相次ぐ企業買収で急拡大しているRIZAPグループの代表取締役CEO(最高経営責任者)瀬戸健氏(40)と代表取締役COO(最高執行責任者)松本晃氏(70)が2018年6月24日、東京都内で対談した。
松本氏は6月20日にカルビーの会長兼CEOを退任し、24日に開かれたRIZAPグループの株主総会でCOO就任が決まった。対談は、株主総会にあわせて企画され、多くの株主らが2人の話に聞き入った。
両氏の対談は、新たに代表取締役が2人体制となったRIZAPの今後を占ううえでも、さまざまなヒントが含まれていたようにみえる。対談の概要を紹介する。
株主総会にあわせてRIZAPグループの瀬戸健CEOと松本晃COOが、株主らを前に対談した。
COOに就任したばかりの松本氏が株主に発した最初のメッセージは、「会社の価値の向上」だった。
松本晃氏(以下、松本):今回、RIZAPという会社に入りまして、会社の価値を上げようと思っています。株価が何倍に上がるか、そんなことは保証はしません。息子と同じ歳の瀬戸さんを、なんとか「世界の瀬戸」にしたいと思っています。
対談は、会場の株主やメディア関係者からの質問や、ウェブサイトに寄せられた質問に答える形で進んだ。RIZAPグループは、アジアを中心に海外展開を進めている。株主からは、海外展開をどのように推進していくかについての質問があった。
瀬戸健氏(以下、瀬戸):国によって、まったくやり方が違います。非常に悩んだりしたこともあったのですが、いまは、ほぼローカルのトップに任せている。実は、任せたところからすごくうまくいき始めたということがあります。サービス業なので、現地の人たちに任せるほうがうまくいきやすいのかなと思っています。
松本:地域はおそらく、アジアの方がやさしいと思っています。西洋はこういうものを受け入れ、それだけの対価を払ってくれるか、というところにバリアがある。ローカライゼーションは、瀬戸さんの言うとおりで、できる限り現地の人に任せる。できる限り現地に合わせる、そういうことをしないと。
トップ・マネジメントも、実際の従業員も、お客さんもやり方も、できる限りローカライズする。ただ、RIZAPのサービスそのものは、ある程度日本でエスタブリッシュされたものですから、これを基本にしながらローカライズするというのがたぶん、一番成功するんではないかと思います。
どこで一番成功するかというと、一番難しいですが、やはり中国だと思います。うっかり出ていきますと、やけどをしますが、ゆっくりやっていてもだめです。ある程度スピード感を持ちながら、ある意味での慎重さをもってやっていく。
RIZAPグループCEOの瀬戸健氏。
ダイエットなどのパーソナルトレーニングを主力事業とするRIZAPグループは、他業種の企業買収を繰り返し、グループ全体の従業員数は7000人規模に達している。
松本:会社の経営者のはしくれになってから30数年。従業員は本当に大切にしてきたつもりです。私の順番は一番が、顧客と取引先です。二番目は従業員と従業員の家族です。三番目は大きな意味での、広い意味でのコミュニティです。コミュニティは地域社会や、国とか、世界とか地球とか、さらに大切な資源、環境、こういうものを称してコミュニティと呼んでいます。実は株主は四等なんです。
どうしてかというと、この一番目と二番目と三番目をちゃんとやっていないと、株主に来ない。したがって四等にしています。7000人の従業員と、その家族、親戚を幸福にしない限りは、会社はよくならない。ひいては、株主さんがよくならない。
瀬戸:100%同感です。まずは、お客さんに喜んでいただくことを通して、最後は、株主に喜んでいただけると思っています。
松本:会社は、もうからないとお話になりません。もうからないと設備投資ができません。新商品の開発ができません。給料もボーナスも増やせません。最終的には配当も何もできません。稼がないと何もできない。この会社も、もっともっと稼げる会社にしていかないといけません。
RIZAPグループのCOOに就任した松本晃氏。
株主から「瀬戸氏からみた松本氏」や「松本氏は、どのように瀬戸氏をサポートしていくか」という質問も出た。
瀬戸氏:前から大尊敬をしていました。我々が成長していくためには絶対に来ていただきたい方で、猛烈にアプローチをしたというのが今回のプロセスでした。うちの会社はいろんな人が集まっています。ほんとうに個性が強く、思いを持っている人が多い。どうしたら活躍できる場を提供できるかどうかということだと思うんです。いっしょに未来をつくらせてもらいたいと思います。
松本氏:社会人になって46年になりますが。海外に住んだことはないんですが、だいたい、三分の一は海外でした。ほとんどアメリカ、直近数年間は中国が多かったわけですが、世界はまったく変わってしまいました。
経営者は、若い人たちの時代になりました。日本のようにじいさんばっかりで仕事をしている時代ではなくなりました。アリババのジャック・マーは、会社をつくってわずか19年です。いま時価総額はおそらく60兆円ぐらいになっている。シリコンバレーに行くと、若い連中ばっかりですが、ある程度年配の者が、アドバイスをしながら、どんどん成長させている。
日本はまだまだ若い人が少ない。瀬戸さんはまだ40歳です。こういう人が、世界でも成長してもらって、日本人がいるんだということを見せていきたい。
そのために、ある程度歳をとった人がサポートをすれば、成長のスピードが加速されると思います。
(文・写真:小島寛明)