IIJと平田機工が協業して生まれたソリューション「Cognitive Factory」。
生産性の向上が日本全体で求められるなか、国内の多くの工場では「IoT導入」の波が高まっている。
インターネットイニシアティブ(以下、IIJ)と平田機工は、ものづくりの現場にIoTの導入を促すソリューション「Cognitive Factory」を発表し、2018年9月1日に商業化を始める。
IIJ プロフェッショナルサービス第二本部 本部長の山口新二氏。
Cognitive Factoryの特徴は、IIJと平田機工が企画や導入、導入後の運用支援、改善業務などをワンストップで提供する。IIJはネットワークやクラウド、セキュリティーなどの技術、平田機工は生産機器メーカーとして持つ現場への理解やハードウェアのノウハウをそれぞれ活かす。
同事業を担当するIIJの山口新二氏は「一般的な場合、例えばセンサー、クラウド、ネットワークなどそれぞれ別の会社が提供し、導入する企業がハンドリングをする必要があった。我々はコンサルティングから導入、運用までトータルで行う」と語る。
導入企業によって4段階のステップでIoTの導入を促す
両社は導入を検討する企業に対して、個別に提案や企画を行っていくとしているが、一般的に以下の4つのステップを想定しているという。
生産活動の効率化を図る「Step.1:つながる」
Step.1の導入で円滑化する想定シーン。
人と人、人とモノをつなぐコミュニケーション環境の構築。例えば、Microsoft Teamなどのコミュニケーションツールを導入すれば、従業員同士の意思疎通の活性化やセンサーで検知した異常な動作を知らせることができる。
導入金額の目安は、コミュニケーション環境の利用者が5名、※ポン付けセンサー5台、ネットワークカメラ5台の場合、初期費用が200万円、月額料金が20万円から。
※ポン付けセンサーとは:
安価かつ簡単に設置できるセンサーやスイッチなどのこと。手軽な分、耐久性や計測精度は、長期間利用が求められるセンサー類と比べて落ちる。
工場の情報管理を自動にする「Step.2:まとめる」
Step.2では工場の基本機能を、ダッシュボードなど1カ所で管理・確認できるのがポイント。
Step.1がある程度形が準備されているパッケージプランとするならば、Step.2はオーダーメイドの導入プランだ。
生産管理、トレーサビリティ(生産情報の収集、管理など)、品質管理、設備管理、保全管理といった5つの工場の基本機能を持ち、収集した情報をダッシュボードで“見える化”する。
導入金額の目安は規模などにも左右されるが、初期費用は最低でも800万円、月額料金は30万円からとなる。
開発中の「Step.3:活用する/Step.4:自動最適化」
機械の故障を予測する「AI予兆検知」も、遠くない将来に展開される見通し。
Step.3とStep.4に関しては現在開発中の段階で、例えば、工場の機械が故障する予兆をAIが事前に検知する仕組みを検討しているという。平田機工はすでに自社の設備において研究・開発を進めており、同社の神田橋嗣充氏は「単純な構造の機械であれば、予兆を検知できる」と実用性を語った。
Step.3ではAIが検知し通知を行い、担当者が点検をしたりするなどの対処を行なう想定だが、よりAIの精度が上がりStep.4まで進められればAI自身が何らかの対処を行なう未来が予想されている。
両社はStep.3とStep.4の提供時期について、2019年以降に順次展開していくとしている。
IoT分野で異業種同士がタッグを組む理由
IIJと平田機工は、2017年10月19日にスマートファクトリー分野での協業を発表している。Cognitive Factoryの提供は、協業開始から初めてのソリューションとなる。
平田機工 グローバル事業本部 IoTソリューショングループ 次長の神田橋嗣充氏。
平田機工の神田橋氏は、今回の取り組みの狙いについて、「未来の工場づくりに明るい話題を発していきたいという気持ちが強い」(神田橋氏)と話す。グローバルでは米自動車メーカーのGM(General Motors)や英家電メーカーのダイソンなどの大手企業のサプライヤーも務める同社だが、日本の一製造事業者として、業界に立ちこめる閉塞感を打破したい意図があるようだ。
一方、IIJはIoT分野へのソリューション展開をすでに行っており、明確な契約回線数は非開示だが、同社広報は「IoT利用の回線数は順調に延びている」と話す。
今回の取り組みの狙いについて、IIJの山口氏は「IoTの普及には、それぞれの業種・業態を含めた形で提供していかないといけない。汎用的なものも続けていくが、IoTを専門的な領域に広げるための第1歩となる」と話している。
両社は、具体的な販売目標について、2019年3月末までに10件の受注、将来的には年間5億円の売り上げを目指していくとしている。
(文、撮影・小林優多郎)