ソフトバンクが「ホテルIoT」の共同開発でhandy Japanに出資した理由 —— 狙いは次世代観光インフラ

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左から、handy Japanの勝瀬博則CEO、シンガポールを中心にhandy事業を展開する本社Mango InternationalのTerence Kwok CEO、ソフトバンクの宮内謙社長。

ソフトバンクが、ホテル設置型のスマートフォンレンタル事業を展開するhandy Japanと、「ホテルIoT」など次世代観光インフラの開発・推進でガッチリ手を組んだ。

ソフトバンクは2018年7月2日、「handy」の日本法人、handy Japan Holdings Company Limited、およびその事業会社handy Japanと資本・業務提携を締結。hJH社に出資すると発表した。

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すでに東京地域で60%、大阪でも40%のホテルにhandyの設置が決まっているという。なお、handy Japanの親会社にあたるhJH社は、シャープとMongo社の合弁会社だ。

handy Japanは2017年7月から国内展開を始めたばかりの比較的新しい企業。すでに2018年中に国内約1700のホテル、約24万室への端末導入を予定する、急成長中のサービスになっている。ソフトバンクの宮内謙社長は、出資を決めた背景を、

「(ソフトバンクは)単に通信インフラを提供するだけではなく、技術、セールスパワーも提供する。(勝瀬CEOが)1年でここまでいけたのだから、一緒になると、一気に10倍くらい(いけるのでは)。この辺が一緒にやろうと言った理由。handy Japanのビジネスは、非常にティピカル(独特)なものだと思っている」「非常に素晴らしいビジネスモデルであることは事実」

と、ビジネスモデルの質の高さと成長速度を評価しての出資判断だったと語る。

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業務提携でめざす観光インフラが実現された世界を語るソフトバンク宮内社長。

出資額は非公表ながら、「(記者発表の)この場に宮内さんが来ていることを考えて非常に重要な、大規模な出資だと(考えてほしい)」(handy Japanの勝瀬博則CEO)と、一定のボリュームを持った出資規模であることをうかがわせる。質疑応答に応えた宮内社長によると、出資比率は「2〜3割に満たない程度」だという。

旅行者向けのホテルIoTなどを共同開発する

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3つの共同開発領域。それぞれからデータ収集もし、AIを組み合わせたビッグデータ解析によるビジネス化も視野に入れる。

ソフトバンクとhandyは3つの「共同開発領域」で、新しいビジネスをつくっていく。

1つめは、handyを客室の鍵代わりに使ったり、室内リモコン、受付レスのチェックアウトを可能にする「ホテルIoT」、2つめは旅行者向けのモバイル決済サービス等をhandy端末を通じて提供する「トラベルエージェント」、3つめはhandy端末への情報配信やVRコンテンツ配信や旅に必要な情報提供を行う「メディア」だ。

ホテルIoT実例:handyで開場、クラウドで集中管理するスマートロック

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VRコンテンツ:簡易ゴーグルを使い、次世代handy端末で対応

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VRコンテンツは、厚紙にレンズがついた、簡易タイプのVRゴーグルで今秋から展開。ただし現行のhandy端末では性能的にVRコンテンツが扱えないため、次世代端末で対応。現行機種はシャープ製だが、次世代機のメーカーは現時点では非公表。

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簡易ゴーグルに慣れていない旅行客向けに多言語で使い方を説明したガイドが付く。

特にホテルIoTの実現には、ホテル側の機材更新や投資に左右されるため、どこまでスピード感を持った展開ができるか気になるところだ。

たとえばスマートロック1つとっても、ホテル1棟で少なくとも数十〜数百室への同時導入が必要になり、ホテルの負担は決して小さくない。そのため、ホテルの機材更新のタイミングに左右される性質がある。

勝瀬CEOは、「今後3年で10万室くらいの新たなホテルができる。handyのコストだと(新しいホテルでは有線設備より)ワイヤレスの方が安くなる」と、新規ホテルに関しては、コストを抑える形で導入メリットの訴求ができるという。また既存ホテルに関しては、たとえば客室電話と並列して設置することで、部分的な導入から初めて、長期的に対応範囲を広げることも可能だという見方を示した。

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「メディアとしてのhandy」はイメージしづらい部分もあるが、24万客室の場合、年間にして8600万人の宿泊客が利用するポテンシャルがあるという。

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メディア、情報伝達手段としての一例。先日の関西の地震では、handy端末向けに地震情報を配信、多言語ポータルに誘導して観光客に情報を知らせた。送られた通知の50%ほどが開封された実績があるという。

無料テザリング開放を起爆剤に、handyの一層の利用者拡大ねらう

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今回の業務提携発表の場でhandy Japanの勝瀬CEOは、国内約24万室に設置する全handy端末のWiFiテザリング機能の開放を発表した。

handy側は「全handy 無料テザリング化へ」をうたうが、実際にはホテル側が「テザリング開放」に同意した場合のみ適用され、またホテル側に一定のコスト負担増があるため、厳密には「単なる無料・無条件でのテザリング開放」というわけではない。

ただ、利用者にとってhandyがモバイルWiFi代わりに使えるというのは、利便性が上がるのは間違いない。勝瀬CEOによると、現時点で国内のhandyの利用者比率(アクティブ率)は、およそ60〜65%だという。

ホテルIoTとスマートな旅行者決済を提供していく

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ソフトバンク宮内社長が説明したソフトバンクとhandyのシナジー。共同開発する3つの柱それぞれに、ソフトバンクのリソースを投下する。将来的にはタクシー配車や宅配サービスも提供する意向だ。

handyのビジネスモデルは、ユニークだ。ホテルへのオーダー、室内機器の操作、インターネット利用、周辺のイベントチケット手配といった「旅行者の、ホテルと旅行にまつわるアクション」の入り口すべてをhandyに集約して、端末上でさまざまな手数料や広告ビジネスを展開していくものだ。

インターネットのインフラと、Yahoo!をはじめとする情報や決済に長けたグループ会社をもち、大規模なSEと営業部隊を持つソフトバンクとのシナジー効果は確かに高そうだ。

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handyはスマホではなく、IoTプラットフォームだ、と、さながら自社事業のように宮内社長は説明する。会見直前の着席時も親しげに勝瀬CEOと会話する様子も見られ、今回の提携が「お気に入り」であるところがうかがえる。

ソフトバンク宮内社長は、新たなサービスや機能に関して、ソフトバンク傘下のホテルマイステイズを使って、handyの新サービス展開前のテスト導入・検証を行い、導入効果の高いサービスから順次展開していく、と説明した。

(文、写真・伊藤有)

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