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- アマゾンによるオンライン薬局「ピルパック(PillPack)」の買収は、65歳以上の顧客に対するアマゾンの魅力を増しそうだ。
- モルガン・スタンレーのアナリストたちは、この買収によってAmazonプライムの市場へのリーチが拡大し、利益率も上がる可能性があると考えている。
- アマゾンのヘルスケアと処方薬への投資は、同社の収益と粗利益を増やすだろう。
高齢化が急速に進むアメリカでは、新たなターゲットとなる年齢層が現れた。高齢者だ。
メディケア(注:アメリカの高齢者向け医療保険制度)の要件を満たす65歳以上の患者という新たな成長著しい市場をめぐっては、ウォルマートとアマゾンの戦いがここ数カ月、激しさを増していた。モルガン・スタンレーのアナリストらが2日(現地時間)に出した顧客向けのメモによると、アマゾンのピルパック買収はこの戦いを一歩リードすることになりそうだ。
2017年11月、同社のアナリストらは「高齢層でプライム会員率は未だ低い……これはアマゾンにとって、医薬品分野がアメリカの55歳以上、最大8000万人の消費者に切り込むさらなるチャンスとなることを意味する」
モルガン・スタンレーの調査によると、Amazonプライムの加入率は55歳以上の顧客で最も低い。同報告書によると、平均的な65歳以上のアメリカ人は、1年に37回前後の薬の処方を受けているという。メディケアにも対応しているピルパックの買収は、こうした市場に取り組み、プライム会員を増やす可能性がある。会員が増えれば、利益も増える。そして、この動きは市販の医薬品分野でのアマゾンの攻勢をさらに強めるだろう。
Morgan Stanley
伝統的な医薬品の小売りモデルに対し、ピルパックのようなサービスにテクノロジーを取り入れた企業の市場シェアは1%以下だ。比較的新しいサービスであり、顧客基盤を築くには時間がかかることが、その主な原因だ。
実店舗とオンライン、それぞれの薬局の販売効率はほぼ同じだが、 オンライン薬局の方が営業コストが低く、金銭的な投資も少なくて済む。つまり、オンライン薬局の方が経営が簡単でスムーズだ。
自然食料品スーパー大手のホールフーズを買収したアマゾンは、まだ薬局を持っていないが、今後、実店舗を持つ伝統的なモデルとテクノロジーを活用したハイブリッド・モデルを掛け合わせたアプローチへ転換することもあり得る。
ヘルスケア分野への投資は、アマゾンの核であるアメリカの小売り有効市場を収益、粗利益の両面で拡大する。処方薬の取り扱いを始めることで、アマゾンはさらにその収益、粗利益を増やしていくだろう。
(翻訳、編集:山口佳美)