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アメリカ、カナダのプロサッカーリーグ「メジャーリーグサッカー(MLS)」のD.C.ユナイテッドは6月28日(現地時間)、イングランド、そしてプレミアリーグのスーパースター、ウェイン・ルーニーの加入を正式に発表した。
ルーニーは世界有数のクラブ、マンチェスター・ユナイテッドで10年以上プレーした。間もなく新しいスタジアムがオープンするD.C.ユナイテッドにとって、マーケティング上、大きなインパクトが必要だった。
だがルーニーも32歳、16歳のときからプロとしてプレーしており、その両足は酷使されてきた。選手としてのピークは明らかに過ぎている。
メジャーリーグサッカーは、もちろんプレミアリーグほどレベルは高くはない。だが、現在、リーグのイースタン・カンファレンスの下位に沈むD.C.ユナイテッドに、ルーニーが貢献できるかどうかはまだ分からない。
今回のルーニーの移籍、つまりピークを過ぎた実力とマーケティング上の知名度のトレードオフは、MLSにとって初めてのことではない。
MLSは全盛期を過ぎた選手を高額な契約で獲得することが多く、しばしば“リタイアメント・リーグ”と批判されている。選手たちはアメリカでの贅沢なバケーションを楽しむために、MLSと契約しているのかもしれない。
だが、公正に言うなら、何人かはフィールドの内外で大きな成功を収めた。
MLSにやってきたスター選手たちを見てみよう。
デビッド・ベッカム
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MLSに移籍した最初の大物選手がベッカム。MLSはサラリーキャップ(年俸総額の上限制度)を設けているが、ベッカムと契約するために特別指定選手制度が設けられた。そのため、この制度は「ベッカム・ルール」と呼ばれる。
ロサンゼルス・ギャラクシーへの移籍当初、移籍金問題などで批判を浴びたものの、ベッカムはチームを2度のMLSカップとサポーターズ・シールド(レギュラーシーズン1位)の獲得に導いた。
またベッカムはMLSの人気拡大にも貢献した。
ティエリ・アンリ
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フランスの伝説的プレーヤーであり、アーセナルのストライカーだったアンリは2010年、ニューヨーク・レッドブルズに加入。
ベッカムほどの活躍はできなかったが、それでも2013年にはサポーターズ・シールドの獲得に貢献、ベストイレブンに3度選出された。
ロビー・キーン
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キャリア後半でのMLS移籍で最も成功した選手の1人。キーンは2011年のシーズン途中でロサンゼルス・ギャラクシーに加入した。
2度のMLSカップ獲得に貢献し、ベストイレブンには4度選出、2014年にはMVPに輝いた。
ジャーメイン・デフォー
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デフォーは今回紹介した選手の中では、MLSの在籍期間が最も短い。2014年にトロントFCに加入したが、1シーズンで去った。
ダビド・ビジャ
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ニューヨーク・シティFCは2015年からMLSに参入、1年目から躍進を期待して獲得した大物選手の1人がビジャ。実際、同FCが獲得した、他の大物選手に比べて活躍を見せた。
ビジャは2016年にはMVPに輝き、ベストイレブンに2度選ばれている。まだ同FCでプレーしている。
カカ
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FIFA最優秀選手賞とバロンドール(ヨーロッパ年間最優秀選手賞)に輝いたカカは、2014年にオーランド・シティSCと契約、MLS史上、最も高給な選手となった。
2015年から3シーズンを過ごしたが、チームは満足した結果を残せなかった。2017年に引退。
セバスティアン・ジョヴィンコ
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全盛期にMLSに移籍した数少ない選手。かつてユベントスに在籍していたジョヴィンコは、MLSで最も成功した選手。2015年にはMVPに輝き、チームをサポーターズ・シールドとMLSカップの2冠に導いた。
アンドレア・ピルロ
Alex Menendez/Getty Images
イタリア屈指のミッドフィルダー、ピルロは2015年にニューヨーク・シティFCに移籍したが、MLSのプレースタイルに合わせるのに苦労した。
ロイターによると、かつて「フィジカルが重視され、たくさん走った。走り回るばかりで、私にとっては(サッカーを)プレーする機会は少なかった」と語った。
スティーヴン・ジェラード
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リバプールのスター、ジェラードはプレミアリーグ2014-15シーズンの終了後、ロサンゼルス・ギャラクシーに移籍。MLSは2015年のオールスターゲームに、まだMLSでプレーしていないジェラードを選出したため議論となった。
ジェラードのパフォーマンスはファンの期待に応えるものではなかった。また彼は長い移動距離とスタジアムのコンディションに苦しんだ。ギャラクシーで1年半プレーした後、現役を引退。
ディディエ・ドログバ
Vaughn Ridley/Getty Images
2015年夏、シーズン途中でモントリオール・インパクトに加入。最初のゲームでハットトリックを記録したのは、MLSではドグロバが初めて。最初の半年は素晴らしい活躍を見せたが、2年目のシーズンはあまり振るわず、MLSを去った。
だが、ドグロバはまだアメリカでプレーを続けている。MLSの下部リーグ的な存在であるUSLのフェニックス・ライジング(Phoenix Rising)のプレーヤー兼共同オーナーとなっている。
フランク・ランパード
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ランパードがMLSで最も存在感を示したのは、おそらくフィールドではない。ランパードは、ニューヨークシティFCがMLSに参加した2015年のシーズン当初からチームに加わることが期待されていた。だが、同FCの親会社であるマンチェスター・シティは、プレミアリーグ2014-15シーズンの終了までランパードがチームを離れることを拒否した。
この出来事は、シーズンチケットを購入したファンの怒りを買い、また同FCがマンチェスターの下部組織に過ぎないのではないかという疑念を生んだ。
ランパードは最終的にシーズン途中からMLSに加わったが、パフォーマンスは振るわなかった。2016年のシーズン終了とともに現役引退。
アシュリー・コール
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コールは、イギリスが誇る最高の左サイドバック。だが、MLSに移籍したときは35歳。フィールドにほとんどインパクトは残せなかった。
バスティアン・シュヴァインシュタイガー
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ワールドカップの優勝経験もあり、長くバイエルン・ミュンヘンの中心選手だったシュヴァインシュタイガーは2017年、シカゴ・ファイアーに移籍。
MLSのオールスターに選ばれ、チームを5年ぶりのMLSカップ・プレーオフに導いた。
ズラタン・イブラヒモビッチ
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36歳、スウェーデンの伝説的プレーヤーは今年3月、ロサンゼルス・ギャラクシーに移籍。現在まで11試合に出場し、7得点をあげる活躍を見せている。だがチームは現在、ウエスタン・カンファレンスのプレーオフ出場圏外に沈んでいる。
カルロス・ベラ
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W杯ロシア大会にメキシコ代表として参加、また長く、リーガ・エスパニョーラのレアル・ソシエダで活躍したベラは、2018年にMLSに加入したロサンゼルスFCに移籍した。現在までに7ゴール5アシストを記録している。
(翻訳、編集:増田隆幸)