年収5000万円は安い、日系大手は成長遅い、いつかは基礎研究…難関企業内定のハイスペック若手の本心

空前の売り手市場と言われる昨今、どの企業も喉から手が出るほど優秀な若手人材をほしがっている。そんな中、高い競争率を勝ち抜いて、外資系金融や外資系コンサルなど、就活市場でも難関とされる企業から内定をもらうような20代は、どんな将来を描き、就職先に何を求めているのか。

Business Insider Japanと「外資就活ドットコム」を運営するハウテレビジョンは、共同で座談会を開催。現代の就職難関企業に内定を決めた、4人の学生及び新社会人の赤裸々な本音を聞いた。

座談会イメージカット

外資系投資銀行、外資系戦略コンサル、尖ったITベンチャーからの内定を次々獲得するような20代が今、考えていること。

撮影:今村拓馬

遼さん(24、仮名):外資系戦略コンサル内定。東京大学大学院理系出身。

藍花さん(24、仮名):外資系戦略コンサル1年目。慶應義塾大学文系出身。

悠太さん(25、仮名):外資系投資銀行を辞退して、外資系メディア関係会社1年目。国立大学大学院経済学研究科出身。

シュシュさん(22、仮名):外資系投資銀行、外資系戦略コンサル、ITベンチャーに内定。私立文系出身。

がんばっても年収5000万円

——就活のポイントと、なぜ最終的に今の会社を選ばれたのかを教えてください。

藍花さん:インターンや説明会に行く中で「この業界に入りたい」っていうところが見つからなかったんです。そもそも就活を始めたのが遅く、時期的に切羽詰まってたのもあって。そこで、まずは自分のキャリアを狭めない選択肢を取りたいなと。

で、次のステップを考えた時、一番可能性を残せるのはコンサルなのかなと考えるようになりました。それで面接を受けたり、働いている方のお話を聞いたりしました。その中で、(今の会社は)「やりたいことが決まっていないから、この会社に入って見つけたいです」という私の希望を受け入れてくれたのが「いいな」と思いました。

遼さん:僕も就活を始めた時期がそんなに早いわけではなくて、修士1年生の6月頃に日系の大手コンサルティング会社で夏のインターンをしました。そもそも就活をする気がそんなになくて、博士課程への進学も半分以上は考えている状態だったので、とりあえず「周りが行くから」っていうことで申し込みました。インターンをやってみて、コンサルの仕事はすごく面白いと思ったし、同時に「研究室にいると社会と全然触れられないな」と感じました。いろんなことを考えている多様な学生があちこちにいると分かったので、「やっぱり、いったんは外に出たほうがいいな」と思いました。

——「いったん」なんですね?

遼さん:その段階では、まだちょっとアカデミア(研究の道への進学)も若干迷っているところだったんです。他の総合系や戦略系コンサルも申し込んだのですが、結局、今の会社から11月末には内定をいただいたので、その段階で就活を止めました。本選考に実質、2カ月ですね。

シュシュさん:初めに就活の軸となったのは、お金と企業のブランド価値でした。だから外銀と外資の戦略系コンサルを受けました。選考が進んでいたのですが、周りの話をよく聞くと、まず給料がかなり低いことに気づいたんです。

どんなに頑張ってもおそらく年に5000万円。税金で取られたりとか、ストックオプション(での支給)だったりして、結局はそんなにもらえない。だからお金に関しては、今自分でメディアやWebサービスなど複数の事業をやっているんですけど、それを拡大させて、法人化させていったほうがいいなと。それで就活でお金の軸はなくなりました。

一方、企業ブランドを持っていたとしても、企業内ではあまり活躍できる見込みはない。キャラクターでも実名でもいいんですけど、ネットで自分のブランドを発展させた方がやりたいことができそうだし、人もお金も動かせるなと思いました。ですから結局、就活の軸は「自分のブランドを立てよう」というところに落ち着きました。ブランドの立て方で大事になるのは、どんな業界でも通じる能力を身に付けるための勉強ができる場所と、SNSやブログでの発信を許可してくれるところです。

——外資系とベンチャーのデータアナリスト職という、2つの内定で迷われているんですよね。

シュシュさん:まだ迷っています。多分、ベンチャーに行くと思うんですけど。最終的なポイントは、自分のブランドが立てられることと、あとは好きなこと、興味あることができるところですね。

手元写真

会社を選ぶに当たって重視するのは「学べるかどうか」という意見が目立った。

撮影:丸山紀一朗

内定者同士の懇親会で「これはまずい」

——悠太さんは、外資系金融の内定をギリギリで断ったとか。

悠太さん:内定者懇親会っていうのがあるんですよ。飲み屋とかで、内定者同士で話をするみたいな。そのときに、俺は死ぬまでに何億、何十億稼ぐみたいな話をみんながしていました。「何歳までにいくら」って。僕はその話に興味がわかず、「ああ、そうか。こういうふうになるのか」と。そこに違和感がありました。「これはまずいな」と思って。でも、「ここに行く」って決めて来ていたので「(他に)内定もないし、どうしよう」となったんです。

