シェアハウスは儲からない。スルガ銀行融資の事業破綻、悪いのは業者か銀行か

女性専用シェアハウス「かぼちゃの馬車」を運営するスマートデイズの破綻が大きな話題になっている。報道の焦点は、一連の取り引きに関与したスルガ銀行など金融機関の詐欺的な行為に集まっているようだが、実はそうした不正の要素がなかったとしても、本件のビジネスモデルはもともと破綻につながりやすいものだった

スルガ銀行

スルガ銀行など金融機関の詐欺的行為に世間の関心は集まっているようだが……。

Creative Commons By kamonegi101.3 - 自身で撮影, CC 表示-継承 3.0

このビジネスモデルは「サブリース」と呼ばれ、アパートのような事業用住宅(収益を得ることを目的に所有・利用されるもの)の運営に用いられてきた。シェアリングエコノミーを標榜する若い方々からは怒られると思うが、シェアハウスも運営者から見れば事業用住宅の一つにすぎないのである。

利回りが膨らんで見える「カラクリ」

具体的には、次のような仕組みだ。

まず、サブリース業者が自ら建築(あるいは購入を斡旋)した事業用住宅を、投資家が購入する。投資家の所有となったその住宅を、サブリース業者は一括して借り上げ、入居者に転貸する。

シェアハウスのビジネスモデル

全ての部屋が入居者で埋まらないこともあるし、家賃が変動する可能性もあるが、サブリース業者はそうした状況にかかわらず、一定額(例えば、満室時の標準的な家賃の80%から経費を差し引いた金額など)の家賃を投資家に支払う。いわゆる家賃保証だ。

投資家の多くは、事業用住宅を購入する資金のほとんど(少額の自己資金を除く)を銀行などの金融機関から借り入れる。そしてここが最初の「ミソ」だ。普通に考えれば、投資額は(銀行からの借り入れも含めた)住宅の「購入資金全体」になりそうなものだが、投資家が持ち出しで支払うのは少額の自己資金だけなので、これが投資の「元本」とされたのである。

サブリース業者が保証する家賃収入から、銀行への返済分を差し引いた残りが、投資家にとって正味の収入となるわけだが、上で説明したように投資元本がそもそも少額なので、意外と大きな利回りに見えてしまう(地主が相続対策に使うアパート投資と違って、節税効果は微々たるものなのでここでは考慮しない)。

シェアハウスはもともと儲からないビジネス

こうしたビジネスモデルを成り立たせるには、投資家が銀行から借りた購入資金の返済が家賃収入で十分賄えるように、①事業用住宅の値段を下げる、②1部屋当たりの面積をできるだけ小さくして部屋数を多くする、といった工夫が欠かせない。

②が大切なのは、家賃は面積に正比例するわけではないから、部屋数を増やせば住宅全体からの収入が増える上に、空室が出たときにサブリース業者側の負担が少なくて済むからである。そして、シェアハウスが注目された理由もここにある。

シェアハウスは、①中古住宅やアパートを改装して転用するので新築より安くあがる、②キッチンやバス・トイレが共用なので、部屋数を多くすることができる。この2点において、サブリース事業に向いていると言える。

①については、人口減少を背景に一戸建ての空家が激増していることや、近年のアパート新築ラッシュを受けて築年数の経過したアパートを安く手放すケースが増えたことも、背景にあったのではないか。

シェアハウス

新たな出会いや情報収集の場として人気のシェアハウスだが、サブリース業者にとっては事業用住宅の一つでしかない。

Shutterstock

ただし、シェアハウスの家賃は一般的なアパートに比べてかなり低めの設定なので、そもそもさほど大きな収入は期待できない。しかも、アパートのように単に住まわせるだけではなく、シェアリング環境をプロデュースする必要があるため、手間と経費がかかる。入居者の交代に伴う空室負担もそれなりにある。したがって、サブリース業者にとってあまり収益性の高い事業とは言えない

実は、アパートのサブリースを手がける業者も、それだけでは収支トントンか、むしろ赤字のところが少なくない。しかしアパートの場合、サブリース業者やその親会社・関連会社は建設会社であることが多い。要するに、アパートの建築で儲けるので、グループ全体としては収支のツジツマが合うのである。

