あの金融庁が上司改革!困った上司11項目作成「曖昧発注」「人のせい」——ただし、局長以上は対象外

うまくいかないと部下のせいにする。考えない。残業が長い部下をほめる——。

金融庁が発表した組織改革の方針の中に、11項目のダメな上司像が描かれている。困った上司の姿は、官民の境目なく多くの組織に当てはまりそうだ。

金融庁

撮影・今村拓馬

金融庁は2018年7月4日、組織改革の方針を発表した。人事やガバナンス、金融庁の将来像など多岐にわたる内容だが、その中に、局長、課長・室長になる職員に必要な能力要件が含まれている。

課長・室長については「現場の責任者としての人格」や「適時・的確な判断力」といった前向きな要件に加えて、こんな人は「バツ印」だとの考え方も示している。

管理職を対象にアンケートを実施し、外部の人事に詳しいコンサルタントらの意見を聞いた上で要件を整理したという。

金融庁の担当者は「こういった人は本来、適性がないということで、すでに職員に周知している。将来、管理職になりたいという人は、自分を見つめ直していただきたい」と話す。

金融庁が整理した11項目のダメな上司像は次のとおりだ。


1. 「できない理由」や消極的な権限争いに終始する

仕事で霞が関の省庁と関わったことのある人の多くが、「ウチの担当ではありません」という対応を受けたことがあるだろう。たらい回しにされたうえ、最終的に別の省庁に回されることも少なくない。消極的権限争いは、「ウチの権限ではない」と仕事を押し付け合うことを示す。福島第一原発の事故の際にも問題になった言葉だ。

2. リスクを取らずに人に押しつける。上手くいかなかったら人のせいにする

失敗は部下のせいだが、成功は自分の手柄という上司は、官民を問わず少なくない。金融庁が示している前向きな上司像は、困難な課題や都合の悪い現実から逃げずに、「自分ごと」として課題に取り組む人だ。

3. 部下を育てることと、甘やかし・パワハラとの区別がつかない

部下が成長できる環境をつくるのは、上司の仕事だ。金融庁は課長・室長に対して、自由な雰囲気と、結果を求める厳しさ、緊張感を両立させることを求めている。

4. 頭ごなしに叱りつけ、相談や悪い情報を上げられない雰囲気を作る

都合の悪い情報を耳にすると怒り出す上司には、いい情報も集まらない。金融庁は、具体的なアドバイスをして、部下の能力を引き出す上司像を描いている。

5. 仕事を自分で抱え込み、部下の成長を促さない

上司がどこまで権限を部下に委ねるかは、さまざまな組織に共通する、難しくて重要な課題なのだろう。

6. 「あいまい発注」「趣味的な発注」「無駄詰め」により部下の作業を増やす

上司から仕事の発注を受けるときも、仕事の中身についてギリギリと詰められるときも、「なぜ今、この仕事が必要か」「なぜ詰められているのか」が明確だと、部下としては仕事がしやすそうだ。金融庁は「物事の優先順位を付け、明確な指示のもと、効率的かつスピード感を持って仕事を進める」上司を求めている。

7. 成果にかかわらず残業時間の長さをほめる。声かけのみで具体的な行動を起こさない

政権は「働き方改革」を掲げているが、霞が関の省庁では長時間労働が深刻な課題となっている。国会対応の待機時間を減らせば、残業代を102億円削減できるとの試算もある。

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8. 政策立案にしか関心がなく、実行のプロセスを軽視する

民間企業の仕事でも、計画づくり以上に、実行のプロセスが難しくて、大変だ。金融庁は課長・室長に対して、「障害があっても粘り強く関係者を説得し、政策を実現させる」ことを求めている。

9. 部下からの「振り付け」がないと動けない

金融庁が描いているのは、「自ら政策判断や内外との交渉の最前線に立つ」上司の姿だ。

10. 部下から上がってきたペーパーを直してばかりで、部下の仕事に付加価値を付けられない

部下から情報が届くのを待っているだけでなく、自分から率先してネットワークを構築し、情報を収集しないと、部下のペーパーを「直すだけ」の上司になってしまう。

11. 何も考えずに「脊髄反射」(せきずいはんしゃ)的に行動し、部下を混乱させる

噛み砕くとすれば、「課長、もうちょっと考えてから動いてください!」ということか。これから起こりうる事態を想定しながら、仕事の段取りができる、段取り力の高い人材を求めているようだ。


ちなみに、局長に昇進する職員の人物像については、「金融庁の顔としての人格」「最終判断を下す決断力」といった前向きな要件は示されているものの、「バツ印」の要件は示されていない。

霞が関の省庁では、局長はかなり偉い。今回の上司像をまとめた担当者たちが局長についてはバツ印を示さなかった背景に、最高幹部への配慮や忖度が働かなかったのかと疑うのは、ちょっと考えすぎだろうか。

(文・小島寛明)

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