ビル・ゲイツは「エネルギー貯蔵」テクノロジーに投資する10億ドル規模のファンドの一員。
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- ビル・ゲイツ、ジェフ・ベゾス、マーク・ザッカーバーグをはじめとするビリオネアたちは、ブレークスルー・エナジー・ベンチャーズ(Breakthrough Energy Ventures)を通して、「エネルギー貯蔵」スタートアップ2社に投資した。
- エネルギー貯蔵は、今後、再生可能エネルギーが世界中に普及していく際の大きなボトルネックの1つ。
- ブレークスルー・エナジー・ベンチャーズのファンドは「ペイシェント・キャピタル(忍耐強い資本)」として設計されている。つまり、リターンが生まれるまでに長い期間がかかることを前提としている。
ビル・ゲイツ、ジェフ・ベゾス、マーク・ザッカーバーグをはじめとするビリオネアたちは、再生可能エネルギーにとっての最大の問題を解決し得る「エネルギー貯蔵」スタートアップ2社に投資した。
ビリオネアたちが出資している10億ドル(約1100億円)規模のファンド、ブレークスルー・エナジー・ベンチャーズ(Breakthrough Energy Ventures)、いわゆるBEVは2017年、エネルギー貯蔵は同ファンドが注力する分野の1つと発表した。
2016に設立されたBEVには、リンクトインの創業者リード・ホフマン、アリババのCEOジャック・マー、投資ファンド大手、カーライル・グループの会長デビッド・ルーベンスタイン氏なども参加している。
BEVのミッションの1つは「ペイシェント・キャピタル(忍耐強い資本)」を提供すること。つまり、投資に対するリターンを最大20年は求めない方針を掲げている。スタートアップで働く科学者やエンジニアに、世界を変えるようなテクノロジーを開発するために必要な時間を与えるためだ。
6月12日(現地時間)、ビジネスニュースサイトのクオーツ(Quartz)はBEVの初の投資先を明らかにした。フォーム・エネルギー(Form Energy)とクイドネット・エネルギー(Quidnet Energy)の2社だ。
2社は、それぞれ「エネルギー貯蔵」の手法を開発している。エネルギー貯蔵は、今後、再生可能エネルギーが世界中に世界中に普及していく際の大きなボトルネックの1つとなっている。
クイドネット・エネルギーは、水を利用した斬新な方法でエネルギーを貯蔵する。具体的には、余剰電力でポンプを動かし、再利用された油井、あるいは新しい油井を通してシェール層まで水を送り込む。水はシェール層の割れ目に入り込み、圧力が作り出される。
発電するときは、水を解放し、押さえつけられていた圧力を利用してタービンを回す。
フォーム・エネルギーは、マサチューセッツ工科大学(MIT)の教授や元テスラのエンジニアが率いるスタートアップ。大容量のエネルギーを長期間蓄電できる、超高効率バッテリーを開発している。
バッテリーのコストは一般的に、1キロワット時(kWh)のエネルギーを蓄電するコストで測られる。クォーツによると、フォーム・エネルギーは、1kWhあたり10ドルしかかからないバッテリーの開発を目指している。現在、最も低コストのバッテリーでも、1kWhあたり約200ドルかかる。
2社の技術は、究極的にはEVのコストを下げ、走行距離を伸ばす可能性を秘めている。また、ソーラー発電のコストパフォーマンスをアップし、家庭用電力を下げる可能性も秘めている。
(翻訳:Yuta Machida、編集:増田隆幸)