これに対し、シェアハウスは中古物件の改装が主体なので、建築請負にかかる収入は期待できない。ただし、中古物件の売買を仲介すると、売り主と買い主の双方から3%を上限に媒介手数料を取ることができる。これが今回のビジネスモデルのもう一つの「ミソ」である。

問題のサブリース業者、スマートデイズは、本来なら容易に買い手の見つからない中古住宅・アパートを、「トレンディー」なシェアハウスとして魅力的な投資物件に仕立て、ゼロ金利時代でお金を貸したくて仕方ない銀行と連携して、審査が通りやすいサラリーマン層(の投資家)に販売し、自社や関連会社が仲介手数料収入を得ることを中核的な収益モデルとしていたのではないか。

銀行が際限なく融資できた理由

シェアハウス向きの古民家

人口減少は続き、シェアハウスに適した地方や郊外の中古物件はこれからも数多く出てくる。不動産価格が高止まりしている足元の状況も、いずれは下落に向かうだろう。

REUTERS/Thomas Peter

このビジネスモデルの抱える最大の問題は、仲介という「フロービジネス」で儲けるために、シェアハウスの運営という長く続く儲からない「ストックビジネス」を引き受けるので、新規物件をどんどん取り続けていないと、サブリース業者の収益性が悪化する点にある。

もっとも、すでに述べたように、割安な中古物件はいくらでもある。また、シェアハウス運営という出口もなかなか魅力的だ。低金利のこの時代、少額の手持ち資金で小金が稼げるなら、やりたいと手を挙げる投資家もいることだろう。

ただ、そうした投資家にお金を貸す銀行があるだろうか。通常ならここでブレーキがかかるところだが、経済の成熟化のため、銀行が融資先開拓に四苦八苦している現状があるから、貸してくれるのである。

さらに、もう一つカラクリがある。銀行はバラバラの個人投資家に融資するわけだが、よく考えてみると、返済の原資となる家賃(の回収と保証)は同じサブリース業者が一手に引き受けているのだから、個人投資家の腹を借りながら、実は業者に対する融資を行っているのと同じである。したがって、本来はサブリース業者に貸してよい上限を超えて貸してはいけないはずだ。

それでも、形式上はあくまで個人投資家向けの融資なので、一見問題なさそうに見える。銀行側は、融資業績を伸ばすよう求めるプレッシャーや空気の中で、自分で自分を騙せばどんどん融資を膨らますことができるわけだ。

二束三文の「かぼちゃ」に戻っただけ

しかし、いつかは限界が来る。頭取などトップの交替や監督官庁の指摘を受けて、貸しすぎだということになれば、新規の融資はストップする。そうすると仲介フローが止まって手数料収入が減り、シェアハウス運営の負担が膨らみ、ついには投資家に支払うべき家賃保証が滞って破綻する。(通帳の偽造など)不正行為がなくても、遅かれ早かれ破綻は免れなかっただろう。

そしてこの段階に至って初めて、投資家は気付くことになる。「投資元本」は、少額の自己資金などではなく、銀行からの借り入れを含めた事業用住宅の購入額全体であったことに。

今回はスルガ銀行側にも不正があったようだから、もしかしたら多少は何とかなるかもしれないが、通常であれば、銀行は淡々と返済を迫るのみである。もともと売れない中古物件だったものが、童話の逆張りで二束三文の「かぼちゃ」に戻ったわけだ。投資家のもとには借金だけが残る。

実はこういうビジネスモデルは今に始まった話ではない。これからも装いを変えて出てくるだろう。不動産投資は歴とした事業だから自己責任が原則である。少なくとも、ここまで読んでややこしい話だと感じた人は、絶対手を出すべきではない。


大垣尚司(おおがき・ひさし):京都市生まれ。1982年東京大学法学部卒業、同年日本興業銀行に入行。1985年米コロンビア大学法学修士。アクサ生命専務執行役員、日本住宅ローン社長、立命館大学教授を経て、青山学院大学教授・金融技術研究所長。博士(法学)。一般社団法人移住・住みかえ支援機構代表理事、一般社団法人日本モーゲージバンカー協議会会長。主な著書に『金融と法――企業ファイナンス入門』『金融アンバンドリング戦略』『49歳からのお金―住宅・保険をキャッシュに換える』など。

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