でもやっぱり「えいやっ」で辞めちゃいました、そこは。人事は会ってくれなかったです、もはや。電話で「辞めます」って言ったら、夜に長文のメールが来て。それが別れ間際の彼女みたいな、本当に30行ぐらいあるメールで、「なぜ私があなたと別れてはいけないか」みたいなことがずっと書いてありました。(一同笑)

——今の会社への就職は。

悠太さん:就活を最悪もう1年やってもいいかなと思いながら、あらためて自分の軸を考えてみたところ、3つあったんです。やはり、自分なりの仮説やアイディアを出したり、規定の枠に縛られずに頭を使えるということが1つ。2つ目は、ITやテクノロジーなど、最先端の技術を活用できること。3つ目は、宗教性が強くないこと。企業によってはミッションやカルチャーに心酔してしまうのが、ちょっと怖い。もっと幅広い価値観を持っていたいんです。

その3つの軸を基に考え直して、今の会社をたまたま見つけました。新卒採用は終わっていたのですが、コーポレートサイトの下の方にお問い合わせフォームがあって、そこへ「新卒採用が終わっているのは知っていますが、御社に興味があります」というラブレターみたいなものを送って。すると「今、帰国子女枠の採用をやっているから、そこに混じってもいいよ」となり、何とか拾ってもらえたという感じです。

知識欲を満たしたい

——今の就職先に求めるものは何でしょうか?

藍花さん:今後、自分が何か「これを極めたいな」というものが見つかった時に、入り込めるような経験値やスキルが身に付くといいなとすごく思っています。(就職先の)会社の説明では「いろんな業界を見られるよ」とのことなので、経験を積みたいなと。面接の時にも「半分ぐらいの人間がそういう思考で入ってくる会社だから、いいんじゃないか」と言ってもらえて「あ、ここいいな」と。

——イメージとしては何年くらいですか? 見つけるまで。

藍花さん:どうでしょうね。3〜5年ぐらいは頑張って働きたいなと思っています。

遼さん:僕は就活の原点が、夏に行ったインターンで「こんなに自分の知らない世界があるんだ、自分と全然思考パターンの違う人間がこんなにいるんだ」と感じたことなんです。

それまでずっと理系で、大学院に行って当たり前、研究して当たり前みたいな世界に身を置いていたので、そもそも3年生のときに就活なんて1ミリも考えなかったんです。なので、会社を選ぶ時に一番大事に思ったのは、自分が知らないことをどれくらい知ることができる場なのか、ということ。知識欲じゃないですけれども、そういうことを考えて。

内定先の会社(外資系戦略コンサル)は数カ月ごとにプロジェクトが変わっていって、いろんなフィールドで関われるので、まずビジネスという立場から、社会の隅々まで見ることができるんじゃないかなということを考えて、それがある意味、最終的な決め手にもなっています。

画面。

「やりたいことを見つける」も、入社の動機だ。座談会には、スカイプでの参加者もいた。

撮影:丸山紀一朗

——また研究職に戻る気持ちもあるんですか。

遼さん:僕は今もPh.D.(博士号)を取りたいなと思っていて、会社と掛け合って休職できたらしますし、ダメだったらもしかすると辞めて、大学に戻るかもしれません。今やっている研究がけっこう楽しいので。ビジネスともテクノロジーとも関係ない基礎研究なのですが、ノーベル賞を目指すような研究です。どこかのタイミングで大学に戻って、3年ぐらい集中してやれたら。

——研究に対して、就職が回り道とは感じない?

遼さん:違う世界を見るのはいいのかなと思っています。大学にいた時に一番感じた不満は、研究の世界にずっと身を置いている人たちって、考え方がとにかく古いんですよね。上意下達の文化のラボもけっこうありますし。話していて違和感を感じる場面がいっぱいあって、「これじゃあ、ちょっと日本の研究はダメだな」と思うこともありました。

僕自身も、もうちょっと違う視点を身に付けないと、ビジネスをやるにしても、研究をやるにしても、広がりがないなと。

——シュシュさんは2つの内定のうち、ベンチャーに傾いているのはなぜですか。

シュシュさん:単純にそこにしかないデータがあるんですよね。そのデータが、個人的にはけっこう魅力的だったりして。自分のやりたいこととか、勉強したいことで、いい刺激が受けられるかなと。あと単純に、その会社の企業価値がかなり上がりそうなので、10年後に(会社が)とても大きくなったら「あそこに新卒で入ったんだ」って言えるなと思って。何となく、自分の今までのカンですけどね。

悠太さん:僕が会社に求めるものは、思考材料とか裁量ですかね。頼まれたことをただ作業的にこなしていく仕事よりは、やっぱり思考訓練みたいなのが僕は好きなので、そういうのが機会としてあるとうれしい。その点、今の会社の処遇に関しては満足しています。

外資系コンサル女子は結婚できない?

