アップルCEOティム・クック。
Brendan McDermid/Reuters
- アップルは成長を続けるために、新たな巨大マーケットに参入する必要があるとグッゲンハイムのアナリストは指摘した。
- アナリストが考える巨大マーケットとは自動車マーケット。市場規模は2兆ドル(約220兆円)を超える。
- アップルはハードウエアとソフトウエアに関する専門知識など、EV開発に適した多くの強みを持っている。
アップルの幹部は、同社の次の収益源はオンラインサービス分野であり、2021年までにiCloud、Apple Musicや他の定額制サービスによる売り上げは500億ドル(約5兆5000億円)以上になるとしている。
CNNによると、実際にアップルはニュース、音楽、動画をまとめて提供するサービスを開発しており、来年はじめには提供する予定。
だが、ある銀行は、アップルは近い将来、別の巨大マーケットに参入すると見ている —— 2兆ドル(約220兆円)規模の自動車マーケットだ。
アップルの自動車開発プログラム「プロジェクト・タイタン(Project Titan)」は何度も失敗していると報じられている。だが、同社CEOティム・クック氏は、同プロジェクトは「AIプロジェクトの母体」と述べている。また、最近、グーグルの元幹部2人を引き抜いた。
公開されている資料によると、アップルはまだカリフォルニアの路上で自動運転ソフトウエアのテストを続けている。また、従業員用のシャトルバスとしてフォルクスワーゲンのバンをベースにした自動運転車を開発しているとニューヨークタイムズは伝えた。
だが、アメリカの投資銀行グッゲンハイム(Guggenheim)のアナリスト、ロバート・シーラ(Robert Cihra)氏とアミル・パテル(Amil Patel)氏は、アップルがまだ自動車開発に投資を続けていると思われることには別の理由があると指摘した。アップルの“プロダクトを重視”したビジネスモデルが自動車開発にマッチしていることだ。
2人のアナリストは、アップルはこれまで自社のコア・テクノロジーを他社にライセンスしたことはないと述べた。つまり、アップルが自動運転ソフトウエアを開発しているなら、自社の自動車に搭載されるはず。それでこそ、アップルはすべてのユーザー体験をコントロールできると彼らは結論づけた。
アナリストは6月28日(現地時間)、顧客向け文書に以下のように記した。
「自動車マーケットは、アップルの大きな次の一手となるだけの規模があるばかりでなく、テクノロジーのディスラプション(破壊、革新)も進行している。そして、以下の点で、同社のこれまでのビジネスにマッチしている。つまり、
a)すでに多くの富裕層がターゲットとなっており、商品も日用品化が進んでいる(特別なものではない)
b)優れたデザインの製品を作ることにより、業界で最も高い価格とマージン設定が可能になる
c)積極的なフィードバックを行ってくれる富裕層を取り込み、エコシステムを強化できる」
タクシーサービスを運営するのではなく、アップルが実際に自動車を開発する理由については、他にも説得力のある理由がある。
アップルはプロダクトを重視した企業であり、すでに高級車ブランドと類似した強固なブランドイメージを確立しているとグッゲンハイムのアナリストは指摘した。
また、アップルは多数の外部製造業者を使って、複雑なプロダクトを製造するノウハウを持ち、EVは環境を重視する同社の姿勢とも合致している。
アナリストは、アップルがウーバーのようなサービスの開発にも興味を持っている可能性もあると指摘した。アップルは中国の配車サービス、滴滴出行(ディディ・チューシン)に10億ドル(約1100億円)を出資、その際、クック氏は「いつか一緒に何か戦略的な取り組み」を発表するかもしれないと述べた。
アップルがどのような形で自動車マーケットに進出するかはさておき、次の成長を模索するアップルにとって自動車マーケットへの参入は「抵抗し難い」とグッゲンハイムのアナリストは見ている。
「我々はアップルの2018年の売上高は2600億ドル(約29兆円)を超えると予測している。この規模では5%の成長を維持するためでさえ、フォーチュン200の企業規模と同じくらい額の投資が不可欠となる」とアナリストは記した。
[原文:Building a car is still the best way for Apple to 'move its big needle,' say analysts (AAPL)]
(翻訳:R. Yamaguchi、編集:増田隆幸)