6月、史上初の米朝首脳会談がシンガポールで開催された。
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- アメリカのトランプ大統領と北朝鮮の金正恩朝鮮労働党委員長は、6月に開催された米朝首脳会談の後に出された共同声明で、「完全なる非核化」に向けて取り組むことを合意した。
- しかし、その表現はあいまいで、衛星写真は北朝鮮が核開発を続けている可能性を示唆している。
- 非核化の合意を守らせようと、トランプ政権は北朝鮮に対し、2度目の米朝首脳会談を9月に開催することを提案しているようだ。
アメリカは、2度目の米朝首脳会談を9月にニューヨーク市で開催しようとスケジュール調整に入ったようだ。シンガポールで6月に開かれた史上初の首脳会談の合意内容を前進させたい考えだ。
2度目の首脳会談は、各国の首脳らがニューヨークに集まる国連総会の時期に合わせて行われるだろうと、政治ニュース専門サイト「アクシオス(Axios)」が報じた。2018年の国連総会の会期は、9月18日~30日の予定。
トランプ大統領と金正恩委員長は、6月12日の首脳会談の後、朝鮮半島の「完全なる非核化」に向け取り組むことで合意したが、専門家らはその表現のあいまいさと、アメリカの求める「完全で検証可能かつ不可逆的な核廃棄(CVID)」が明記されていないことを批判していた。
ジョン・ボルトン大統領補佐官(国家安全保障問題担当)は1日、アメリカが北朝鮮に対し、1年以内に化学・生物・核の弾道ミサイルを廃棄させる計画だと語った。
このスケジュールに従うインセンティブとして、トランプ大統領は北朝鮮に対し、ニューヨークでの2度目の首脳会談をちらつかせる可能性があると、ホワイトハウスの関係者はアクシオスに語った。
6月21日に撮影された北朝鮮・寧辺にある核施設の衛星写真は、北朝鮮が今も核開発を続けている可能性を示唆している。
Airbus Defense and Space and 38 North
しかし、北朝鮮の専門家の中には、トランプ大統領が目指す核廃棄を履行する平壌の意思を疑う声もある。
シンガポールでの首脳会談から9日後に撮影された衛星写真は、北朝鮮がその核施設でインフラ整備を続けていることを示している。
アメリカの諜報機関の高官は6月下旬、平壌は「施設の数、武器の数、ミサイルの数で我々をだまし続けている」と述べた。
戦略国際問題研究所(CSIS)の韓国部長ビクター・チャ(Victor Cha)氏はアクシオスに対し、トランプ政権は「完全な履行に向けたコミットメントを得る必要がある」と言い、北朝鮮に約束を守らせるため、専門家を北朝鮮に送って「施設を封鎖し、カメラを設置」すべきだと語った。
2017年9月、国連総会で演説するトランプ大統領。金正恩委員長を「ロケットマン」と呼んだ。
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金正恩氏が9月にニューヨークを訪れることになれば、北朝鮮のトップとしては最も長い距離を移動することになる。
国連総会に北朝鮮の代表を送ったことはあるが、金正恩委員長自身が出席したことはこれまで一度もない。2017年の総会では、李容浩(リ・ヨンホ)外相がトランプ大統領を「精神的に錯乱した、誇大妄想で満たされた人物」と呼び、北朝鮮によるアメリカに対する核攻撃を「さらに不可避なものにした」と述べた。
2017年の国連総会は、トランプ大統領が初めて金正恩委員長を「ロケットマン」と呼んだ場所でもあり、これを聞いた金正恩委員長はトランプ大統領を「精神が錯乱した、アメリカの老いぼれ」と呼んでやり返した。
(翻訳、編集:山口佳美)