メルカリ会長兼CEOの山田進太郎氏(2017年12月に撮影)。
撮影:今村拓馬
フリーマーケットアプリのメルカリが2018年6月19日、創業から5年で東京証券取引所マザーズ市場に上場した。国内の新規上場では2018年最大として注目されるメルカリは、新規株式公開で調達する資金の一部を米国事業の拡大に充て、グローバル市場で新たな挑戦を始める。
果たしてメルカリは今後、アメリカと中国企業が一歩も二歩も先を走るインターネットのプラットフォームの覇権を巡る戦いで、そのプレゼンスを強めることができるのか。
時価総額は7000億円超
19日、メルカリ株は1株5000円の初値をつけた後、一時6000円まで上昇。終値は5300円で、公開価格の3000円を大幅に上回った。上場日の1週間前、メルカリの公募価格は仮条件の2700円~3000円の上限に決まり、時価総額は4000億円を超えるとされた。同社の時価総額は結局、約7200億円近くまで膨れた。
創業者で連続起業家(シリアル・アントレプレナー)の山田進太郎氏は、同社株式の3割弱を保有し、海外メディアは、同氏が保有資産10億ドル(約1100億円)以上のビリオネアの仲間入りを果たすと報じた。
スタートアップ企業がベンチャーキャピタルから資金を調達し、事業を拡大。さらに、国境を超える成長を仕掛けるため、巨額な資金を調達しようと株式を上場する。過去20年、30年のアメリカで「No venture, No gain(挑戦なくして得るものなし)の精神の下、FacebookやTwitter、アマゾンがリスクマネーを活用して成功を収めてきた。「失われた20年」を経た日本で、ベンチャー企業メルカリの上場が意味するものは大きいだろう。
「日本のユニコーン(企業価値10億ドルを超えるスタートアップ企業)が株式上場に至った事実は当然、注目に値するが、それ以上に、日本生まれのプラットフォーマーが世界市場でどれほどそのスケールを拡大できるのか、期待は大きい」と話すのは、ニッセイ基礎研究所チーフエコノミストの矢嶋康次氏。
メルカリのミッションは「新たな価値を生み出す世界的なマーケットプレイスを創る」だ。
撮影:今村拓馬
インターネット上のメディア、ソーシャルネットワーキング・サービス(SNS)、eコマース(EC)のエリアでは、プラットフォームの覇権争いで、グーグルやアマゾン、Facebook、Twitterのアメリカ企業と、アリババやテンセントなどの国家主権が支援する中国勢が圧倒してきた。
「今まで、世界のプラットフォーマーはビジネスとビジネス、ビジネスと人、人と人をつないできた。メルカリは、モノづくり大国の日本で、実物と実物を通じて人をつなぐプラットフォームを展開している。新品・中古品を問わず、安心・安全で高品質なモノとサービスが溢れる日本で、スピード成長を収めたメルカリが、いかに世界市場でプラットフォーマーとして拡大できるのかを注目している」と矢嶋氏。
2013年2月の創業以来、メルカリはフリマアプリを速いペースで普及させ、ダウンロード数は日米で1億を超えた。連結売上高は2017年6月期で約221億円、前年の約123億円から倍増した。
創業者からの手紙
2018年6月19日、上場記者会見に出席した山田進太郎会長と小泉文明社長。
撮影:佐藤茂
山田会長は都内で19日夕、小泉文明社長と米メルカリCEOのジョン・ラーゲリン氏と共に記者会見を開いた。山田氏は、「世界が舞台になる」と述べ、世界市場における事業の拡大を強調。今後、メルカリは、オンライン決済や物流(ロジスティクス)などのインフラが整備されているアメリカやヨーロッパ諸国を中心に事業展開を加速化していく。「その後、途上国や新興国市場を数十年かけてやっていきたい」と山田氏は加えた。
1年で不要になるモノの価値は日本だけでも7兆円を超えるという。「新たな価値を生み出す世界的なマーケットプレイスを創る」をミッションに掲げるメルカリは、既に子会社をアメリカとイギリスに設立し、巨大なマーケットプレイス構想を本格化させていく。
会見会場では『創業者からの手紙』と記された手紙が配られた。手紙には、メルカリが世界挑戦を続けるために今後、「人材」「テクノロジー」「海外」の3エリアで重点的に投資を行っていくことが記されていた。
結びに「失敗を恐れず、大胆に」と書かれてあった。
(文・佐藤茂)
(編集部より:メルカリ山田会長のコメントを加え、記事を17:45に更新しました)