ポケモンGOは「ソーシャル機能」で何をねらう?「ポケモンの交換」が登場 ── 最大級のアップデート

Pokémon GOがトレード機能などが実装

©2018 Niantic, Inc. ©2018 Pokémon. ©1995-2018 Nintendo / Creatures Inc. / GAME FREAK inc.

この夏、スマートフォン向けゲームアプリ「Pokémon GO」(以下、ポケモンGO)が、2年前のスタート以来最大級のアップデートを行う。ついに、「フレンド機能」と「ポケモンの交換」が実装されるのだ。

特にポケモンの交換は、ゲーム機向けの「ポケットモンスター」本編でも、コアな機能のひとつであり、ファンから待ち望まれていたものでもある。記録的大ヒットの後、ポケモンGOが目指す世界の一端が、今回の新機能の方針から見えてくる。

「フレンド」と「交換」の機能がついに登場

フレンドリストとポケモンの交換機能

左が「フレンドリスト」機能。右が「ポケモンの交換」機能。

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開発元であるナイアンティックとポケモン社は、新機能の実装に伴うアップデートの時期を公表していないが、リリースには「近日中」と記載されている。

新しい機能は2つ。ひとつは、プレイヤー同士を「フレンド」登録する機能。そしてもうひとつが「ポケモンの交換」機能だ。

これまでのポケモンGOは、意外なほど「ひとりでやるゲーム」に仕上がっていた。現在のスマートフォン向けゲームでは、他のプレイヤーとのコミュニケーション要素があるものが多い。特にスマートフォン向けのゲームでは「フレンドリスト」として、一緒にプレイする人を登録するのは一般的だ。しかし、ポケモンGOには、なぜかそうした機能がなかった。

今回、ポケモンGOにもフレンドリストが追加されることになった。フレンドリストに登録された相手とは、手元にあるアイテムを交換したり、マップ上の施設「ジム」で一緒にジムバトルを戦ったりできる。一緒にプレイすればするほど、フレンドの「ランク」があがる仕組みもある。

ギフト機能とウルトラフレンドの仕組み

フレンドには、アイテムに自分が発見した「ポケストップ」の写真をつけ、絵はがきのように送ることができる(写真左)。フレンドの関係には「ランク」があり、交流すればするほどランクが上がる。一番上は「ウルトラフレンド」と呼ばれる(写真右)。

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ただ、一般的なスマートフォン向けゲームのフレンドリストとは違うところもある。

一般的なものでは、誰とでも無制限にフレンドになれるが、ポケモンGOでは、「トレーナーコード」と呼ばれる特別な情報を知らないとフレンドになれない。

トレーナーコードを交換しないとフレンドになれないということは、「不特定多数の人物とフレンドになる」ことを想定していない、ということである。

トレーナーコードを交換するには、相手同士が実際に「知り合い」であることが前提となっている。これは、任天堂がネットワークサービスでフレンドリストを構築する方法論に近く、“安全性”を重視した構造になっている。

「実際に顔を合わせないと交換は不可能」であることの狙いとは

特別なポケモンの交換画面

なかなか見つからない「特別なポケモン」も、1日1回に限り、交換が可能。

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もうひとつの機能、「ポケモンの交換」は、フレンドリスト以上に、ポケモンファンが待ち望んだものだろう。

自分の集めたポケモンと友人が集めたポケモンを交換できるのは、ポケモンというゲームが持っていた基本的な要素であり、ポケモンGOにこれまで欠けていた要素だ。

ポケモンの交換は、お互いがフレンドであることに加え、さらに、交換しようとするプレイヤー同士が「近くにいる」ことが必須となっている。

前述の、フレンド同士でのアイテム交換はお互いが近くにいる必要はないが、ポケモンの交換については、プレイヤー同士が顔を合わせた状態で行う必要がある。

なぜこうした形になっているのか? ナイアンティック側は次のように語っている。

「ポケモンGOは、実際にその場所に行き、顔を合わせてプレイすることを前提としている。だから、ポケモンの交換も、顔を合わせた人同士で行うようにしている」

ポケモンGOは、GPSを使った位置情報を使うゲームであり、「その場所にいる」ことがとても重要な意味を持つ。日本を含む世界各地でリアルイベントを行っているのも、その特性を活かすためだ。

また、次のようにも話す。

「友人同士だけでなく、親子同士・家族同士一緒に行動し、ポケモンGOを楽しんでいる人々もいる。友人や家族が必要としているアイテムを、自分からプレゼントできるようにすることで、より一緒に楽しむ感覚が強くなる

家の中にこもって遊ぶゲームへのアンチテーゼ

ポケモンGOは、家の中でプレイするゲームのアンチテーゼとして生まれた経緯がある。だからこそ、フレンド機能やポケモンの交換についても、実際に会って使うことを前提としている。「友人や家族と」という発言は、そういう経緯がある。

フレンド機能がなく、ポケモンの交換もないからか、ポケモンGOをプレイしている人たちの行動は、どこか不思議な光景だった。同じ場所にいるにも関わらず、それぞれが関わり合うことなくプレイしている印象があった。

トレード画面のチュートリアル

ポケモンの交換は、顔を合わせられるくらい近くにいる者同士でないとできない仕組み。

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ジムバトルが実装された後、協力しあう姿も見られるようになったが、それでも「協力感」は希薄だった。しかし今後は、フレンドになることや、ポケモンを交換するような風景が見られるようになるかもしれない。

また、ポケモンGOのフレンド機能は、頻繁に一緒にプレイする者同士であればあるほどプレイが有利になる機能も組み込んでいる。

例えば、ポケモンを交換する時、あまりやりとりをしていない「普通のフレンド」と交換する場合と、頻繁にやりとりする「ベストフレンド」以上のランクの人と交換する場合とでは、ポケモンの強さに応じて必要になる「ほしのすな」の量が減り、さらに、受け取るポケモンの強さも変わる。

このことからは、ナイアンティックがポケモンGOについて、単につながるだけでなく、「一緒にプレイする」価値を重んじていることも見えてくる。

「ポケモンGOのソーシャルな機能については、まだ一部が実装された段階」とナイアンティック側は話す。

まずはこの新機能によって、プレイヤーの関係がどう変わり、ポケモンGOというコンテンツがどう活性化するのか。

それを見極めてから、さらに次の段階に進もう……ということなのだろう。

(文・西田宗千佳)


西田宗千佳: フリージャーナリスト。得意ジャンルはパソコン・デジタルAV・家電、ネットワーク関連など「電気かデータが流れるもの全般」。主な著書に『ポケモンGOは終わらない』『ソニー復興の劇薬』『ネットフリックスの時代』『iPad VS. キンドル 日本を巻き込む電子書籍戦争の舞台裏』など 。

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