熱血系、マイクロ系、逆ギレ系…パワハラ上司の型を見抜き、被害呼び込まないように

パワハラを受けても、泣き寝入りしない。

そう考えるビジネスパーソンが増えつつあるのかもしれない。都道府県労働局等に寄せられる相談は10年連続で100万件を超える。相談内容はパワハラを含む「いじめ・嫌がらせ」が6年連続でトップで、2017年は23.6%だ(図参照)。社内に相談窓口を設ける企業も増加している。被害者が相談しやすい職場環境は、着実に広まってきた。

だが、起きてしまったパワハラへの対処だけでなく、未然に防ぐためには、「なぜパワハラが起きるのか?」を考えることも重要だ。パワハラ行為者(加害者)の置かれた背景を知る必要がある。

都道府県労働局等への相談件数

ハラスメント対策のコンサルティングを行う西本智子さん(クオレ・シー・キューブ取締役)によると、パワハラ行為者は大きく3タイプに分けられるという。一つずつ解説していこう。

①熱血タイプ

体育会系のノリが強く、“育成好き”を自認している。しかし、「頑張りが足りない」「コミュニケーション力がない」など指示が漠然としていたり、「ふざけるな!」などと暴言を浴びせたりしがち。「部下はみんなで育てよう」という気持ちが強く、部署全体を巻き込んで特定の人に強くあたることもある。本人は愛の鞭のつもりだが、その理不尽さが部下を追い詰める。パワハラ行為者のもっとも典型的なタイプ。

従来、このタイプが部下を攻撃するのは、会議の場や酒の席が定番だった。だが、最近はパワハラもデジタル化している。西本さんは「物理的にみんなが集まる機会が減少したため、メールやSNSでのつるし上げが目立ちます」と言う。

部下を叱責する上司のイメージ

職場のIT化により、ハラスメントの現場もネット上に移ってきている(写真はイメージです)。

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ある男性(23)は第二新卒で機械メーカーに入社した。業務の進め方について十分な説明がないまま、取引先から問合せを受けた。自分では即答できず、先輩や同僚に確認をとっていたため、取引先への回答が翌日になった。それが課長の耳に入り、「常識がないやつだ! 仕事をなめているのか!」と激しく叱責された。

その日のうちに、部署内の全員にCCをつけたメールが送られてきた。そこには男性がとった行動を責め立てる内容に加え、「しっかり反省できるように、みんなでコメントしてあげよう」と付記されていた。

「まるで公開処刑にあっているような気持ちでした」

と、男性は当時の心境を振り返る。

何人かの先輩からは、すぐに「社会人としての自覚が足りない」「もっとお客様に配慮すべきだ」など課長に同調する返信があった。

一方で、大半の同僚は何事もなかったかのように仕事をしていた。

熱血タイプのパワハラは、学校のいじめと似ている。ひとたびターゲットにされると逃れることは困難で、周囲は自分に火の粉が飛ぶのを恐れて沈黙する。

「社内で孤立し、メンタル不調に陥って休職する人もいます」(西本さん)

②マイクロマネジメントタイプ

部長クラスであるにもかかわらず、若手社員の周囲を頻繁に歩き回り、言葉遣いや服装の乱れ、カバンを置く位置、机の上や引き出しの中の整理整頓などをチェックし、細かく指摘する。本人は「部長の私が、何段も下がって若手の指導をしてやっている。こんな光栄なことはないだろう」などと思っており、悪意はない

部下を叱責する上司のイメージ

悪意のないハラスメントほどやっかいなものはない(写真はイメージです)。

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業務の本質ではないことにこだわるマイクロマネジメントは、部下のモチベーションを大きく損なう。同じことを注意されるにしても、少し上の先輩からサラリと言われるのと、部長クラスからしつこく指摘されるのとでは、部下が受ける精神的ダメージは違う。

「マイクロマネジメントタイプの上司は仕事が早く、指導力に自信がある人が多い。自分と違って仕事が遅い部下をターゲットにする傾向があります」(同)

③逆ギレタイプ

もともと専門技術系などでマネジメントが苦手なのに管理職になった上司に多い。部下から、「お願いしていた他部署への連絡はどうなりましたか?」「昨日提出した書類は見ていただけましたか?」などと聞かれただけで、逆ギレしてしまう。普段は冷静な人柄なのに、「うるさい!」と怒鳴ったり、「君なんか何の役にも立たない」などと暴言を吐くこともある。

部下は業務に必要なことを聞いているだけでも、マネジメントが苦手な上司は精神的に追い詰められてしまう。上司・部下ともにつらいパターンである。パワハラは許される行為ではないが、部下側も対応を考える余地がある。

「若い従業員は『上司は強い立場だから何を言ってもいい』という意識があり、雑な接し方をする人が意外と多い。マネジメントが苦手な上司は、そのプレッシャーに耐えられません」(同)

パワハラ上司もパワハラを受けている

パワハラ行為者へのヒアリングを行う西本さんは、高い頻度で「行為者側も悩んでいる」と感じている。

「パワハラというと、行為者の“怒り”に焦点をあてがちですが、実は不安感やイライラ感が根底にあることが非常に多いのです」

追い込まれる上司のイメージ

パワハラ加害者も上司からパワハラを受けているケースがある(写真はイメージです)。

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さらに、西本さんによると、パワハラは連鎖するという。

「行為者自身もパワハラを受けていることが、実はよくあります」(同)

西本さんが実際に目にしたケースでは、熱血タイプの行為者がさらに上の上司から「絶対に業績を落とすな」「俺の顔をつぶすな」などと迫られ、不安感に押しつぶされていた。

マイクロマネジメントタイプの行為者が、「何か大きな失敗が起るのでは」という切迫感を抱えていた例もある。西本さんが「部長のあなたがそこまで管理すると部下は萎縮するのでは」「あなた自身もパンクしてしまう」と伝えても、「ほかに任せられる人材がいない」と真剣な表情で言う。

こうした行為者の背景を考えると、パワハラは本人の性格的な問題だけではなく、職場環境も影響していることに気づかされる。部下側は、パワハラを呼び込まないための接し方を意識したい。

「無理に媚びへつらうのではなく、攻撃的な上司もプレッシャーを受けているかもしれないと考えてみることです。上司が困っていそうなら、『なにか私がサポートできることはありますか』などと働きかける。上司が『気を使ってくれているな』と感じれば、打ち解けやすくなります」(同)

昨今、パワハラ対策の社員研修をする企業は増えているが、その多くは管理職向けだ。西本さんは、部下側にも研修を行う必要があることを強調する。

「上司にどんな苦しさがあるか、どんな態度がパワハラを呼び込むかという目線で伝えることが大切です」

パワハラを、被害者VS行為者という単純な図式で捉えている限り、根本的な解決には至らない。行為者が置かれた状況を知ることから、パワハラが生じない職場風土が築かれていく。

(文・越膳綾子)

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