米軍基地跡にフィリピンが進める1.5兆円都市構想 —— 行政機能をマニラから移転、強まる日本企業の投資意欲

フィリピン政府が、首都マニラの近郊に新都市「ニュー・クラーク・シティ」の建設を進めている。政府移転、新空港と高速鉄道の建設など、総額140億ドル(約1兆5千億円)の超巨大プロジェクトだ。

マニラは、交通渋滞や人口密集、大気汚染など、多くの途上国の大都市が抱える深刻な課題を抱えている。フィリピン政府はこうした課題の解決を目指し、およそ40年かけて200万人が生活できる新都市を目指すという。

ニュークラークシティの計画図

ニュークラークシティの計画図。

マニラ首都圏は、東京やシンガポール、香港などと比べ、住民の生活の質に大きな違いがあります。インフラを整備することで、こうした課題に対処したいと考えています」

フィリピンの基地転換開発公社でCEOを務めるヴィヴンシオ・ディゾン氏は、Business Insider Japanのインタビューに対して、巨大プロジェクトの狙いをこう説明した。

ヴィヴンシオ・ディゾン氏

インタビューに答える、基地転換開発公社CEOのヴィヴンシオ・ディゾン氏。

フィリピンは、2015年の国勢調査で人口約1億98万人。フィリピン国家統計局によれば、2012年以降は、5%台から7%台の経済成長率を遂げている。2017年の推計値では、平均年齢が23.5歳の若い国だ(アメリカCIAの「World Fact Book」)。

1288万人が暮らすマニラ首都圏は超過密都市で、交通渋滞が世界でもっともひどい都市のひとつと言われている。

政府移転、空港建設も計画

クラーク国際空港

クラーク国際空港のイメージ図。

大都市が抱えるさまざまな問題を緩和するために、フィリピン政府は、マニラから約120キロ離れた米軍基地の跡地に、ニュー・クラーク・シティの建設を進めている。

クラーク国際空港の建設も進めており、2020年5月に建設を終え、運用開始を目指している。ニュー・クラーク・シティには、中央政府行政センターの建設も計画しており、行政機能をマニラから移転させる構想も含まれている。行政センターの建設は2022年に完了する方針だ。

ディゾン氏は「これまでインフラ整備のプロジェクトは、遅れがちだったが、ドゥテルテ大統領になってから、速やかに事業が進んでいる。大統領の任期が終わる2022年までにいくつかのプロジェクトを完成させたい」と話す。

世界中から資金調達目指す

行政エリア

ニュー・クラーク・シティ行政エリアのイメージ図。スタジアム建設も計画に含まれている。

200万人が暮らす巨大な新都市の建設は、技術の面でも資金の面でも、フィリピン政府だけでは、対応しきれないのが実情だ。このため、ディゾン氏らは世界各国をまわり、投資の呼び込みを図っている。フィリピン政府が強調しているのは、23.5歳と若い国で、人口増加と高成長が見込まれることに加え、英語が公用語のひとつになっているため国民の英語力が高いことだ。

ディゾン氏によれば、「最近、日本には3カ月に1回は来ている」という。中国のアリババとも、研究拠点などの設置を協議しているという。

6月19日には、東京・日比谷でカルロス・ドミンゲス財務相ら閣僚級のフィリピン政府首脳が来日し、フィリピンへの投資を呼びかけるイベントを開いた。このイベントでは、フィリピン政府と並んで、日本の大手証券会社5社が主催に入り、注目の高さをうかがわせた

フィリピン共和国エコノミックブリーフィング

2018年6月19日には「フィリピン共和国エコノミックブリーフィング」が東京・日比谷で開かれた。

世界各地の新興国や途上国では、都市化の問題に対処する目的で、首都近郊に新都市を建設する計画がある。建設に着手したものの、企業の誘致や人口の誘導に失敗した例も少なくない。「マスタープランの策定を終え、実施のプロセスに入るところ」(ディゾン氏)という、巨大プロジェクトの成否は、海外からの投資や企業をどれだけ呼び込めるかにかかっている。

ディゾン氏は「我が国の労働力は若く、活発で、英語が堪能です。日本からの民間の投資をどんどん呼び込みたい」と話す。

(文・写真:小島寛明)

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