ARベンチャー「マジックリープ」がアニメコンテンツの制作力を強化 ―― 現実とアニメが“共存”する世界の実現に向けて

マジックリープCEOロニー・アボビッツ氏

マジックリープCEO ロニー・アボビッツ氏

Thomson Reuters

AR(拡張現実)デバイスを開発するスタートアップ「マジックリープ(Magic Leap)」はアニメーション制作会社を買収したり、オスカー受賞歴を持つアニメーション制作会社からアーティストやアニメーター、ベテランのゲームデザイナーを大量に採用している。「複合現実(mixed reality)」プロジェクトの成功の鍵は「コンテンツにある」と同社が考えている所以である。なお、同社の企業価値は45億ドル(約4900億円)に上るとされる。

マジックリープのARデバイスを装着したユーザーは、超現実的なデジタルイメージをあたかも現実であるかのような感覚で体感できる。その卓越した技術力はテクノロジー業界をリードするさまざまな著名人たちをも感嘆させる。実際、グーグルやクアルコムは同社に出資をしている。2017年後半には1000〜2000ドル(約11〜22万円)でARヘッドセットを売り出す模様だ。

同社は自社製品のクオリティを上げることと同時に、ユーザーが思わず息をのむような魅力的なコンテンツが必要であることも認識している。それが、アニメーション制作会社FuzzyCube Softwareを買収した大きな理由だ。

テキサス州ダラスにあるFuzzyCube Softwareは、アップル出身のクリエーターたちによって設立されたスタートアップ企業。創業者の1人、ジェフ・リュディガー(Jeff Ruediger)氏は、iPhone/iPad向けのゲーム「BoomTown!!」や「Chemo Calc」のクリエイター。共同創業者たちもゲーム業界での経験を持ち、「Halo Wars」や「Age of Empires 3」などの制作に携わっていた。

FuzzyCube Softwareのスタッフは昨年春の買収後、数百人規模のアニメーターやアーティスト、ゲーム開発者を擁するマジックリープに加わった。買収額は明らかにされていないが、10人以下の企業ということもあり、さほど高額ではなかったと思われる。元FuzzyCube Softwareのスタッフはそのままダラスで仕事を続けている。

アカデミー賞を受賞したアニメ制作会社の買収を計画

さらにマジックリープは昨年秋、オスカーやエミー賞を受賞しているアニメーション制作会社Moonbot Studioの買収に動いた。結局、買収は成立しなかったが、同社はMoonbot Studio出身のアーティストやアニメーターを十数人採用した。彼らは今、フロリダにあるマジックリープの本社で仕事をしている。

Moonbot Studiosは2012年、『The Fantastic Flying Books of Mr. Morris Lessmore』で、アカデミー賞短編アニメーション部門を受賞し、2014年にも短編アニメーション『The Numberlys』が同部門にノミネートされた。また同年、メキシカン・ファストフードチェーン「チポトレ」のCM「The Scarecrow」で、エミー賞2部門を受賞した。

Moonbot Studios

Moonbot Studiosは、2012年、アカデミー賞短編アニメーション部門を受賞している。

Getty/Kevin Winter

関係者によるとマジックリープは2016年末、Moonbotの買収に向けて協議に入った。マジックリープの創業者でCEOのロニー・アボビッツ氏はMoonbotとその作品のファンだという。結局、Moonbotの知的所有権に関する「複雑な」問題が原因で、買収は成立しなかった。マジックリープとMoonbotはこの件に関してコメントしていない。

Moonbotを買収する代わりにマジックリープは、十数人に上るMoonbotのアーティストやアニメーターをまとめて採用した。Moonbotには3人の共同創業者とわずかなスタッフだけが残っている。

[原文:Magic Leap purchased a startup founded by former Apple employees, and looked into buying an Oscar-winning animation studio

(翻訳:十河亜矢子)

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