流行する「無思考型サービス」、 MERY共同創業者が「ズボラ旅」で挑む旅行イノベーション

ズボラ旅

ズボラ旅

ここ最近、利用者が“何も考えなくていい”という「無思考型」のサービスが注目を集めている。即時買い取りサービス「CASH」の光本勇介氏は2018年の重要なキーワードの一つとして「無思考型」を掲げる。

例えば、毎日の献立を決めてくれる「me:new(ミーニュー)」や洋服を定期的に届けてくれるZOZOの「おまかせ定期便」など、個人の好みに合わせてレコメンドしてくれるサービスは、その典型例だ。

そして、宿泊先や旅行プランなど決めごとの多い旅行の分野でも「無思考型」のサービスが現れた。サービスイン後、ユーザーが殺到して“3時間でパンク”した「ズボラ旅 by こころから(以下、ズボラ旅)」だ。

誰でも使える旅行のコンシェルジュサービス

ズボラ旅

ズボラ旅のLINEアカウント画面。

「今までの予約の旅行サービスだと、目的地や日程を入れて、宿泊先を比較するのが大変だった。そこを全部代わりにやります、というのをチャット型でやろうと思った。ズボラ旅は、行き先が決まっていないとか、行き先は決まっているけど、どうやって行こうとか、なにするか決めるのも“めんどくさい人”に向けたサービス

ズボラ旅を運営するHotspring社のCEO、有川鴻哉(こうや)さん(26)はズボラ旅の特徴をそう話す。

ズボラ旅では、行き先や予定が決まっていなくても、LINEで出発地を伝えるだけで旅行プランを提案してもらえる。旅行プランは、サービスインに向けて半年ぐらいかけて貯めたデータや過去のユーザーからの評判が良かった場所などから、旅行業の資格を持っているスタッフがプランを作成する。

筆者が実際に使ってみたところ、2時間程度で金沢の旅行プランを提案してもらった。チャットで相談した上で、プランが確定すれば、宿泊予約までしてもらえる。

ズボラ旅旅行プラン

出発地を「東京から」と伝えて、2時間程度で提案してもらった金沢の旅行プラン。旅行中に急に時間が空いたり、食べたいものが変わったといった旅行中の要望にもコンシェルジュ的に対応してくれる。

ズボラ旅

こうしたレコメンドサービスやチャット型サービスは、最近は人工知能(AI)やチャットボットを使っていることも多い。ズボラ旅では全て人間が対応し、今後も完全にボットで代替することは考えていないと話す。

「まずは人間同士でやり取りしていく中で、どういうリアクションが出るのか、データを貯めていっているところ。今後はニーズを聞き出す部分など、部分的にボットにしていくことも検討している。ただ、最終的に全てをボットにするつもりはない。やはりボットだと人間的なやり取りは難しく限界がある」(有川さん)

5月22日にサービスが開始されてまだ1カ月程度しか経っていないが、人間ならではのホスピタリティの高さが好評で、すでにリピートしているユーザーもいるという。

サービスリリース後3時間でパンク

有川さんは現在26歳。すでにExit(事業売却)を経験しており、スタートアップ界隈では知られた存在だ。19歳の頃から、フリーのウェブデザイナー・マーケターとしてさまざまなスタートアップに関わった後、女性向けキュレーションメディア「MERY」を立ち上げたペロリ創業メンバーの一人として、デザイン全般やSEOなどを担当。

MERYを数十億円でDeNAに売却してからは、「kurashiru」のdelyやCandleなどスタートアップ向けにエンジェル投資も行っていた。個人のツイッター@ari_kouでは20万ツイート近く発言するほど頻繁に使っていて、実際、ツイッター上で知り合って投資に至ることも多いという。

有川鴻哉

1992年生まれの有川鴻哉さん。高校時代からブログをやったり、自分でもサービスを作ってきた。こんな感じで普段ツイッターを見ているという。

MERYを退職した翌月の2017年5月にHotspringを設立。11月にはベンチャーキャピタルなどから約7000万円を調達した。β版でサービスを磨きながら、2018年5月22日11時にズボラ旅をリリースした。

リリース直後から予想を上回る数千件の相談が入り、当時5人で対応していたズボラ旅は約3時間でパンクした。

「名前のキャッチーさと、サービスのコンセプトが刺さったんだと思う」(有川さん)

1日の受付件数を限定しながらサービスを運営し、現在ではパンク状態も解消している。6月18日時点で9000件以上の申し込みが来ており、リリース直後以降は口コミによってユーザーが増えているという。

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利用者の男女比はほぼ半々で、20代前半がもっとも多いが、50代の利用者もいる。

ズボラ旅

7月上旬から「旅行代金の後払い」を開始

女性メディアから、旅行業界へ。今回全く異なる分野のサービスを始めた理由について、有川さんはこう語る。

旅行が好きなのに加えて、今旅行業界ではモバイルシフトが起こっています。けれど、国内の旅行大手は動きが遅くて、変化に十分に対応できていない。さらに、予約に特化したサービスばかりで、“旅行に行くまで”の過程を作る部分が欠如している。そこを全て(スマホで)完結できるようにすれば、旅行に行っていない潜在層も獲得できると考えました

大手旅行会社はリアルな店舗があるからこそ、店舗を経ないチャット型サービスを出しにくいジレンマも抱えている。

有川鴻哉さん

「ズボラ旅 by こころから」の「こころから」というブランド名は「こころから楽しんでほしい」という思いから。旅行に行った人に「#こころから」をつけてもらっており、インスタグラム上では現時点で約38000件の投稿がある。

ズボラ旅は、機能の拡大も進める。7月上旬から、旅行代金を「後払い」する新機能も開始する予定だ。

ZOZOTOWNのツケ払い機能と同じように、ユーザーはお金を払わずに旅行に行くことができ、翌月給料が入ったタイミングなどで支払うことができる。

「友達と旅行に行く時に、事前に誰かが立て替えをしたり、事前にお金を集めるのも大変だったりする。たまたまその時お金がないから旅行に行けないという機会損失をなくしていきたい

旅行の負の部分を解消し、極力何も考えずに旅を楽しんでもらいたい —— 後発のスタートアップだからこそ思いついた、“予約する前”のユーザーにリーチする新たな旅行ビジネス。「ズボラ旅」は旅行業界の新たなビジネスモデルになるだろうか?

(文、写真・室橋祐貴)

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