新宿バルト9では、7月2日から「VR映画」が上映される。
2万円台という安さで高画質なVR映像を視聴できる「Oculus Go」の登場や、レノボやグーグルがなどが手がけるVRデバイス「Mirage Solo」が防災訓練に活用されるなど、ここ数カ月間で日本のVR界隈は話題に事欠かない。
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そんな中、東京都新宿区の映画館「新宿バルト9」では日本初のVR映画興行が2018年7月2日より実施される。6月26日に開催された記者向け発表でいちはやく最新のVR HMD(ヘッドマウントディスプレイ)を体験してきた。
1.シアターに入ると、3DメガネかのようにVR HMDが手渡される。機材の価格は大違いだ。
VR HMD=VR ヘッドマウントディスプレー(Head Mount Display)。
2.VR HMDは完全なスタンドアロン(独立)式。つながるケーブルなどは一切無い。
VR HMDは中国のPico社製。正面の2つのカメラは空間を認識し、利用者の動きを正確に捉えるためにある。
3.VR用のマスクも配られており、衛生面に配慮。
通常の映画と同じように手渡されたものをもって、席に座る。
4.上映前、スクリーンにはVR HMDの装着方法が表示されていた。
5.メガネをかけていても、鑑賞できる。
装着する順番はマスク→メガネ→VR HMDの順。
6.映画館でのVR体験は端から見るとちょっと怖い光景だ。
とはいえ、皆がVR HMDを被っているので気にはならない。
7.体験できたのは3本中の1本「夏をやりなおす」。STU48のメンバーも体験。
今回はオリジナルVR作品「夏をやりなおす」を体験できた。実際の上映会では「おそ松さんVR」「evangelion:Another Impact(VR)」を加えた3本の作品を楽しめる(写真は同じ作品を体験しているSTU48のメンバー)。
8.VR映画は360度の映像を楽しめる。
一般的な映画では常に目の前のスクリーンしか見ないだろうが、VR映画は360度すべてを見わたせる。1回観ただけでは気づかない点なども作品中に散りばめられている。
9.迫力の大音量が「VR映画」ならではの特徴。
音響は通常の映画館の設備を使用するため、大音量・高音質。周囲の人の気配や反応が感じられるのも、耳をヘッドホンなどで塞ぐタイプのものやひとりで楽しむタイプのものとは違うVR映画ならではの体験だろう。
同じ場所にいる人々でVR映像を鑑賞する新しい体験
鑑賞システムやハードウェアの調達は、PCメーカーであるVAIOが担当している。
今回のVR映画を試してみて、技術的に最も印象深かったのは上映開始のアナウンスと同時に観客が装着するVR HMDが一斉に再生を始めた点だ。
システム構築を担当したVAIOによると、これはVR HMD側にコンテンツをあらかじめ保存しておき、再生指示をサーバーから一括で送信して実現。さらに、一定間隔でサーバー側とVR HMD側の同期を行ない、個体ごとに発生する微妙なズレを補正するなどの工夫を施しているという。
確かに筆者が試した限りでも、映像と音はうまくシンクロしており、快適に初めてのVR映画を鑑賞できた。
仮面ライダーやプリキュアなどのコンテンツも登場予定
写真左から東映 取締役企画調整部長の村松秀信氏、VAIO 執行役員副社長の赤羽良介氏、クラフター 代表取締役社長の古田彰一氏。
VR映画は、映画配給事業を手がける東映、PCメーカーでハードとソフトの両面のノウハウがあるVAIO、そして3DCGアニメの技術を持つクラフターがそれぞれの強みを活かしている。
3社は2017年12月にVR映画に関する共同事業「VRCC(VR Cinema Consortium)」を設立。今回の新宿バルト9での上映が、VRCCのはじめての興業例となる。
現在、VRCCに加盟する上記3社だが、広くパートナーを募り、VR映画を放映したい興行主や映像をつくりたいクリエイターやプロダクションを広く募集するとしている。
今後、VR映画に対応したコンテンツは随時制作される予定。
東映の取締役企画調整部長 村松秀信氏は「仮面ライダーなどの特撮、ファミリーピクチャーなどのVRコンテンツも検討している」と話しており、「映画館に来てもらうひとつのアイテムとしてVRに取り組んでいく」と意気込みを語っている。
新宿バルト9での上映は7月2日から約1カ月間を予定しており、最初は1日2回の頻度で上映される。集客具合によっては1日2〜3回ほどまで増やす見通し。
なお、チケットの販売は6月30日午前0時から、新宿バルト9の公式ホームページで開始予定。料金は年齢にかかわらずひとり1500円(13歳未満の鑑賞は不可)。VRに興味のある人であれば一度体験してみてはいかがだろうか。
(文、撮影・小林優多郎)