まるで19世紀? トランプ大統領の貿易戦争が機能しないことは、ハーレー・ダビッドソンが証明している —— UBSが指摘

帆船

Australian National Maritime Museum on The Commons/Flickr

  • UBSウェルス・マネジメントのチーフエコノミスト、ポール・ドノバン(Paul Donovan)氏は、アメリカのトランプ大統領の貿易戦争は19世紀を彷彿とさせると言う。
  • グローバル化が進む世界では、関税は無力だと、ドノバン氏は26日(現地時間)の顧客向けのメモで書いている。
  • ドノバン氏は、ハーレー・ダビッドソンがヨーロッパ向けオートバイの生産をアメリカ国外に移すと発表したことをその一例として挙げた。

UBSウェルス・マネジメントのチーフエコノミスト、ポール・ドノバン氏は顧客に対し、トランプ大統領が欧州連合(EU)や中国に突き付けた関税とそれに対する報復関税は「19世紀の税」だと述べた。

「19世紀には、関税はある程度機能していた。経済にとっては純粋にマイナスだが、一般的に企業がどこで物を作るかの選択肢はほとんどなかった」ドノバン氏は言う。

「企業の目は国内を向いていて、生産拠点を世界中どこでも自由に動かすことはできなかった。関税は19世紀の税だ」

だからこそ、トランプ政権が突き付けた最近の関税は機能しないだろうと、ドノバン氏は言う。

「現代の貿易は(19世紀の貿易に比べて)より複雑で、多国籍企業が存在感を増している。国際貿易の40%前後が、系列会社から系列会社へと物を動かす、企業内で起きていると推定されている。これが企業に関税を回避する柔軟性を与えている」

ここ数カ月、トランプ大統領は中国やメキシコ、EUなどで生産された数千億ドル相当の製品に関税をかけるとして、貿易をめぐる戦いに火をつけた。背景には、製品をより安く生産することで、アメリカ経済が弱体化させられているとの思いがある。

そして、この戦いは26日(現地時間)、新たな展開を見せた。アメリカを象徴するオートバイ製造大手のハーレー・ダビッドソンが、トランプ大統領とEUの小競り合いを回避するため、ヨーロッパ向けオートバイの生産をアメリカ国外に移すと発表したのだ。

同社はEUの輸入オートバイに対する報復関税は、ビジネスに「大きな打撃」となるだろうと述べ、アメリカからヨーロッパへ輸出するオートバイ1台あたりのコストが平均2200ドル増加するとして、アメリカ国外に生産を移すことに決めたという。

トランプ大統領はこの動きを批判し、同社の決定には失望したとツイートした。

「全ての企業の中で、ハーレー・ダビッドソンが最初に白旗を振るとは驚きだ」トランプ大統領は言う。「彼らのために努力してきたが、最終的にEU向けの販売で関税を払わないということだ。これは我々の貿易にとって、1510億ドルという大きなマイナスだ。税金はハーレーの言い訳に過ぎない。忍耐強くあるべきだ! 」

しかし、ドノバン氏はハーレー・ダビッドソンの動きは理にかなっていると言う(強調はBusiness Insiderによるもの)。

「ビジネスの観点から見れば、全くもって合理的だ。欧州連合もハーレー・ダビッドソンを特に追求することはないだろう。EUは、政治的目的を達成するために税でアメリカ経済に痛手を与えようとしている。ハーレー・ダビッドソンがアメリカでバイクを作れば、EUの税がアメリカ経済とハーレー・ダビッドソン、EUの消費者を苦しめることになる。だが、ハーレー・ダビッドソンが国外に生産を移せば、EUの税はアメリカ経済を苦しめても、ハーレー・ダビッドソンやEUの消費者を苦しめることはない。21世紀の貿易の世界へようこそ」

[原文:UBS: Trump's trade war is trying to take us back to the 1800s — but Harley Davidson has proved it won't work]

(翻訳、編集:山口佳美)

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