日本ではクレジットカード契約者でないと使えなかったPayPalだが、今後銀行口座の登録・利用が可能となる。
PayPalは6月25日に、国内6行の銀行口座連携機能と企業からの報酬などをPayPal残高として受け取れる機能を発表した。
PayPalはすでにアメリカなどで両機能を展開中。国内ではいままでクレジットカードの登録しかできなかったが、今回発表になった機能が開始すればクレジットカード不要でPayPalに対応する各種ECサイトを利用できるようになる。
「クレジットカードなしでPayPalが使える」ことの意味
PayPal上での銀行口座登録のフロー。
銀行口座振替機能は、PayPalの利用できる全加盟店で使用可能。手数料は従来通り加盟店側が負担し、算出方法も従来のクレジットカードの決済と変わらない。
銀行口座の登録をするには、PayPalのマイページにログインし、銀行名や契約者名義、口座番号などを入力する簡単なステップだけで完了する。
なお、登録手順に進むには、7~8月にかけて行われる最新のアップデートを待たなければならない。アップデートのタイミングはユーザーによって異なるので、いち早く登録したいなら、7月以降マイページを頻繁に確認する必要がある。
なお、PayPalに登録できる銀行は6月25日時点で以下の6行だ。
- みずほ銀行
- 三菱UFJ銀行
- 三井住友銀行
- りそな銀行
- 埼玉りそな銀行
- ゆうちょ銀行
Peatix Japanの共同創業者でもある岩井直文社長。
発表会では同機能の導入事例として、イベント管理サービス「Peatix」が紹介された。登壇したPeatix Japan社長の岩井直文氏は、銀行口座振替の導入メリットについて、以下の3点を挙げている。
- いままでクレジットカードを持っていないことが原因で、イベントのeチケットの購入を諦めていたユーザーへのフォロー
- 不正利用などで発生する補償金(チャージバック)コストの低減
- 既存のコンビニ払い・ATM払いは決済完了通知までに1~2時間がかかったが、PayPalの銀行口座振替の場合は、リアルタイムに決済状況がわかる(支払い後、すぐにeチケットの送付ができる)
企業から個人への送金機能も開始
PayPalで企業から送金を受けられるようになる。ただし、日本ではまだ個人間での送金には対応していない。
また、もうひとつの新機能である「企業から個人へPayPal送金できる機能」は、7月以降からスタート予定。クラウドソーシングやクラウドファンディング、フリマアプリなどのC2Cビジネスが盛んになってきた現代ならではと言える。
この機能は「ペイアウト」と呼ばれ、企業側からは支払先のPayPal IDのメールアドレスおよび支払い金額の2つが指定できれば送金できる。従来はお金を支払う企業自身や間に入る決済代行業者などが、ユーザーの口座番号などを保存し管理してきたが、ペイアウト機能を使えば管理コストが軽減される。
PayPalのペイアウト企業を導入する企業やサービス例。
発表時点では、以下の企業やサービスがペイアウト機能の対応を表明している。
- アライドアーキテクツ
- ウェイブダッシュ(チケット流通センター)
- CAMPFIRE
- GMOメディア
- DMM.com
- ピクシブ
ユーザーとして気になるのはやはり手数料だが、結論から言えばユーザーには負担がかからない。ペイアウト利用時の決済手数料は、企業側の負担となる。金額は支払い額の2%、支払先が国内であれば最大120円、海外であれば最大5000円に設定されている。
お金を受け取ると、まずそのユーザーの“PayPal残高”として計上される。ユーザーはPayPal残高をECサイトでの買い物に使うことも、登録した銀行口座に出金することもできる。
ただし、対応する銀行は口座振替機能と同等の6行のみだ。口座登録を完了すれば個人認証も同時に行われ、受け取れる金額が登録前の1回あたり10万円から、1回あたり100万円にアップグレードされる。
なお、出金時には振込手数料が発生し、1回あたり5万円未満の場合は250円、5万円以上では無料となっている。
企業と個人、両方のニーズに応えて決済機会を増やす
2018年度第1四半期、PayPalの収益、総取扱高、アクティブユーザー数は昨年同期比で上昇傾向にある。
機能は増えたが、PayPalにとって自社のビジネスモデルは非常にシンプルだ。PayPalを通して行われる取引高が増やせば、その分徴収する手数料の額は大きくなる。
前述のように、いままで日本では「クレジットカードを持つ人しかPayPalが使えない」という状況で、現金文化が根強い日本では、同社が狙えるターゲットはある意味で狭いものだった。
しかし、今回の銀行口座と連携する2つの機能の導入により、カードを持っていないユーザーもビジネスの対象となる。これは同社にとって売り上げを伸ばす、着実な一歩と言えるだろう。
(文、撮影・小林優多郎)