日本戦略を発表するAirbnbの共同創業者・ネイサン・ブレチャージク氏。
民泊事業者の届出が必要となる「住宅宿泊事業法」、いわゆる民泊新法が施行される前日の2018年6月14日、Airbnb(エアビーアンドビー:通称エアビー)は新たな日本戦略を発表した。
規制強化で民泊事業者の激減や宿泊料の高騰が懸念される中で、新戦略はエアビーの日本における攻略法になるのか?
戦略の一環としてエアビーは、ソフトバンクや全日本空輸、みずほ銀行など36の国内企業と「Airbnb Partners」と名付けたプラットフォームを立ち上げた。同社は、Airbnb Partnersの5つ活動内容の柱を明らかにした。
- 安全安心なホームシェアの実現
- より簡便な開業支援
- ホスト育成プログラムの提供
- 新たな体験価値の創出
- ローカルコミュニティの活性化
14日の記者会見に出席したAirbnb Japanの田邉泰之代表は、「オールジャパンで新しい旅の成長をサポートする」と強調。「パートナー企業とのビジネスにつながるよう、プラットフォームとしてサービスを積極的に展開する」と加えた。
ソフトバンク、KADOKAWAのパートナー企業
パートナー企業との連携を説明するAirbnb Japanの田邉代表。
パートナー参加企業一覧(Airbnbリリースより)
あいおいニッセイ同和損害保険、アソビシステム、あなぶきスペースシェア、イロドリ、エボラブルアジア、大塚家具、オープンハウス 、オレンジ・アンド・パートナーズ、KADOKAWA、カルチュア・コンビニエンス・クラブ、KEY STATION、グランドゥース、SATO行政書士法人、スタジオアンビルト、西新サービス、セコム、全日本空輸、ソフトバンク、損害保険ジャパン日本興亜、タマキホーム、中部興産、ナーブ、ニトリ、ハウジング恒産、パソナ、Peach Aviation、ビックカメラ、ファミリーマート、藤井ビル、プライムアシスタンス、ベンチャーリパブリック、matsuri technologies、みずほ銀行、メトロエンジン、モダンデコ、YMFG ZONEプラニング
パートナー企業とは、民泊施設の衛生対策やWi-Fi環境、家電の整備などでも連携していく。
『Japan: 2020の先へ』と題した新戦略によると、エアビーは今後、全国60都市でホスト(民泊提供者)に対する勉強会を開いていくという。また、今後6カ月以内に、新法に基づいた届出を行うための勉強会も開催する。同社は新戦略に3000万ドル(約33億円)以上を投資していく。
民泊新法で4万件以上削除か
民泊新法では、民泊の事業者が物件の図面などを提出し、都道府県知事に営業の届出が必要になる。年間営業日数の上限は180泊に制限される。また事業者には、宿泊者の本人確認や宿泊者名簿の作成・保存、事業者とわかる標識の表示などの義務づけられる。自治体によっては独自の規制を行う場合があり、平日の営業が許可されない地域もあるという。
事業者にとっては営業のハードルが上がり、6月8日時点で、営業の届出をした事業者は、2707件(観光庁より)にとどまる。
Airbnbに掲載された宿泊物件は以前、6万2000件以上あったとされるが、同社は届出をしていない約4万8000件の物件を削除したと報じられている。
Airbnbによると、2017年にAirbnbを利用した日本での宿泊者数は約600万人。年間で5千億円相当の経済的貢献を地域にもたらしたという。利用者の出身国は、シンガポール、オーストラリア、フランスの順に多かった。
Airbnbが2017年末に発表した「2018年の全世界旅行トレンド予測」では、東京が人気の都市ランキング(都市と周辺エリアの予約数)で1位になると予想している。2位がパリで、大阪が3位。
(文・撮影、木許はるみ)