藍花さん:男性陣に質問なんですけど、今の会社(外資系戦略コンサル)から「内定をもらって働く」みたいなことを言うと、「それ、絶対に結婚できないよ」って言われて、すごく嫌なんですけど、どう思いますか?

遼さん:僕も同じような会社なので、まったくそうは思わないです。

悠太さん:会社名だけでは分からないことも多いので、別に気になりません。

——「結婚できないよ」って言ってくる人は、なぜできないと思っているのでしょう。

藍花さん:何でですかね。

悠太さん:一般的に男の人は、自分より格上の女性だと、ちょっと引いちゃうっていうのがありませんか?

シュシュさん:絶対それだと思います。

藍花さん:今、女性の社会進出をすごく言っていますよね。でも、こういう部分が変わらないと。結婚できなくなるのではという不安から、総合職じゃなくて一般職に行く人が周りにもいます。でも、もったいないと思うんですよね。どれだけその子が賢いかを知っているので。その子なりに考えはあると思うので、別に言わないんですが。

ビル群。

日系大手企業への就職を、考えなかったのはなぜか。

撮影:今村拓馬

日系大手は成長に時間がかかる

——皆さん外資系やベンチャーです。日系大手に行く選択肢はありましたか。

悠太さん:日系大手も面接に行きましたが、飲み会やゴルフなどプライベートの話をずっとされたことがありました。それはそれで別にいいんですけど、「僕の生き方とちょっと違うかな」と思いました。やっぱり階層、ヒエラルキーがあって「昔からやってるから」という伝統的な手法があって、創意工夫が許されない部分が多いのかなと思いました。

シュシュさん:1つは繰り返しですが、勉強したいっていうのがあって。それが新卒からできる日系企業、もしくは大企業は、まずないかなと考えました。2つ目は、普通に日系の採用が始まっているとき、自分は海外を旅したり遊んでいたので、そもそも就活はできなかったという感じです。

——遼さんは、インターン先が日系大手でしたね。

遼さん:日系の採用が始まる前に、僕も(外資系コンサルに)決まってしまったので、乗らなかったというのが1つあります。もう1つは、いくらコンサルでも日系だと自分が一人前になるまでにけっこう時間がかかるなというのをインターンで実感して。最初の数年で、若手がいきなりインパクトを出すのは難しい環境だったので、そんな10年も20年も待てないなと。そんな理由で、日系は考えませんでしたね。

藍花さん:私は業界で区切っていて、コンサルはやっぱり外資のほうが存在感が強い。歴史も長いですし。あと、成長速度的な部分でいうと、日系大手コンサルでバリバリ働いている先輩から「他の社員で、期待もされず、プロジェクトに配属されることもなく、毎日オフィスにいるだけの人がいる。でも、その人たちを辞めさせるような雰囲気もあまりない」と聞きました。1社目として入ることを考えると、なるべく厳しい環境で自分を試したいというのがやっぱりあって、自分の中では志望順位が下がりました。

人間らしいことができる社会

——社会や国、世界のこれからについてはどう考えますか。

シュシュさん:「無駄のない世界がいい」というところですかね。自分が今やってることを突き詰めると、あんまり人がやらなくてもいいっていう結論になるんです。人よりソフトの方が絶対に有能だと、自分は思ってるので。人が働く必要がないところに、人がいるのは意味がない。ソフトやロボットに代替した方が、もっと人間らしいことができる。

遼さん:最近、日本が経済を含めて、元気がないと感じていて。日本をもう一回、成長力のある国にする手伝いがしたいというのが、ざっくりした考えとしてあります。世間で特に言われているのは、日本の基礎研究がすごく力を失っているということ。優秀な人から就職してしまうので、制度を変えて、優秀な人こそ研究に向かってくれるようにすることに、今ちょっと興味を持っています。

悠太さん:僕は、皆さんがクリエイターになったらいいなと思います。面倒くさいことは機械にやらせてしまって、人間がもっと創造的なことをできるような世の中になっていってほしい。もっとアイディアフルな世の中になっていくと面白いと思います。僕もそれに何か貢献できればいいなと思います。

藍花さん:女の人がもっと働きやすい世界になったらいいなと思っています。自分が心地良くない思いをすることがなくなるといいな、とまずは思います。それと、日本全体で少子高齢化が進み、改善の兆しも見えない中、女性を労働人口に投入しようという流れはやっぱり必要かなと。

女性にも男性と同じだけの教育費を投資しているのに、無駄になることが多い。もっと経済効果を出せる可能性があるにもかかわらず、社会的な理由でそれが制限されている現在の状況は、単純にもったいない、非効率的だなと、思うのです

(聞き手・滝川麻衣子、丸山紀一朗/ハウテレビション、構成・滝川麻衣子)

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