“ノールック買取”の風雲児が仕掛けるツケ旅行「TRAVEL Now」の衝撃 —— 無審査10万円、旅行の“常識”が変わる

バンク

BANK社の光本社長と髙田COO

2018年は「旅行の年」になりそうだ。

1年前の2017年6月28日、サービス開始わずか16時間で3億6000万円ものモノを即現金化したCASH。その1年後の2018年6月28日、CASHを運営するBANK代表の光本勇介氏はアロハ姿で記者会見に現れた。

光本氏が手がける新規事業は、10万円まで無審査で旅行に行ける、あと払い旅行サービス「TRAVEL Now」だ。

性善説で旅行業界の“常識”を変える

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アプリを開くと、「いまなら3万円以下の旅行が¥0に」というキャンペーンバナーが目に飛び込んでくる。

「現在、エクスペディアやブッキング・ドットコムなど、オンライン上で予約するOTA(オンライントラベルエージェント)の事業規模はものすごく大きくなっている。けれど、この市場は、今お金を持っている人たちが旅行に行けている市場。僕は、お金の問題によって、旅行を我慢している人たちが潜在的にかなりいるんじゃないかと思っています」(光本氏)

CASHはモノを渡す前に現金が手に入るという、いわゆる「ノールック買取り」アプリの市場を創出し、DMMが70億円で買収したことは2017年末の大きなニュースになった。

次に光本氏は旅行業界の“常識”を変え、新しい市場を作り出そうとしている。

従来、旅行というのは、予約と同時にお金を支払い、当日旅行に行くというのが“常識”だった。しかし、TRAVEL Nowでは、お金を払う前に旅行に行ける

具体的には、約4000種類の海外・国内旅行やバス、アクティビティの中から、好きなプランを選び、ボタンひとつで即予約ができる。実際の支払い請求は2カ月後。予約までに特別な審査は何もない。CASHと同じく、最初に電話番号で本人確認をするだけだ。

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TRAVEL Now

TRAVEL Nowのビジネスモデルは、エボラブルアジアなどの旅行代理店を通じて提供された旅行商品に対して、先にバンク社が資金を支払い、あとからユーザーからお金を回収するモデル。ユーザーがお金を支払わないリスクは当然生じる。

しかし、CASHを1年間運営していく中で、リスク対策にも一定のノウハウを作り上げてきたと言う。

「CASHで(買い取ったはずの)モノが送られてこない“デフォルト率”は、当初の10分の1になった。1年間、試行錯誤していく中で、どうすれば“デフォルト率”を下げられるかもある程度わかってきた。今回のTRAVEL Nowも、そうしたノウハウを生かして、そのリスクに耐えられる事業展開ができると思っています」(光本氏)

何より、支払いより先にサービスを提供するという考えの根底には、性善説でビジネスは成り立つのか、という光本氏流の社会実験がある。

「CASHを1年間運営してきて、やはり性善説に基づいた事業の可能性を感じた。CASHでは、人を信じて、先に『お金』を提供してきた。TRAVEL Nowでは、人を信じて、先に『旅行』を提供していきたい」(光本氏)

モノで旅行代金を支払う

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旅行プランの一覧から好きなプランを選び、「トラベルする」を選ぶだけで予約完了する。

TRAVEL Now

そもそも、CASHの次に、なぜ旅行業界だったのか。そこにロジカルな理由は特にないと言うが、「今年は旅行の年になる」と話す。

「10年ほどインターネット業界の中にいて、今後こういう流れに変わるというのは常に考えていて、今年は旅行の年になると思っています。 この半年だけ見ても、インターネットを軸に、新しい旅行商品が増えてきている。事業はタイミングが重要だと思っており、旅行業界が変わるタイミングで、新しい仕組み、新しい表現で参入するのはビジネスチャンスでもある」(光本氏)

先月には、旅行のチャット型コンシェルジュサービス「ズボラ旅 by こころから」も大きな反響を集めたが、今まさに旅行業界が大きく変わろうとしているのかもしれない。

関連記事:流行する「無思考型サービス」、 MERY共同創業者が「ズボラ旅」で挑む旅行イノベーション

昨日報じたように、ズボラ旅でも7月上旬に「あと払い」機能の開始も予定しており、今後は支払いのタイミングを旅行前、旅行後、どちらでも選べるのが“当たり前”になるかもしれない。

「CASH」と「TRAVEL Now」が連動する可能性は?

光本氏は、CASHについても「順調に成長している」と言い、将来的にはTRAVEL Nowとのシナジーも考えているという。

TRAVEL Nowでは、本人確認さえすれば、旅行に行くことができ、実際の支払いは2か月以内にコンビニで支払う。しかし、もしかしたら2カ月経ってもお金に余裕はないかもしれない。

現時点では、催促しても支払いがない場合は、サービスの利用が不可になる。そこを、将来的には「モノで支払う」ことも検討しているという。

「僕らはCASHというサービスを持っていて、モノを現金化してきた。2カ月後のタイミングで、現金がなくてもモノはあるかもしれない。その時に、旅行代金にモノを送ってもらって支払うということもできるんじゃないかと思っています」

(文、写真・室橋祐貴)

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