし、職員が答弁案を作成することになった場合は、テレワークで答弁を作ることが前提だ。

業務改善の2つ目は、職員が答弁案を作成してから、上司・他部局による決裁・確認を待つ時間を減らす。1つ目の改善同様に、テレワークを導入することで、待ち時間を減らすことができる。

待ち時間は、岩本教授が官僚6人に聞き取った結果、決裁・確認者1人につき、各45分と推定。決裁者・確認者は課・局内の2人と省内外の1人の計3人と想定、決裁・確認による全体の待ち時間は、2時間15分と推定された。

答弁案を作成する人員は、内閣人事局の同調査によると、1問あたり平均2.78人。これらの仮定と調査に基づき、待ち時間による残業代が、約61億4500万円と算出した。

いずれの残業代の算出にも、人事院が公表する残業代の支給割合と、基本給やボーナスから換算した時給を用いた。

タクシー代22億円も削減できる

タクシー代

電車で帰宅ができれば、タクシー代も大幅に削減できる。

また国会対応以外の全般の業務に、テレワークを導入することで、22の府省庁の超過勤務手当1255億円が大幅に削減されると推定した。霞が関では、週に1日以上終日在宅で作業をするテレワーカーの職員が、全体の0.3%にとどまるため、導入が進めば業務の効率化が進み、残業の必要はなくなるとみている。

これに伴い、深夜のタクシー利用がなくなり、22府省庁のタクシー代22億円(各府省庁が公表する、2017年度のタクシー代支出実績を集計)も減らすことができるとした。

公表データの3倍前後の残業時間

岩本教授が6人に行ったインタビューによると、月の平均残業時間は100時間。人事院は、平均残業時間を30.5時間、霞が関国家公務員労働組合共闘会議(霞国公)は、34.1時間と公表しており、公表データの3倍前後の実態が現れた。

霞国公のアンケートでは、33.9%の職員が心身に不調があり、「薬等を服用、または通院治療中」とされる。それを反映するかのように岩本教授のインタビューの参加者からは、「庁舎内診療所のメンタルヘルス部門は、3週間先まで予約が取れない」「若い職員は月曜から金曜まで帰宅できず、庁内で仮眠する者もいる」という意見が出ていた。

岩本教授は、テレワークの環境を一部省庁で先行導入することなどを提言にまとめ、必要に応じて議員らに情報提供していくという。

(文・木許はるみ)

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