世界最大ECプラットフォーム「Shopify」、日本戦略を急ピッチ —— 巨大化する国内市場

オンラインストアを簡単に開設でき、Facebookやインスタグラム上でも商品の販売を可能にする、eコマース・プラットフォームでは世界最大級のショッピファイ(Shopify)は、日本市場への参入を果たした2017年終わりから急ピッチで事業基盤を強化している。

ショピファイ

REUTERS/Lucas Jackson

ショッピファイ(本社:カナダ・オタワ)は日本法人を2017年11月に設立すると、投資銀行のシティグループやJ.P.モルガン、世界銀行で企業戦略や中小企業支援におけるキャリアを積み上げてきたマーク・ワング(Mark Wang)氏をカントリーマネジャーに起用。言語やカスタマーサービスなどを中心に、国内ユーザーに向けたプラットフォームのローカライズ化を進めている。

「日本は重要なコアマーケット。あらゆる面でローカライズしていく。ショッピファイがサービスをここまでローカライズするのはおそらく日本が初となるだろう。日本のユーザーが不便を感じることのないようにしたい」とワング氏は話す。

世界175カ国で利用されるショッピファイでは今までに、60万を超えるネットストアが作られてきた。プラットフォーム上で販売された総額は630億ドル(約6兆9600億円)に及ぶ。世界では、バドワイザーやネスレ、P&G、レッドブル(Red Bull)などがショッピファイを使う。

ショッピファイの前身は2004年に生まれた。3人の創業者は、インターネット上で満足のいくスノーボード用品を見つけることができないと感じ、自らスノーボードのオンラインストア「スノーデビル(Snowdevil)」を立ち上げる。それに飽き足らず、創業者たちは2年後にショッピファイを設立。たちまちその利便性が評価されると、2015年にニューヨークとトロント証券取引所に上場。時価総額は現在までに160億ドル(約1兆7700億円)に拡大した。

スノーボード・オンラインショップから生まれた巨大企業

Shopify Japan's Mark Wang

シティグループやJ.P.モルガン、世銀で企業戦略や中小企業、スタートアップ支援に携わった後、Shopifyに入社したマーク・ワングさん。Shopify Japanのオフィスは現在、東京・丸の内「WeWork」内にある。

Business Insider Japan

ショッピファイはなぜここまで拡大することができたのか?強みは何か?

それはショッピファイのシンプルさにある。あらゆるショップのオーナーや企業は、エンジニアやプログラマーを雇わなくても、ショッピファイにサインアップすればオンラインストアをオープンすることができるという。利用料金は月額29ドル(約3200円)、ストアのデザインテンプレートも豊富にある。

SNSと簡単に連携できる点もショッピファイの強みの一つだ。ショッピファイで登録された商品情報は自動的に、フェイスブックやメッセンジャーに掲載できる。ショッピファイは2018年6月、日本国内でもインスタグラムのショッピング機能を始めた。投稿で商品タグを追加すれば、世界中のインスタグラム・ユーザーに直接、商品を販売することが可能だ。

支払いや決済の面でも、ショッピファイはシンプルな手段をオンラインストアに提供する。例えば、5月に日本でも導入された「Shopifyペイメント」がその一つ。登録すれば、VISA、Masterカード、American Expressからの支払いが直接ショッピファイを通して可能となり、他の決済代行のアカウントは不要。

さらに、「Shopify Pay」、「Google Pay」、「Apple Pay」などの素早い支払い手段やコンビニ決済も利用でき、オンラインストア・オーナーや起業家にとっては販売コストの削減にもつながる。また、購入者の支払い情報と注文内容が同期されるため、ショッピファイの管理画面で、支払い済み注文、支払い方法、購入者を簡単に追跡することができる。

さらに拡大する日本の16兆円市場

Shopify Japan HP

Shopify JapanのHPより

eコマースの拡大はアメリカや日本の小売市場を大きく変え、オンラインストアとリアル(実店舗)はさらに対立を深めるとも伝えられているが、カントリーマネジャーのワング氏は、「ショッピファイは多くの小規模なショップオーナーに利用されてきている。日本には優れた商品を販売する多くの中小店舗がある。実店舗がわずか数分でオンラインストアをオープンできる」と話す。

「今、日本の伝統的なリテーラーたちは、いまだかつてないほど重要な時を迎えている」とワング氏。「今後、数年で日本のEC市場は凄まじい勢いでさらに拡大していくと同時に、世界中の人が今以上に日本の商品をインターネット上で買い求めてくる」と続けた。

日本国内のB-to-CのEC市場は2017年、前年から9%増え16.5兆円に拡大した(経済産業省)。EC化率は前年から0.36ポイント増加して、5.79%となった。市場では、このEC化率が2022年までに20%まで増加するとの予測が聞かれる。ちなみに、国内のB-to-BのECマーケット規模は317.2兆円で、EC化率は29.6%だった。

「今後、ショッピファイを日本で利用する多くのストアに対して、メールやチャット、カスタマーサポートの面でのローカライズ化を進めていきたい。ショッピファイのスローガンである『すべての人々のコマースをより良くするため(Make Commerce Better for Everyone)』を日本で実現したい」(ワング氏)

国内では、BASEやカラーミーショップなどのオンラインストアの運営プラットフォームが事業を拡大している。カナダ発の巨大なプラットフォーマー、ショッピファイは今後、いかに日本市場を攻略していくのか、目が離せない。

(文・佐藤茂)

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