投資でもゴール狙う、本田圭佑も出資するブロックチェーン企業「Quantstamp」の底力とは

本田圭佑のツイート

セレブやアスリートもビジネスのことを考え、投資をするようになった時代。サッカー日本代表、本田圭佑もその1人だ。

本田のビジネスの才覚はブロックチェーンの領域にも及んでいる。2018年2月、本田はブロックチェーンスタートアップ「Quantstamp」への出資を決定した。

Quantstampはスマートコントラクトがブロックチェーン上に実装される前にセキュリティチェックを行う、ブロックチェーンベンチャーで、カナダ出身のリチャード・マ氏が起業した。

スマートコントラクトの数はここ1年で10倍以上に

小田啓

Quantstampのリージョナルマネジャー、小田啓氏。6月28日にPlug and Play Shibuyaで行われた、ブロックチェーンビジネスに関するイベントに登壇。

Quantstampのアジアのリージョナルマネージャーである小田啓氏は、「スマートコントラクト(契約の自動執行)」について、アイデア自体はビットコインより以前にあったと語る。

その最もわかりやすいたとえが「自動販売機」だ。

「コインを入れてボタンを押すと、缶ジュースが出てくる。コインを入れ、第三者がお金を預かり、ボタンを押すと契約が自動で成立する

スマートコントラクトは、ビットコインに次ぐ規模を持つ仮想通貨、イーサリアムが実装したことで、その可能性に多くの起業家やエンジニアが注目している。

小田氏によると、2018年6月時点で、500万件を超えるスマートコントラクトがブロックチェーン上にあり、その数はここ1年で10倍増だという。さらに、過去18カ月で約110億ドル(約1兆2000億円)がスマートコントラクトを実装した仮想通貨により、調達されているという。

そこで生まれてきたのが、セキュリティ問題だ。スマートコントラクトはソフトウェアと同じように、開発者がコーディングをしてブロックチェーン上に導入するため、潜在的に脆弱性やバグが存在するリスクがつきまとう。

スマートコントラクトのハッキング事件でもっとも有名なものの一つが、2016年に起こった「The DAO事件」だ。

コインテレグラフによると、イーサリアムを利用した非中央集権的投資ファンドプロジェクトであるThe DAOのスマートコントラクトコードの脆弱性が突かれ、約360万ETH(約65億円)が不正に送金された。

世界最大級の取引所バイナンスからも依頼

リチャード・マ

「本田圭佑を射止めた」30歳の起業家、リチャード・マ氏。カナダ出身で、コーネル大学で電気コンピュータエンジニアリングを専攻後、アルゴリズムトレーディングのプログラマーでもあったという経歴を持つ。

Quantstampはスマートコントラクトのオーディティング(ブロックチェーンに導入する前のセキュリティチェック)を行う。

脆弱性やバグなどがないかをチェック・レポートし、安全なスマートコントラクトだけをブロックチェーン上に実装する。プロセスには自動化のツールが使われているため、通常数カ月かかるオーディティングを数日で完了させることができる。

すでに複数の企業と契約を結んでおり、リチャード・マ氏によると、月に200万ドル(約2億2000万円)以上の売り上げ(レベニュー)をあげていると言う。

2018年4月、世界最大級の仮想通貨取引所、バイナンスの脆弱性が発見された。バイナンスからの依頼を受け、Quantstampは上場している約120件のトークンを約36時間でオーディティングしたという実績を持つ。

同社は、研究にも力を入れている。開発者には、イーサリアムの創設者でもあるヴィタリック・ブテリンが通っていたことでも知られるカナダのウォータールー大学の博士号を持つ研究者が8人。

関連記事:仮想通貨“イーサリアム”を創った24歳「コインチェック流出」を語る —— ヴィタリック・ブテリン直撃

シンガポール国立大学やMIT(マサチューセッツ工科大学)メディアラボ、スタンフォード大学をはじめとする大学との共同研究も行なっている。

ケイスケ・ホンダは優れたサッカー選手であると同時に、とてもシャープなビジネスパーソンだ。スタートアップ業界のことをとても気にかけているし、より良い未来をつくる人やプロジェクトに投資しようとしている」

本田圭佑を射止めた現在30歳の起業家、リチャード・マ氏は本田の印象についてそう語る。

一流のアスリートが他の分野の一流の人たちとつながり、シナジー効果を生む時代。ブロックチェーンという新しい領域にも、多くの「異彩」が流れ込んでいる。

(文・写真、西山里緒)

Popular

あわせて読みたい

BUSINESS INSIDER JAPAN PRESS RELEASE - 取材の依頼などはこちらから送付して下さい

広告のお問い合わせ・媒体資料のお申し込み