今日の記事では、SPEEDAやNewsPicksを提供するユーザベースを取り上げていきたいと思います。
ユーザベースは、マザーズに上場した後も素晴らしいペースで成長を続け、時価総額が1,000億円前後になるまで成長しています。
売上はYoY+50%以上の成長
まず初めに、売上とEBITDAを見てみましょう。
売上はYoY+53%の14.8億円まで増えています。
EBITDAはYoY+58%の2.3億円と、こちらも大きく伸びていることが分かります。ユーザベースは、BtoBビジネスであるSPEEDAと、BtoCビジネスであるNewsPicksの、二つの事業を展開しています。今日はそれぞれのビジネスのユニットエコノミクスを、簡単に因数分解していきたいと思います。
SPEEDA事業の因数分解とユニットエコノミクス
初めにSPEEDA事業を見ていきましょう。
契約ID数は、2018年の3月末時点で2,135社まで増えています。
セグメント売上は、四半期あたり8.8億円となっています。
1IDあたりの月間ARPU(Average Revenue Per User=一契約あたりの売り上げ)を計算すると、135,831円となります。
SPEEDAというBtoBのサービスは、1 ID 当たり月間約13万円を売上げる、継続課金SaaSモデルになっているということです。
ここまでは非常にシンプルな話なわけですが、このビジネスが優れているのは、契約者数のグラフにあるように、グラフが直線の右肩上がりではなく、成長スピードを加速しながらグラフが上がっていっている点です。
成長スピードは通常、規模が大きくなれば遅くなります。グラフが右肩上がりであったとしても、グラフの傾きが徐々に寝ていくのが普通です。SPEEDAに関してはグラフの傾きが寝ていくのではなく、逆に右肩上がりに加速しているのが、この事業の凄さを物語っていると言えるでしょう。
解約率などは公開されていませんが、恐らくこれだけ傾きが上がっているということは、解約率が相当低いと想定されます。
また現時点では、大半が日本国内のクライアントであり、海外に関してはまだまだ伸びしろが大きいという点もプラスなのではないでしょうか。
NewsPicks事業の因数分解とユニットエコノミクス
続いてNewsPicks事業を見ていきましょう。NewsPicksは、大きく分けると課金ビジネスと広告ビジネスの二つが混在しているため、それぞれのユニットエコノミクスを見てみます。
売上ですが、内訳は公開されていませんが、広告と有料課金それぞれ約3億円ずつとグラフから読み取れます。
初めに課金ビジネスですが、課金ユーザーが64,336人まで増えています。課金ARPUを計算すると、月1,554円となります。
有料課金ユーザー数のグラフを見ると、こちらもSPEEDAのケースと同様に、グラフの傾きが大きくなっているように見えます。
つまりユーザベースにおいては、BtoCの有料課金者数においても成長しているだけではなく、成長のスピードが速くなっていると言えるでしょう。
ちなみに、日経新聞の電子版の有料会員数は約60万人と言われていますので、NewsPicksは有料会員数で見ると日経新聞の約1/10の規模まで来ていると言えるでしょう。
NewSPicksアカデミアなど、1ユーザーからの売上を大きくする施策を次々と展開しており、まだまだ大きな伸びしろが期待できるのではないでしょうか。
広告ビジネスも見てみましょう。広告ビジネスの場合、対象となるユーザー数は課金ユーザーだけではなく、全ユーザーとなります。
2017年末時点で、会員ユーザー数が300万人を突破したというアナウンスがありましたので、これに基づいて計算すると、広告ARPUは月33.33円となります。
売上の伸びを見ると、課金ビジネスほどは大きく成長しているようには見えませんが、無料会員であっても広告でマネタイズができるというモデルは、ロングタームで見るとSpotifyのように強みになっていく可能性が十分あるのではないかと考えられます。
NewsPicksのアプリを使っていてくれる限りにおいては、無料会員であっても一か月当たり33円ずつ売上が上がっていくことになりますので、ゆっくり時間をかけて有料会員に転換していくような政策は打てるということになるでしょう。
まとめ
以上を簡単にまとめるとこのようになります。
SPEEDA 契約ID数: 2,135社 売上: 8.8億円/Q 月間ARPU: 135,831円 成長スピードが加速中(解約率が低いと想定される) 海外での伸びしろがまだまだある
NEWSPICKS(有料課金) 会員数: 64,336人 売上: 約3億円/Q 月間課金ARPU: 1,554円 成長スピードが加速中 ARPUを上げるための取り組み(アカデミアなど)
NEWSPICKS(広告) 会員数: 約300万人 売上: 約3億円/Q 月間広告ARPU: 33.33円
個人的に一番驚いたのは、SPEEDAとNewsPicksの有料課金モデルにおいて、成長のスピードが以前よりもさらに速くなっているという点に尽きます。
これだけの規模になってもこのように成長の加速度が増えるというのは、あまり見かけることがない事例です。
この成長スピードはどこまで続くのか、今後も注目していきたいと思います。
シバタナオキ:SearchMan共同創業者。2009年、東京大学工学系研究科博士課程修了。楽天執行役員、東京大学工学系研究科助教、2009年からスタンフォード大学客員研究員。2011年にシリコンバレーでSearchManを創業。noteで「決算が読めるようになるノート」を連載中。